第17話 合宿開始
「────という訳で、合宿することになったんだ。だから、一ヶ月くらいは別行動になっちゃうんだけど……」
「収斗、大丈夫か? その……食われるんじゃ?」
「大丈夫だよ! 薫ちゃんはオオカミじゃないから」
「そ、そうか……どっちかって言うとオオカミじゃ無いか?」
「ん? なんか言った?」
「いや、なんでもない」
皆に合宿の話をしてたんだけど、考えてたのは僕だけじゃなかったみたい。
賢人も猛も鍛え直したいと考えてたみたい。
奈々はというと。
悩んでいた。
誰の元で戦いを学ぶか。
後ろから攻撃するという点で言えば僕と変わらないんだよね。
「奈々、もし薫ちゃんが良いって言っ────」
◇◆◇
「んー! 山は気持ちいいー!」
「気持ちいいね! 奈々も参加出来て良かったよ!」
「収斗が提案してくれたおかげだよ? ありがと!」
そのニヘッとした笑顔に少し心臓が高鳴る。
手を天高くまで伸ばして今は、山の麓に居る。
あの後、奈々と薫ちゃんにお願いして一緒に修行をつけてもらうようにお願いしたんだ。
「ったくぅ。せっかく収斗ちゃんと二人っきりだと思ったのにぃ! むきーっ!」
「そんなこと言って。薫ちゃんも奈々が参加したいって言った時喜んでたじゃない?」
「そうだけど。なんか……むきーっ!」
合宿は人が多い方が楽しいと思うけどなぁ。
出来ることもいっぱいあると思うし。
「まずは、合宿先のログハウスに行くわよん」
「「はーい!」」
山を登って行った先にはログハウスが一件あった。
中に入ってみるとホントに簡易的な作りをしている。
1LDKの家。正に寝泊まりするだけの家だ。
テレビもないし、ネットも繋がらない。
そんな場所で一ヶ月過ごす事になる。
「はぁい。じゃあ、もう夜になるから、今日は荷物を置いてシャワー浴びて寝るわよん?」
「「はーい!」」
「じゃあ、まずはレディーファーストだけど、奈々に、先を譲って上げるわん」
「ありがとうございます! では、入りまーす!」
そういうと部屋着と下着を持ってシャワーを浴びに向かった。
僕は何をすればいいのかな?
「あっ、収斗ちゃん、奈々にバスタオル持って行ってちょうだい? シャワー浴びてれば気づかないだろうから入っても大丈夫よん」
「はい。分かりました」
バスタオルを受け取ると、シャワー室を開ける。
目の前に湯気で少し隠れているが、奈々のたわわな果実が見えた。
咄嗟に目を逸らしたが目に焼き付いてしまった。
まさか、ガラス張りだったなんて。
薫ちゃんにしてやられた。
ローブの下には結構大きいものをお持ちだったんだね。
「えっ!? 収斗!?」
「ご、ごめん! バスタオル置くように言われたんだ! み、見てないから!」
「ちょっ! 嘘!? 絶対見えたでしょ!?」
「み、みてないよ? じゃあ、置くねぇ」
スッとバスタオルを置いて出る。
シャワー室を出て薫ちゃんの元へ。
「薫ちゃん! シャワー室! ガラス張りじゃん!」
「えぇ? そうよ? 湯気で見えなかったでしょ?」
「見えたよ!? だってガラス張りだったもん!」
「あらそう? 良かったじゃなぁい」
全く。
どんな顔して顔を合わせればいいんだが分からないよね。
しばらくすると、奈々が出てきた。
少し顔が赤い。
「次、いいよ」
「う、うん。ありがと」
入れ替わりでシャワー室に入る。
いい香りがする。
奈々の先程の姿が目に浮かぶ。
振り払うように髪を振りながらシャワーを浴びる。
鍛えられた肉体をお湯が流れていく。
「ふーーー」
顔のお湯を手で拭うと。
視線を感じた。
ガラスを見ると奈々が鼻血を流して見ていた。
おいコラ。
ジィっと見てるんじゃないよ!
「奈々ー? 何してるのかなぁ?」
「えっ!? な、何って、バスタオル置きにきたんだよぉ? 見てないから大丈夫だよぉ?」
「バスタオル、僕持ってきたんだけど?」
「それよりいいバスタオル持ってきたんだよ! 見てないから大丈夫!」
「じゃあ、その鼻から出てる赤いの何?」
「えぇ!? あっ! ちょっと鼻ぶつけたから鼻血が出ちゃったんだ! いけないいけない!」
凄い棒読みだった。
あれ、わざとじゃん。
でも、僕も見ちゃったからな。
これでお相子かな?
頭と身体を洗い終えたあとも視線を感じた。
チラッと見るとまた奈々が見てる。
アイツ確信犯じゃん。
「あー上がろうかなぁ」
そそくさと扉を閉めていった。
部屋着を着て出ていく。
さっきは見れなかったけど、ちゃんと見ると奈々もクマのキャラクターの部屋着を着ていた。
可愛いのが好きなんだね。
「奈々?」
「なにー? お、お相子でしょ? ねっ?」
鼻にティッシュを詰めた状態で弁解してきた。
なんとも……可愛らしい。
「だね。僕も悪かったし」
「うんうん! さっ、ご飯食べよー!」
「あらあら。いい感じにまとまっちゃったわねぇん。いがみ合ったら面白かったのにねぇん」
薫ちゃん、わざとだつたわけ?
それは酷いなぁ。
「薫ちゃん?」
「だぁってぇ! 仲良さそうにするんだものぉん! ヤキモチ妬いちゃうじゃなぁい!」
そう言いながらサラダとハンバーグを出してくれた。
なんと美味しそうな匂い!
「美味しそうだね!」
「ふふん! 女は料理の腕が良くないとねぇん」
僕が褒めると自慢げに腕を組んだ。
「さっ、明日に備えて食べて寝るわよ?」
疲れきった身体はは正直で、布団に入るとすぐに寝てしまうのであった。
流石に奈々と部屋は別にされた。
良かった。
と思ったんだけど。
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