第18話 修行の様子

「んんー?」


 朝の光で目が覚めたんだけど、なんだか身体が重い。

 顔を動かすとなんだか柔らかいものが。

 手でどかそうとすしてムニッとしてしまう。


「ひゃん」


 そう鳴いたのは奈々。

 僕のベッドに侵入してきたみたい。

 ひっくり返ってまだ寝ている。


 扉に鍵かけた方がいいのかな?

 なんか、普通こういうのってする方とされる方が逆じゃないのかな?


 部屋着を脱ぐと探索者シーカー装備に着替える。

 物音で目が覚めそうなのか後ろでゴソゴソしている。

 チラッと見ると半目を開けている。


「奈々? なんで僕のベッドにいる訳?」


「んーーー。寝ぼけちゃってぇ! 自分の布団かと思ったんだよねぇ! デヘヘッ」


「それ、今考えたでしょ? 全く。今度入ってきたら鍵つけて貰うから」


「……はぁい」


 シュンとしている。

 少しは反省したかな?

 僕も理性を保たないといけないからね。


「ご飯よぉー!」


 薫ちゃんが部屋に入ってきた。

 なんだかややこしくなりそうな予感。


「おい? 収斗ちゃんのベッドで何やってんだ? 小娘ゴラァ?」


「な、なななななにって……ね、ねねねねね寝ぼけちゃってぇ。なんて。はははっ」


 薫ちゃんの威圧に耐えきれず、震え上がる奈々。


「笑えねぇぞ? 次やったら素っ裸でモンスターの巣に捨てるからな」


「は、はいぃぃぃぃぃっ!」


 サッと立って敬礼する奈々。

 薫ちゃん良い人なんだけどねぇ。

 ちょっと厳しいところもあるけど。


 収斗は好かれることに慣れていないのだ。

 そんな事は今までになかったから。

 だから、なんでこんなに薫ちゃんが怒るのか、理解出来ていなかった。


「わかればいいのよぉん。ご飯食べましょ?」


「はぁい。薫ちゃんありがとう」


「いっぱい食べて今日から修行よ? 午前は体力作り。午後は実戦訓練よ!」


「いよいよだね!」


 僕はワクワクしていた。

 自分がどこまで強くなるのかが楽しみだから。

 奈々は愕然としているけど。


 朝食は和食で恐らく色々とバランスよく考えられているメニューなのでは無いだろうか。

 納豆やおひたしもある事からなんとなくそうかな?と思える。


 食材がなぜあるのかと言うと、僕のスキルで持ってきたんだ。

 今回は嵩張らなかったから楽だったと薫ちゃんにお礼を言われた。


 よかった。

 役に立って。


 ご飯を食べるとさっそく修行開始だ。


「まずは、山頂までお散歩行きましょ?」


 そうはいうが、ここの標高二千メートルくらいないっけ?


「薫ちゃん、流石に無理じゃない?」


「んー。そうねぇん。身体を慣らさないと高山病になっちゃうかしら? でも二千メートルくらいなら大丈夫なはずなのよねぇん。行ける所まで行きましょうか? さぁ、走る・・わよ?」


 えっ!?


 驚いている間に薫ちゃんは走っていった。


「ちょっ! 薫ちゃん!?」


 急いで後を追う。

 奈々も後ろから「えぇっ!? なんで?」と言いながらも走って追いかける。


 十分経過した頃、だんだんと奈々は遅れていく。

 三十分経過すれば、僕も薫ちゃんに置いていかれる。

 息が切れ、足が重い。


「はぁ……はぁ…………こんなにキツイなんて……はぁ……はぁ……はぁ」


「もう! 元荷物持ちポーターが聞いて呆れるわねぇん! そんなに楽なパーティーの荷物持ちポーターばかりやっていたのかしらぁん!?」


 僕はそんなに楽な仕事なんてしてこなかった。

 悔しい。

 こんなに体力が無いなんて……。


 目の前が真っ暗になった。


◇◆◇


「ん?」


 知ってる天井だ。

 ここは……宿泊所だね。

 意識を失っちゃったんだ。


「あらぁん? 目が覚めたかしらぁん? ちょっと、最初からとばしすぎたわぁん。ごめんね? 収斗ちゃん?」


 薫ちゃんに謝られてしまった。

 僕が修行を付けてくれるようにお願いしたのに。


「ううん。ごめんね。ついていけなくて……」


「いいのよん。実は……小娘も倒れちゃったのよん……」


「えっ!? 奈々も?」


「そうなのよぉん。失敗したわぁん。テヘッ!」


「そんな事で大丈夫? 薫ちゃん?」


「仕方ないわよねぇん。ちょっと加減を間違えたわぁん」


 でも、これくらいしないと強く慣れないということだもんね。


「薫ちゃん、強くなるために必要なら僕は全力でやるよ。もう、弱いのは嫌なんだ」


「わかったわぁん! 強くなりましょうねぇん!」


 その後、奈々も目を覚まして訓練が再開された。

 次は実戦訓練だ。


「収斗ちゃんは武器は使ったことがないのよねぇん?」


「うん。ないかなぁ。武器を持つくらいなら荷物を持ってたからねぇ」


「そうよねぇん。私考えたんだけど。そのスキルも活かせるしナイフがいいと思うのよねぇん。 投げたり、ヒットアンドアウェイで切りつけるのもいいわねぇん」


「なるほど。たしかに沢山のナイフをしまっておけるからね」


「そうねぇん」


 僕の使うナイフはなんとなく決まったが、奈々はどうするんだろう?


「小娘は……杖にするかしらぁ?」


「つえーですか?」


「そうよぉん。魔法に効果をもたらしてくれる杖を持ちつつ。杖術で戦うのよぉん」


「なるほどー」


 奈々、やる気あるかな?

 大丈夫?


「じゃあ、基本的なところを教えていくわねぇ」


 こうして、薫ちゃんと奈々との一ヶ月の合宿が始まったのだった。

 次のお話は合宿後からスタートする。

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