第2話 追放した側の末路
「後ろで俺を勝手に動かしてくれ」
賢人くんからのその申し出を申し訳なく思いながら受け入れることにした。
僕は前にいても戦えないから。
このダンジョンはゴブリンとホブゴブリンが多く、賢人くんだけでもなんとかなった。
危ない時だけ僕が場所を動かしたり、整理したりした。
僕の小さな身体には激しい運動はかなりこたえたみたい。
疲労が激しいけど、これまで
数時間で何とか地上に戻って来ることが出来た。
「はぁぁ。帰ってこれた……」
僕は呆然と空を見上げていた。
すると、ポンッと肩に手が。
「俺も収斗が居たから怪我せず出れたよ。ありがとな」
「ううん。賢人くんが居たからだよ」
「……そのくんっていらない。賢人でいいから」
「でも……」
「仲間……だろ?」
その言葉は今まで言われてきたことがなかった言葉で、僕の心を暖かくした。
思わず笑みがこぼれる。
「うん! 賢人ありがとう!」
「あぁ! 行こうぜ!」
さっき居たダンジョンは大昔にお城っていう建物が建っていた所の下なんだ。
近くにギルドがあるからそこに行こう。
向かう道中、何だか周りが騒がしい。
「あの子生きてたんだ!」
「あの人が助けたのかな?」
「おぉ。よかった」
なんか僕めっちゃ見られてる。
何したんだろう。
なんかしたかな?
ギルドに行くと人だかりができていた。
「だぁかぁらぁ、自分で犠牲になるから行けって俺達に言ったんだって!」
「そんなのこの配信記録には無いじゃないか?」
「っ!? それは!」
口論しているのはギルドの人だね。
ギルドは地方自治体でそれぞれが管理しているんだ。
だから、市役所の管轄になって、そのダンジョン管理に関する一部の窓口をギルドって呼んでいる。
口論しているギルド職員の相手は俺を見捨てて行ったパーティーだった。
「君、生きてたんだ! よかった! みんな心配してたんだよ! ねぇ! モンスタールームにいた子! 帰ってきたよ!」
そばに居た男性が皆に聞こえるように言うと、バッと視線が集まった。
僕は思わず下を向いてしまった。
「おぉ! 戻ってきたか! 心配したんだぞ? よく無事だったな!」
追放した本人がそう話しかけて来る。
身体が震える。
また何かされるんだろうか。
そう思うと身体が震えた。
「収斗は、見捨てられたと言っていた! 近づくな!」
賢人が前に立ちはだかる。
その剣幕に思わず後ずさる男。
「あれ?」
「あの子、剣聖の子じゃない?」
「たしか……剣聖の……」
賢人は有名人みたいだ。
皆が知っているみたい。
「どいてくれよ! 俺はそいつに話がある!」
縮まって動けない。
身体が石になったみたい。
何か言わないと。
「話はない! 収斗は俺の大事なパーティーメンバーだ!」
「だーかーらー! そいつが見捨てて欲しいって言ったんだよ!?」
僕が言わないといけない!
声を出さないと何も変われない!
お腹に力をいれるんだ!
「僕は! 見捨てられました! モンスターの中に蹴られて壁も閉じられました! 生きて帰ってこれたのは、賢人のおかげです!」
言えた。
「てめぇ! そんな事言ってどうなるか分かってんだろうなぁ!? ただの
また縮こまってしまう。
すると。
「逆にお前がどうなるか分かってんだろうなぁ!?」
「見捨てた動画、問題になってて拡散されてるからな?」
「お前はもう
「
「
周りの
なんでも、僕が見捨てられた所が配信に映っちゃってたみたいなんだ。
配信を切るように言ってたけど、切れてなかったんだね。
「あなたは、
「俺は悪くねぇ! 何もしないそいつが悪いんだぁぁ! 悪いのはおれじゃねぇぇぇぇぇぇ」
ギルド職員が怒って連れていった。
あんなに怒るような職員には見えなかったのだけど。
僕のことで怒ってくれていたみたい。
「みなさん! 僕の為にありがとうございます! 僕は皆さんのような
「おう!頑張れよ!」
「困ったことがあったら聞くんだぞ?」
「俺ともダンジョン潜ってくれよな?」
「なんでも聞いてくれ!」
みんないい人で、質問を受け付けるぞと口々に言ってくれた。
正直助かる。
僕は
でも、賢人は怪訝な顔をしていた。
俺がいればいいとか思ってるのかな?
まぁ、たしかに僕は賢人が居ればいいかもだけど。
「収斗、
賢人が案内してくれる。
やっぱり自分がいれば十分だって言いたいんだろうね。
でも、その窓口は僕も
「すみません。
「さっきは驚いたわ。よく無事だったわね?」
受付の真理さんが心配してくれてたようで。
何だか照れくさい。
真理さんはギルドの受付をしてくれている。
オレンジの髪が肩まであるボブで可愛らしい印象を受ける。
そして、首の下には大きいものをお持ちなんだ。
「はい。賢人が助けてくれたからですけどね」
「そう。賢人くんが人を助けるなんて珍しいわね?」
真理さんは賢人にも話しかけた。
「最初に助けて貰ったのは俺ですから」
真理さんは首を傾げた。
言ってる意味が分からないだろう。
なにせ、僕には助けるすべがないと思っているから。
「ん? 収斗とは真理さんにスキルのことを伝えていないのか?」
「んーとね、伝えているんだけど、物を整頓するのが得意なスキルとしか伝えていないから」
賢人の、質問に答えたら真理さんが身を乗り出してきた。
大きいものがカウンターに潰れる。
「どういうこと? それだけじゃなかったの!?」
ちゃんと説明しないといけないみたい。
騒ぎにならなきゃいいな。
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