第8話 配信

「買ってきたっすよぉ!」


 猛がBOTを買ってきてくれた。

 なにやら携帯端末を弄っている。

 ピロンッとBOTから音が鳴った。


「よしっ! 設定完了したっす! これで、自分の端末とBOTが連携できたんで、いつでも配信できます!」


「ありがとう! じゃあ、今日はもう遅いから、明日になったらダンジョンアタックしよう!」




 次の日。

 ダンジョン探索日和だった。


 みんな朝から張り切って集まっている。

 そういえば、パーティーで一軒家借りている所とかもあるんだよね。

 もしかしたらその方が安いかもしれないよね。


「よしっ! BOT起動! 行くっすよ!」


「「「おぉー!」」」


 今日もEランクダンジョンで連携の確認をしながらの攻略になる。

 ちなみに、前回とは違うEランクダンジョンである。


 だけど、出るモンスターはあまり変わらないと思われる。

 ただ、今回のダンジョンは最後にボスがいるタイプのダンジョンである。


「猛が先頭ね! 続いて賢人、奈々、最後が僕で行こう」


「「「了解!」」」


 ダンジョンの通路はそんなに広くない。

 だから、基本はこうやってタンクを前にする。

 次にアタッカー。


 この後、本当は中距離の遊撃できる人がいればいいんだけど、そこは僕の【整頓】でカバーすることにする。


「前方からウルフ三体!」


 後ろの隙間からモンスターを確認する。


「【不動明王】!」


 盾を地面に突き刺してスキルを発動する猛。

 その後ろからウルフに攻撃する賢人。


「【ファイアーボール】!」


 ズドンッと一体のウルフに突き刺さる。

 難なくウルフを倒せたみたい。


「いいね! スムーズじゃなかった?」


「賢人さん、どうっすか?」


「いいと思うぞ。なんか守られてるっていう安心感あった」


 猛は心配そうだけど、賢人はやりやすかったみたいだね。

 後ろから見てても安定してた。

 奈々も全然怖がってなかったし。


「わたしもー!」


「よかった。よしっ! 引き締めて進もう!」


「「「了解!」」」


 奥に行くほどにウルフは多くなってきた。

 三層目に入った時。

 なんか雰囲気が変わった。


 周りの風景も草原のようになっている。

 これは、やばい。

 こんなに開けてたら、囲まれたら終わりだ。


「みんな! 周りを警戒して! 囲まれるかも!」


「猛は収斗と奈々を守れ!」


 僕が指示を出す前に賢人が猛に指示を出した。

 たしかに僕達は接近戦に弱い。


 下層への階段を探さないといけない。

 何処にあるのか。

 まず、端っこを見定めよう。


「一回境界を知るために横に移動しよう!」


「「「了解!」」」


 風景的には何処までも続いているように見えるけど、必ず壁があるはず。


「あった! このまま壁沿いに行こう!」


「収斗を囲むんだ!」


「「了解!」」

 

 僕の指示も聞きながら賢人の指示も聞く。

 二人に悪い気はしたけど、これが今の僕達の形だから仕方ない。


「きたぞ! グリーンウルフ五!」


 魔法を使うタイプの属性付きのモンスターだ。

 ただ、このウルフは口から属性の弾をはなってくるだけだから、それを警戒していれば大丈夫。


「猛は前に!」


「わかったっす! 【不動明王】」


 猛を青い光が包んでいる。

 スキルを発動している証だ。


 ウルフが駆けてくる。

 猛にアタックしていく。


「ギャンッ!」


 ビクともしなくて弾き返される。

 すると、横からこちらに来ようとしたところに。

 賢人が入っていく。


 一体、二体と切り伏せる。

 その隙に反対側から回ってくるウルフが。

 そっちには奈々がいる。

 させないよ。


「【整頓】」


 猛を奈々の前に移動させる。

 またもグリーンウルフを弾き返した。

 そして、奈々の魔法が突き刺さり一体倒す。


 残りが僕の方に突進してきた。

 本能的に親玉だと思ったんだろうか。


「【整理】」


 穴がポッカリと空いて二体とも吸い込まれていった。

 ウィンドウが表示されて一体はしまっておいて、一体は解体しておく。


 口をあんぐり開けて驚いていたのは猛。

 だけでは無かった。

 奈々も目を見開いて驚いている。


「なんっすか!? そのスキル!?」


「ねぇ、なんで猛が移動したの?」


「【整理】はなんでも穴に落ちたものをしまったり捨てたり、解体したりできるんだ。奈々、この前もウルフを移動させたでしょ?」


「はぁ。とんでもないスキルっすねぇ」


「人も動かせるんだ」


 そうなんだよね。

 成長したらとんでもないスキルだったんだよね。

 奈々は人も動かせることに驚いているみたい。


「ほらっ、先急ごう?」


「二人とも驚きすぎだぞ? 収斗のスキルが凄いのは知ってただろ?」


 僕が先を促すと。

 固まっていた二人に賢人が声をかける。


「いや、まさかこんなに規格外だとは……」


「私は何処に動かされるんだろう……ヤバッ鼻血が」


 なんかまた奈々が変になってる。


「またモンスターが来るかもしれないから先に進もう!」


「「「了解!」」」


 壁伝いに進んでいくと危なげなくウルフも処理できた。

 そして、進んだ先の雑木林の中に階段を発見したのであった。


 それで、四階層である。

 そこも同じ雰囲気だったようでそんなに苦労しないでクリア出来たのであった。


 本人達は普通に攻略しているつもりだったんだが、この配信がある人の目にとまっていた。

 その人がコメントを書いたことにより、飛躍的なバズりをみせる。

 

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