第5話 新規加入

 少し経ってから泣き止んだ女の子。

 かなり恥ずかしかったみたいで、顔を真っ赤にしてずっと俯いている。


「大丈夫?」


「は、はい! ごめんなさい!」


「ううん。怪我はない?」


「はい! なぜ、あなた方みたいな高ランク車がこのダンジョンに?」


 僕は賢人と目を合わせて。


「「あっはっはっはっ!」」


 その子は目をキョトンとさせてオロオロしている。

 いきなり笑っちゃったから困惑させちゃったかな。


「僕は昨日探索者シーカー登録したばっかりですよ?」


「俺もEランク探索者シーカーだしな。まだまだだ」


「えっ!? えーーーっ!? ウソ!?」


「「本当」」


 なんだか凄くオロオロしてる。

 なんか助けたらまずかったかな。


「あっ、ごめんなさい! まずは、助けていただいてありがとうございます!」


「「いえいえ」」


「ふふっ。仲が良いんですね?」


 二人でハモったのが面白かったのだろう。

 笑顔を見せてくれた。

 笑ってた方が可愛い。


「出会ったのも昨日だけどな」


「そうだね」


「えぇ!?」


 賢人の問に僕が答えるとその子は今度は飛び上がって驚いた。

 リアクションが可愛らしい。


「ホントだよ? 昨日僕は賢人に助けられたんだ」


「いやいや、助けられたのは俺の方だ!」


「「ぷっ! あははは!」」


 バチンッとなんとなくお互いの手と手で叩きあった。


「いいなぁ」


「「ん?」」


 二人で聞き返すと少し恥ずかしそうに話し出した。


「実は……私、人見知りすぎて入ったパーティーで次々と上手くいかなくて……それで、一人でダンジョンに来たんですけど……」


「さっきみたいにモンスターハウスに入っちゃったんだね?」


「はい。もうどうしたらいいか分かんなくて。スキルも微妙ですし……」


 俯いて顔を覆いだした。

 なんだか悩んでるみたい。

 悩んでいる人達ばっかりだなぁ。


 パーティーに誘ってみようかな?

 賢人に目配せすると頷いてくれた。

 うん。賢人もいいなら。


「僕らも悩んでばかりなんだ。よかったら、一緒に悩まない?」


 手を差し伸べる。


「えっ!? いいんですか?」


「うん。絶賛、パーティー募集中なんだ!」


「はい! 宜しくお願いします! あっ、遅くなりました! 私は、奈々っていいます! スキルは八属性・・・魔法です!」


「「えぇっ!?」」


「なんですか?」


「それこそ、レアじゃない?」


 属性って、七属性じゃない?

 火、水、風、土、雷、光、闇。

 やっぱり七属性だ。


「名前だけは……」


「どういうこと?」


 僕が話を聞いた限りだと最初のスキルの鑑定で八属性って出て喜んだそうだ。

 周りのみんなも大喜びだったんだとか。


 魔法を使ってみて驚いたのは、各属性の初級魔法しか使えなかったこと。

 そんなの単一属性の方がスキルレベル次第で最上級までつかえるし、全然良い。


「スキルレベルは?」


「2です」


 うーん。

 まだ伸び代ありそうだけどなぁ。

 けど、何かあると思う。


 七属性が属性の数なのに、それを超える何かがあるんだよね。きっと。


「ねぇ、魔法の属性は七属性だけど、他に知られてない属性があるんじゃない?」


「知られてない属性ですか? ラノベみたいに空間属性とかですか?」


「そう。あとは……時間系とか」


「なるほど。タイムストップと……うわぁぁぁ!」


 ん?

 いきなり狼狽しちゃってどうしたんだろう?


「どうしたの?」


「と……止まりました……」


「何が?」


「時間です」


「「はははははっ!」」


 僕は賢人と目を合わせて笑った。

 こんなにもレアなスキルが集まることがあるんだな。


「サイコーだね。奈々さん」


「……なです」


「ん?」


「奈々って呼び捨てにしてください! 私は賢人さんとは違うってことですか!?」


 前のめりに迫ってきて顔がすぐ近くに迫る。


「ち、近い……」


「はっ! すみません!」


 慌てている奈々さん。

 いや、奈々か。


「ごめん。そんなつもりは無かったんだ。気分を悪くしないでよ。奈々?」


「むー。今回は……許します」


 よかった。

 けど、賢人も奈々もなんでそんなに呼び方にこだわるんだろう?


「私はさん付けで呼びますけど、それは許してください。ちょっといきなり呼び捨てなんて……鼻血でそう」


「ん?」


「い、いえ! なんでもないです! 仲良くしてください!」


 深々とお辞儀をされて手を差し伸べ、お願いされる。


「うん。こちらこそ」


 その手を掴んだ。


「成立ですね。……あーヤバイ鼻血でそう」


「最後の方聞こえなかったけど、奈々? 大丈夫?」


「えっ!? はい! 大丈夫です! ちなみに、パーティー名は何なんですか?」


「うん。明鏡止水っていうんだ」


「へぇ。四文字熟語」


「そう。僕が好きなんだ。その言葉」


「そうなんですね。カッコイイです! あの、このダンジョンはクリアする予定ですか?」


「あっ、うん。今日の内にダンジョンコアのとこに行って攻略証明貰おうかと思ってたよ」


「では、行きましょー!」


 こうして奈々という心強い魔法職の味方が加わったのであった。

 アタッカーと遠距離アタッカーがいて。

 超攻撃的なパーティーになった。


 僕の立ち位置がちょっと曖昧なんだけど。

 少し後ろから見てて位置を変えたりする役割かなぁ。

 そして、時間が来たら整理で一網打尽かな?


 なんとか、先が見えてきた気がする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る