第15話 乱入者の正体
「助けてくれたの? 誰?」
振り返ると槍を構えたブロンドの髪を結っていて切れ長の目が強調されている。
身体は細マッチョといった感じの引き締まった体つきをしている。
かなり強そうだ。
槍は突撃槍のような根元が広がっていて先に行くにつれて尖っていくような物。
そんなもの振り回してたの?
全然気が付かなかったけど。
「俺っちは蒼太ってんだ。よろしく! 見かけたら声かけようと思ってたんだけど、まさかこんな場面で会うなんて運命感じちゃうねぇ!」
「あっ、そ、そうなんだ。助かったよ! 有難う!」
「ううん! 良いってことよ! それより、戦えないのに前に出るなんて肝が据わってるね! いい感じ! 後は俺っちに任せて!」
そう言うとこちらに向かってきた別のオークを槍で一突きで倒している。
次々と突いていく。
「そこの剣士さん、避けて!」
賢人が声を聞くなり横に避けた。
一体何をする気なんだろう?
疑問に思っていると。
槍を水平に持ち、腕を引き絞り始めた。
目一杯引き絞ると。
「ロックオン。【
投擲した。
もの凄い勢いで飛んでいき、オークを蹴散らしていく。
カーブを描き、次々とオークを突き抜けていく突撃槍。
一番奥にいた大きめのオークを貫き、槍は蒼太の元へと戻ってきた。
なんという凄いスキル。
もしかして、この前真理さんが言ってたこの辺にいるSランクスキルの最後の一人?
残りの敵を倒しに駆けていった。
賢人と蒼太で残りのオークを倒していく。
残りが少なくなり、僕が出したオークも少しは役に立ち。
なんとかオークを掃討することが出来たのであった。
「有難う御座います! 凄く、強いですね?」
「俺っち強いからねぇ。君達、いい線いってるけどまだまだだね。俺っちはソロでやってるけど、この前Cランクに上がったんだ。そろそろBランクダジョンに挑むために南下しようと思ってるんだ」
ここは東北でも北の方だからね。
この県には最高難易度のダンジョンでCランクダンジョンまでだから、その判断は正しいんだろうけどね。
「そっか……やっぱり凄いですね」
「スキルにばかりに頼りすぎない。それが一番だと思うよ? 俺っちは槍で通常戦闘もこなせる。このスキルにもクールタイムがあるんだ。しかも、結構長い。バンバン使えないからね」
「なるほど。そうですよね。僕は戦闘ができないスキルだからって……」
「うん。俺っちが見た感じパーティーに足りないのは中距離か、超至近距離のアタッカーって感じ。具体的な例を上げるなら、槍と拳、とかだよね」
「超至近距離……」
「そう。そうすれば、打ち漏らしたのはそっちの剣士くんが処理できる。無理やり中距離の位置に据えるんだ。どっちがいいかは自分達で決めなよ? じゃ、俺っちは行くねぇ」
そういうとダンジョンの下層に潜っていってしまった。
今回たまたまダジョンにいたのは、暇つぶしだったのだろうか。
「なんか、凄い人だったなぁ」
「あの人、凄かったな? 俺はまだまだスキルに依存していたみたいだ。この前の悔しさをバネに強くなったつもりだったが、そんなことは無かったみたいだ」
僕が呟いていると、賢人がやって来て蒼太さんを褒めた。
「神子が前に聞いた記憶のままだと、蒼太くんは君達と同じくらいの歳じゃないかな?」
「そうなんですか!?」
「そういえば、歳を聞いてなかったな?」
僕が同じくらいの歳だと言うことに驚いていると、賢人が冷静なことを言っている。
たしかに、いくつなのかはわからない。
「俺は二十歳だ」
「僕も二十歳だよ」
「えっ!? マジか!? 年下だと思ってた……」
賢人が失礼なことを言ってる。
そりゃ、身長が160センチと小さいけど。
でも、こう醸し出してるモノが十代とは違うと思うんだけどなぁ。
そんな事を真面目に考えていると。
「自分も二十歳っす!」
「えぇ!? それも驚きだね……」
「なんでっすか!?」
僕が驚いたことに驚いている猛。
「いやいや、驚くだろ。二メートルの身長で、茶髪の坊主で、その顔してたら二十歳に見えねぇよ?」
「酷いっす! 最後の顔の話はどうしようもできないんっすよ! 昔から渋い顔って言われ続けてきたんすから!」
可哀想なことに、僕は完全に年上だなぁとは思ってたよ。タメ口も頑張ってたんだけど、頑張る必要がなかったんだ。
それはちょっと安心した。
なんだかホッとしていると。
奈々が眉間にシワを寄せている。
「奈々? どうしたの?」
「もうーーー! なんで私が最年長なのよ!?」
「えっ? いくつなの?」
赤くなった顔を俯けている。
首をフルフルと振りながらイヤイヤと言っている。
年齢のことそんなに気にすることかな?
「まぁ、いいなくなかったらいわ────」
「…………さいよ!」
「えっ!?」
「───二十二さい!」
いきなりの大きな声に驚いた。
二十二歳?
たった二つしか変わらないじゃないか。
「どうせ私はオバサンですよ!」
いやーそれはちょっと暴論じゃないかな?
なんか後ろの方から凄い威圧感を感じるんだけど?
恐る恐る後ろを見ると。
「へぇ。それじゃあ、二十四の神子はオバサンなんだー?」
「じゃあ、真子もオバサンなんだー?」
二人のギャルが口をヒクヒクさせながら目を釣りあげている。
「あーいやー。違います…………ごめんなさーい!」
奈々は一目散に逃げていった。
ダジョンで一人になるのは危険なので、追いかける僕達。
そのままその日はそのダンジョンを出たのであった。
◇◆◇
そこは薄暗い雑居ビルの地下であった。
日が落ちて暗くなった地下には人が来ることはなく、二人の影だけが密かに佇んでいた。
「申し訳ありません。失敗しました」
「あぁ!? 何でや!? 奴らはまだ対して強くあらへんやろ? オーク集めたら殺れるやろ!?」
膝まづいている黒い影に怒鳴り散らしている別の影。
「すみません! もう少しだったのですが……邪魔が入りまして」
「誰や!?」
「
「なんでアイツが居んねん! クソがっ!」
「次は必ず」
「おい。バレんようにやれや? 俺の名に泥塗ったくるなや!?」
「はい!」
その怒鳴り散らす背中には四文字の漢字が浮かんでいた。
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