第4話 ヒロイン登場

 冒険者登録をした翌日、ダンジョンに潜る為に再び集まっていた。


「よし、今日からダンジョンだ!」


「うん!」


 意気揚々とE級ダンジョンに入っていく。

 ここはスライムとかウルフ系が出るダンジョン何だって。


 賢人はこのダンジョンは一人で余裕らしいんだけど、一応僕のスキルの使い勝手と実用性を確かめようとして来てみたんだ。


 スライムは核を狙わないといけないから、初心者の壁って言われてるみたい。

 核を狙ってちゃんと攻撃しないといつまでも倒せないんだって。


 一層目、入っていくといくつか部屋があった。

 探索しながら何かないか探してみる。

 たまに宝箱があって回復薬が入ってたりする。


「おっ。スライムだぞ?」


「僕がやるよ」


 やると言っても、進行方向に。


「【整理】!」


 二メートル四方の穴が空き、スライムが落ちていく。


「おぉ。入った」


 ウインドウが開いたので【しまう】を選択する。


「出ておいで」


 ウインドウをタップするとスライムがピョンッと出てきた。

 ピョンピョンと跳ねているが、特に何もしない。


「うーん。感情がわかるかなと思ったけど、わからないみたいだね。テイマーではないからね。その辺は仕方ないのかな。こっちおいで」


 そういうとピョンピョンとこっちにやって来た。

 なるほど、指示は聞いてくれるんだ。


「【しまう】」


 スライムをしまい、また奥に進む。

 次も出てきたのはスライム。


「また僕がやるよ。【整理】」


 穴は出現しない。


「えっ!?」


「収斗!」


 咄嗟に前に出できた賢人が、スライムを切り伏せる。


「ご、ごめん」


「いや、いい。もしかして、そのスキルはクールタイムがあるんじゃないか?」


 クールタイムね。

 よくゲームとかであるやつか。

 次に使うまでは何分置いておくみたいな。


「そうかも。どうしよう」


「少し収斗のスキルの検証は待つとして、俺のスキルの方も検証しよう」


「そうだね!」


 すると、賢人はスライムを探しにまた奥へ進む。


「ねぇ、賢人のスキルの今のところの効果はどんな感じなの?」


「それな、前に言った通りなんだが、剣が軽くなるんだ。すごく振りやすい。あと、昨日気づいたんだが、強い攻撃をガードしても手が痺れないんだ」


 なるほど。

 いきなりSランクだもんな。

 なんか色々とすっ飛ばしている気がする。


「ねぇ、賢人って普通の剣術のスキル持ってる人に技の取得の仕方聞いたことある?」


「いや。聞ける人が居なくてな……」


「そっか。それなら、ちょっと試してみない?」


「何をだ?」


 僕は今まで色んなパーティーに入って荷物持ち《ポーター》をしていた。

 つまり、色んなスキルの人と知り合いだったんだ。


「剣術のスキルの人って、技を使う時は特定の動作から入るみたいなんだよね。それは見てて気付いたんだけどね」


「特定の動作?」


「そう。たとえば、担いで溜めるでしょ? そして、振り下ろす。これでスラッシュが出せるんじゃないかな? スキルの技だと青い光が出るからすぐに分かるし、やってみたら?」


 目をキラキラさせて賢人が手を握ってくる。

 手を掴んで上下させる。


「すげぇ! それはいい案だ! なんで思いつかなかったんだろう!」


「ま、まぁ、でも、できるか分かんないから。やってみて?」


「だな! おぉーしっ!」


 賢人は剣を肩に担ぎ後ろに体重を乗せて少し溜めた。

 すると、剣が青く光出した。

 振り下ろす。


ズバンッッッ


 賢人の振り下ろしは、青く軌跡を残した。

 剣圧で床を切り裂く程の斬撃が放たれた。

 これで分かった。


 剣術からスキル進化して剣聖になる事が想定されていたんだ。

 賢人の場合いきなり剣聖だったから、基礎を作るっていう過程がすっ飛ばされていたんだ。

 剣術のスキルを使用する時はスキルウインドウに技名が出て、説明のような補助が付くらしかったから。


「っっ! でたっ! 収斗! 出たぞぉ!?」


「うん! やったね! 思った通りだ。剣術の技の出し方と同じようにすれば技を出せるんだよ! そして、威力は僕が見たのより倍以上強いかも」


 僕の言葉が聞こえているのかはわからない。

 子供のように飛び跳ねながら喜んでいるから。

 よかったね。賢人。


「じゃあ、先にすす────」


 ────ァァァァァ


「ん? 悲鳴?」


 僕の身体は自然と走り出していた。


「収斗!? どうした!?」


 追いかけてくる賢人と一緒に走っていく。

 話している余裕はない。


 何個かの角を曲がったあとにはウルフの群れが。

 モンスタールームだ。

 まずい。


 尻もちをついている女の子にウルフが迫っている。

 杖で何とか対応しているけど。

 時間の問題だ。


 ここが使い時!

 ここで使えなきゃ意味が無い!


「【整理整頓】」


 ウルフの前に穴がポッカリと空き、縦に並んだウルフが前に前にやってくる。

 ドンドン穴に入っていく。

 三十秒程すると消えた。


 まだ残ってる。

 すぐにはスキルは作動しないだろう。

 だが、賢人がかけて行っている。


 剣を引き絞っている。

 あの動作は……。


「【五月雨突さみだれづきぃぃ】!」


 青い軌跡が次々とウルフの群れに突き刺さり、あっという間に群れで立っている者は居なくなった。


「賢人凄いじゃん! もう違う技覚えたの?」


「あぁ。使ってるのを見たことがあったんだ」


 ホッと胸をなでおろしながら女の子を確認する。

 ローブが乱れている。

 その乱れたフードからは綺麗なエメラルドグリーンの長い髪が見えている。

 顔は少しタレ目で身体は僕くらいの小さめで可愛らしい雰囲気。


「大丈夫?」


「ふぇ……」


「フェ?」


「ふえぇぇぇぇぇぇぇんんーーー」


 いきなり泣き出した。

 どうしたもんか。

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