第16話 お悩み相談室
僕はここ三日くらい、ずっとどうやってこれから
なぜそんなことを考えているのかと言うと、先日蒼太くんに言われた言葉。
「スキルに頼りすぎている」
ということ。
耳が痛かった。
思ってみれば僕は
そうして、悩みを相談に来たのはこれまで数々の悩みを相談してきた相談相手。
「すみません。悩みを聞いて貰えないかな?」
「いいわよん? どうしたのぉん?」
そう。来たのはギルドの買取担当をしている薫ちゃんの所である。
「うーん。それがねぇ、スキルが使えない時に危なく死にそうになってねぇ」
「まぁ!? 大丈夫だったの!? 怪我は!?」
慌て始めた薫ちゃん。
両手を前に出して止める。
「何ともないから大丈夫だよ! 助けて貰ったからね」
「そう。よかったわねぇん! 誰が助けてくれたのぉん?」
「それが、槍士の蒼太くんなんだけど」
そうを言ったら驚いたように手をパチンと叩き。ニコニコしだした。
「【
「有名人?」
「そうねぇん。あの歳でソロでCランク
よく考えたら凄いことだもんね。
そっかぁ。
やっぱり凄い人だったんだ。
「ごめぇん! で、悩みって?」
「あっ、うん。その蒼太くんがね、スキルに頼りすぎだって言ってたんだ。ただ立ってスキルを使ってるだけだった僕はこのままじゃダメだと思うんだ」
「うーん。なるほどねぇん。でも、今まで何も武器を使ったことは無いわよねぇん?」
「そこなんだよね。できる武器がないんだ」
そこが悩んでいるところ。
何も武器を使ったことがない僕は何も出来ない。
どうしたもんか。
最近はそれの繰り返し。
「ちょっと、収斗ちゃん、身体触ってもいい?」
「えっ!?」
どういう事?
僕は薫ちゃんに襲われるの?
「やだわぁ。そんなとって食おうって訳じゃないわよ?
「あぁ。そういう事か。どうぞ?」
腕をニギニギして肩から下に手を持っていき、足を確認している。
「やっぱりねぇん。凄いいい筋肉の付き方してるわよぉん」
「そうなの? でもさ、だからって僕に何ができるんだろ?」
「そうねぇ。収斗ちゃん?」
いきなり改まってそう呼ばれると気恥しい気分になる。
「はい?」
「私と強くなる合宿してみる?」
「僕、強くなれますかね?」
「強くなれるわ! 私が保証する! ただし! 一ヶ月は私と合宿よ!?」
「はい。強くなれるなら何でもいいです!」
僕がそう答えると。
いつもの薫ちゃんとは目付きが違っていた。
いきなり立ち上がるといつものカウンターに歩いていく。
「真理、話があるわ」
「わかりました! ちょっと待っててくださいね?」
事務処理を終わらせるとカウンターを閉じてやって来た。
「どうしたんですか?」
「私はねぇん。収斗くんと山篭りするわ!」
「はぁ!? なんでです!? 何血迷ったこと────」
「お願いします!」
僕は薫ちゃんの前に出て深々と頭を下げた。
ギルドの業務もあるのに無理なことを言っているのは分かってる。
でも、薫ちゃんが僕の為に時間を割いてくれるっていうんだもの。
またとないチャンスかもしれないし。
「収斗くん? どういう事なの? 一体?」
そう質問された僕は悩んでいたこと、先日起きた出来事を話した。
親身になって聞いてくれた真理さん。
今回は危ない場面があった。
真理さん達は収斗達が潜っている間、チョコチョコと配信をチェックしているみたい。
無茶をしないで欲しいと懇願された。
でも、僕はこれから無理をしなければいけない。
「でも、薫さん、なんで山篭りなんですか?」
真理さんが薫ちゃんに聞いてみた。
その事に関してはなんだか修行に適した山があるらしい。
凶暴化したモンスターに会うかもしれない。
ダンジョンができてからの地球はダンジョン以外にも野生の動物がモンスター化したのだ。
魔法を放ったり回復したりとモンスター化した動物は能力を得るみたいなんだ。
そこは人間と同じ進化を遂げたのだろう。
「肉体を磨き上げるのよ。この素晴らしい肉体を更に磨きあげるの!」
「二回言う必要ありました? しかも、意味が分かりません」
「そう? 収斗ちゃんはわかるわよね?」
「はい!」
僕が返事をすると、真理さんがギョッとした顔をした。
なんで分かるのかが不思議なんだろうな。
薫ちゃんとよく話している僕だから分かるんだと思うんだよね。
「肉体は自然の力で磨き上がるから……です!」
「そうよん! さっすが収斗ちゃん!」
真理さんの頭の上にはまだハテナが沢山並んでいる。
「真理さん、山ってどうなってます?」
「え? 山? んー、草が生い茂ってる?」
それもあってる。
けど、足元なんだよね。
「生い茂ってる所って平らですか?」
「あっ! 傾斜になってる?」
「そうです! 傾斜を歩いているだけで、自然と足の筋力が付くんですよ!」
「なるほど」
ふーんと言って頷く真理さん。
「それだけじゃありません! 食べるために木の実を取ろうとしますよね? どこを使うと思いますか?」
「木登りだから、腕の筋肉ね!」
「それがですね、木登りは、全身の筋肉を使うんですよ!」
僕のテンションに真理さんが身体をのけぞって口をヒクヒクさせている。
「そ、そう。行ってらっしゃい」
「有難う御座います!」
合宿に行くお許しが出たのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます