第3話 探索者登録

「で? どういう事なのよ?」


 真理さんから問い詰められているところ。

 正直に答えるしかないよね。


「それがですね。実は僕のスキルは有効範囲の中でなら人や物を好きに整頓。位置をかえることができるんです」


「配置をかえられるってこと?」


「そうです」


 目を見開いて驚いた真理さん。

 何がそんなに驚くことなんだろう?


「それは凄いスキルよ? なんで今まで言わなかったの!?」


「そ、そうなんですか? 別になんてことないスキルだから言ってもしょうがないかなぁと思って……」


 バンッとカウンターを叩いて抗議する真理さん。


「収斗くん、あなたのスキルはレアなスキルよ? 他人や物に干渉するスキルなんて滅多にないんだから! しかも、場所をかえられる? それって空間系の能力ということ? だとしたらスキルランクはSランク?」


 なんだか呟きが凄いことになっている。

 そんなに高いランクのスキルなのかな?


「でも、それだけじゃないですよ? 収斗のスキルは成長したみたいなんです」


 賢人がさらに追い打ちをかける。


「えっ!? 能力が増えたの?」


「あっ、はい。整頓しかできなかったのが、整理ができるようになって……」


 真理さんの頭にはハテナがいっぱい浮かんでいる。

 そりゃそうか。

 説明しかわかんないよね。


「あのー整頓って、必要なものを取り出しやすい場所に置いておくことを指すんですよ。だから、物とか人の位置をかえられたんだと思うんですけど」


「うんうん。そうよね」


「整理っていうのは、必要なものと不要なものを分け、不要なものは捨てる行為を指すんです」


「ん? ってことは?」


 よく分かってないみたい。

 みないと分からないかな。


「例えばですけど、【整理】」


 ウインドウが出てきた。

 ゴブリンの棍棒をタップする。

 黒い空間から棍棒がポンッと出てきた。


「こんな感じで、収納していた空間からものを取り出すことができます」


 口をあんぐり開けて驚いている。

 せっかくの可愛い顔がだいなしですよ、真理さん?


「凄い……凄いじゃない! やっぱり空間系の能力! それはもう固有スキルだと思うわ! 凄い! 収斗くん、あなたのことをSランクスキルの保有者として探索者登録するわ!」


 えっ!?

 僕がSランクスキル所有者ホルダー

 そんなの憧れてた最強探索者トップシーカーみたい。


「だから、言っただろ? 収斗の能力は凄いって。俺の事信用してなかったのか?」


「えっ? 違うよ。僕のスキルはただ整頓するだけの無能スキルとして笑われてきたから。まさかそんなSランクのスキルだったなんて」


「俺もSランクだ。お揃いだな」


「うん!」


 なんか嬉しいな。

 僕のスキルは無能じゃなかったんだ。


「ねぇ、賢人くんと収斗くんパーティー組むのよね?」


「「はい!」」


 二人の返事がハモった。


「あなた達のパーティー名決めてくれない? それで二人を登録するわ」


「パーティー名かぁ。収斗なんか案ある?」


「んー剣聖と愉快な仲間たちとか?」


「おい! ふざけてる場合じゃないんだって」


「はははっ! ごめんごめん!」


 なんか冗談言って突っ込まれるなんて楽しいな。

 幸せな気持ちになるね。


「明鏡止水」


「ん? 四文字熟語か?」


「ふふっ。そう。僕この言葉好きなんだ。邪念がない! 心が澄み切っている様子を表すんだ。なんかこう、なにが起きても動じないみないな感じがするからカッコイイなぁって」


「うん! それにしよう!」


「えっ!? 僕の好きな言葉でいいの?」


「なんの意味もない言葉より、そういうのがあった方がいいだろ?」


「うん!」


「真理さん、パーティー名は」


「「明鏡止水で」」


「分かったわ。それで登録しておくわ。日本人は好きよね? 四文字熟語」


 そう言われて探索者シーカーランキングを思い出す。

 そういえば、トップランカーって『風林火山』だったっけ。


 南の方の人達だったんだよね。

 なんでも、すごく昔の歴史でそれを唱えた人がいたんだとか。

 その人の末裔って話だったけど。


 たしか名前が……。


「トップランカーが『風林火山』の武田悠玄たけだゆうげんさんですよね?」


「流石に知ってたわね? そうよ。他にも四文字熟語のパーティー名いるわよ? 『疾風迅雷』、『震天動地』、『怒髪衝天』とかね。激しい感じの名前が多いわね」


 そんなに居るのか四文字熟語。

 やっぱり日本は漢字に感化される感じがあるよね。

 カッコイイもんね。

 漢字のパーティー名。


「賢人、よく覚えてたね」


「あぁ。俺は悠玄さんに憧れて探索者シーカーになったんだ。知ってるか? 悠玄さんはスキル自体は刀術っていうDランクスキルなんだ」


「えっ!? それなのにトップ?」


「そう。凄いだろ? 自分の技術を鍛え抜いた努力の天才。そう言われているんだ。だから、俺は自分が許せない。こんなに恵まれたスキルを持ちながら全然強くなれない」


 今までスキルのことで悩んでいたんだね。

 僕も悩んでたけど、同じように賢人もスキルが悩みの種だったんだ。

 でも、それなら簡単じゃないか!


「賢人、一緒にダンジョンに潜って、一緒に強くなろう! 僕もまだまだ自分のスキル使えないし。強くなりたいんだ!」


「……うん。そうだよな! ありがとう! 努力しないと強くなれないよな!?」


「そうだよ!」


 一緒に高めあえるなんて、こんなに嬉しいことは無い。

 賢人は最高の仲間だ。


「はい! 探索者カードよ! 探索者としてはFランクからのスタートになるわ。Fから順に上がっていって、Aの次の最高ランクがSランクよ」


「はい! 頑張ります! 」


「初心者のオススメはFランクダンジョンだけど、二人ならEランクでもいいかもしれないわね」


「はい! まずは、スキルを知ることから始めよう?」


「そうだな。俺もちゃんとスキルと向き合うよ」


 ここから、僕達の探索者としての冒険が始まったんだ。

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