第7話 パーティー登録

「は、はいっす!」


 薫ちゃんの威圧に先に返事したのは盾の人だった。

 賢人と奈々は戸惑っている。

 なんか色々相談しているうちに薫ちゃん、保護者みたいになっちゃったんだよね。


「自分、たけしっていいます! 名前の割にペコペコしてるって言われるっす! けど、収斗さんには何人たりとも指一本触れさせねぇっす!」


 実は身体も二メーターくらいあって大きいんだけど、なんでこんな話し方なんだろうか。

 凄くペコペコしてるんだよね。


「やだぁ。取り乱しちゃった。うん! その意気よぉ。頑張って頂戴ね」


 またクネクネしだした薫ちゃん。


「薫ちゃん、換金お願いね」


「あっ! もうやだわぁ。収斗ちゃんに見惚れちゃってた! これだけの数だと結構な額になるわよ!?」


 少し待っていると数え終えてお金を持ってきた。


「はい! 分別が綺麗すぎたから査定金額が上がってるわぁ! 一頭当たりだいたい十万ね。二十頭分だから、二百万円よ」


「えっ!? そんなに貰っていいの?」


「えぇ。これは正当な報酬よ」


 僕こんな額貰ったことないよ。

 いつも日当一万円とかだったのに。

 急に二百万って。


「ありがとう! 薫ちゃん!」


「いえいえ。どういたしまして! 収斗ちゃん、怪我には気をつけるのよ? この前の収斗ちゃんを蹴り飛ばしたやつはもう二度と探索者シーカーにはなれないようにしたから安心してね?」


「う、うん」


 一体何をしたんだろうか。

 ギルドの人と中に行った時に何かあったのかな。

 まぁ、気にしないようにした方がいいよね。


 猛さんに向き直る。


「ねぇ、猛さん、報酬はいくら貰うはずだったの?」


「いらないっす! あの人達から解放してくれて感謝しかないんす! 報酬なんていらないっす!」


「そういう訳には……」


「いいんす! だったら、いっぱいこき使ってください!」


「わかりました」


「あと、仲間になったからには猛って呼び捨てで呼んでください! 皆さんもそれでいいですから!」


「おう。宜しくな。猛」

「よろしくー」

「わかったよ。猛」


「パーティー登録しに行こうか!」


「「「おぉー!」」」


 ギルドの窓口に行く。

 今は空いてた。


「真理さん、パーティーに追加登録したいんですけど」


「はいはい。こんにちは。収斗くん、またパーティー増えたの?」


 追加する人達を確認して顔を引き攣らせている。

 何したんだろうか?

 何か問題が?


「この子達?」


「えぇ。何か問題でも?」


「ううん。ただ、みんなSランクって……」


 えっ!?

 この二人もSランク?


「Sランク多くないですか?」


 僕は素朴な疑問をぶつけた。

 今まであった人みんなSランクだもんね。


「そんな事ないわ! この近辺のSランクなんて、五人しかいないのよ!? 収斗くん含めて!」


 えっ? じゃあ。

 うちのパーティーSランク独占?

 一人しらないけど。


「【剣聖】の賢人くん、【整理整頓】の収斗くん、【八属性魔法】の奈々ちゃん、【不動明王】猛くん。もう一人は個人情報だから教えれないけど」


「「ブッ!」」


 僕と賢人は吹き出した。

 猛のスキル名がエグい!


「猛!? そんな名前のスキル名なの!? カッコよすぎだよ!」


「猛! 身体とスキル名と話し方がギャップありすぎだろ!」


「「あはははは!」」


 思わず二人で笑ってしまった。


「もー。だから言いたくなかったんすよねぇ。これまた扱いにくいスキルなんすよ……」


「どんな風に?」


「スキル発動するじゃないっすか? そうすると、そこから一歩も動かなくなるんですよ。どんな攻撃を受けてもビクともしないっす! ただ、自分ではスキルを切らないと動けないっす!」


「つまり、攻撃をこう盾で受け流すとかは……」


「てきないっすね……」


 なるほど。

 揉めた原因はそれか。

 でも、それなら僕のスキルはもってこいだ。


「問題ないよ」


「あぁ。猛は運がいい! 収斗のスキルがあれば全く問題ない!」


「そうなんすか?」


 そうだよね。

 そんな事言われても理解できないよね。

 実際に見ないと理解できないと思うもの。


「落ち着いたらダンジョンで試そう。ちなみに、僕のスキルは人の配置を有効範囲の中なら移動させる事ができるんだ」


「えっ!? じゃあ、スキル発動して動かなくても……」


「うん。僕のスキルなら動かせると思う」


「凄いっす! 自分、ようやく人の役にたてるっす!」


 なんだか涙目になってる。

 これまで色々と辛い思いをして来たんだね。

 みんな悩んでる人ばっかりだ。


「大丈夫! 僕達みんな同じような感じだから、助け合って頑張ろう!」


「はいっす! あっ、パーティー名はなんなんですか?」


「「「明鏡止水」」」


 三人で声がハモった。

 なんだか聞き慣れてきたな。


「なんか、カッコイイっすね」


「僕が好きな言葉なんだ」


「いいっす! 明鏡止水の猛! なんかめっちゃいいっすね! うおぉぉぉ! やるぞぉぉ! これは、バズる予感がしますねぇ!」


 そういえばみんな配信でも稼いでいるんだよね。

 僕よくわかってないんだけど、猛がその辺詳しいのかな?


「僕、配信とかよく分かんなくて」


「大丈夫っす! 自分に任せてください! こう見えて、機械得意なんですよ。あっ、資金を少し貰っていいですか? 追跡撮影用のBOT買ってきます!」


「いいよ。いくら位?」


「十万っすね」


 現金を手渡してBOTを買いに行ってもらった。

 これで、配信も出来そうだ。




「パーティーの手続き終わったわよー。良いわよ。私なんて忘れられる運命なんだわ……グスッ」

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