追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥

第1話 追放された後の覚醒

 地球にダンジョンが産まれて数十年がたった。

 人々にはスキルが備わり、スキルを活かしてダンジョンを攻略するものが現れた。


 それが、探索者シーカーの始まり。


 最近は配信をしながら探索するのが流行りとなっていた。

 今日も配信しながらのダンジョン攻略なのだ。

 配信用のBOTが浮いている。

 撮影開始すると、勝手に着いてきてくれるのだ。


「うお! ここは落ちたら奈落じゃねぇか?」


「えー!? ちょっと怖いよぉ」


「はっはっはっ! コイツ落としてみるか? どのくらい深いかわかんじゃね?」


 三人は中級者でDランクダンジョンに潜っている最中である。

 それについて行ってるのが僕。


 背が小さくてヒョロい僕は無能なスキルを持っているため、荷物持ちをして生計を立てていた。


「えっ? 僕、荷物もってますよ……」


 こう言って抵抗するが。


「あぁ? ちゃんともってろよ? 落としたら殺しちゃうぞ?」


「あっはっはっ! 止めろよ! わかいそーだろー。スキルレベルゼロで物を並べることしか出来ないスキルって可哀想すぎだろ!?」


 無駄なようだ。


 このパーティーは失敗だったかなぁ。

 ホントに殺されちゃうよ。

 ついて行くのでいっぱいいっぱいだし。


 というか、こんなの配信してて大丈夫なんだろうか。

 でも、一応配信でも稼げてるみたいだからなぁ。


「おっ! こっちに宝箱があるぜ!?」


「マジかよ! 行こうぜ!」


「私が貰うー!」


 僕も慌ててついて行く。

 入った瞬間。

 バスンっと入口が閉まりモンスターが召喚されてきた。


「やべぇ! モンスタールームだった!」


「おいどうすんだよ!?」


「ちょっとぉ!?」


 チラリとこちらを見た。


「しょうがねぇ。配信切れ。ファイアーボム」


ドォォォンッッ


「逃げるぞ!」


 三人が部屋の外に行く。

 僕もついて行く。


 身体が宙を舞っている。


 えっ!?

 なにが!?


 気付くと開けた穴が閉じられていた。

 後ろを振り返るとゴブリンの群れが。


 あぁ。やられた。

 ここで死ぬのかぁ。

 いや、僕は諦めたくない。


 ゴブリンが棍棒を振りかぶってくる。

 目をギュッと閉じるが。

 少し勇気を出して目を開けて。


「【整頓】!」


 目の前の振りかぶっていたゴブリンを後ろにいたゴブリンと入れ替える。

 ゴキンッと頭に棍棒が当たり倒れる。


 【スキルレベルが上がりました】

 【「整理」が使用可能になりました】


「えっ!? レベルがあがった!」


 迫り来るゴブリン。


「【整理】! 【整頓】!」


 目の前に二メートル四方の穴が空く。

 ドンドン穴に一列になったゴブリンが入っていく。

 目を見開いて驚いた。


 こんな事あるんだ。

 全部穴に入っていった。

 自動で穴が閉じる。


 すると、ウインドウが現れた。

 中にはモンスターと武器、防具などに別れてリスト化されている。


 モンスターのゴブリンをタップする。

 すると、ポップアップが上がってきた。

 選択肢は「しまう」「すてる」「わける」であった。


 えぇー。ゴブリンでしょ?

 一体をしまって、後はすてる一択だよね。

 武器はしまっておいて。


 あれ?

 これって物も魔物も収納出来るってことかな?

 それだけでも引くて数多じゃない?


「はぁ。どうやって出よう。とりあえずゴブリン!」


 ゴブリンを出す。

 穴からポンッと出てきた。


「あの壁を棍棒で殴って!」


「プギッ!」

 

 塞がれた壁をゴブリンが殴る。

 少し壁が剥がれたが、まだまだだった。

 何回か殴っているとボロボロと壁が崩れた。


「ありがとう。【しまう】」


 シュッと穴の空いた空間に消えた。

 なんか凄いな。


 外に出る。

 当たりを見回してモンスターが居ないことを確認してホッと一息。


 そのまま上を目指す。

 中層みたいだからなぁ。

 行けるかなぁ。


 少し警戒しながら上に向かう。

 あっ。

 あそこに剣で戦ってる人がいる。


 一人?

 凄いな。


 後ろからホブゴブリンが棍棒を振り下ろす所だった。


「【整頓】!」


 ホブゴブリンと剣士を入れ替えて攻撃を躱す。

 その後、剣士は危なげなく倒した。

 なんか、余計なお世話だったかな。


 その剣士も配信してたみたい。

 こっちに歩いてくる。

 あっ。余計なことして怒られちゃうかな。


「すまん! 助かった! さっきのは君のスキルかな?」


「あっ、そうです。整理整頓っていう無能スキルって言われてるものです」


 正直にスキルについて話す。


「無能? とんでもない。凄いスキルじゃないか! できれば、俺とパーティーを組んでくれないか?」


「えっ!? ぼ、僕でいいんですか?」


「あぁ! 一人でちょっと行き詰まってたんだ。俺は賢人けんとって言うんだ。君は? っていうか怪我してる!? 大丈夫か?」


 僕の長めの青い髪に土埃がついたり頬が少し切れたり、腕も打撲や切り傷が所々にある状態だった。


「う、うん。ちょっと手伝いでついてきてたパーティーメンバーに見捨てられちゃって」


「なんて奴らだ」


 僕の為に怒ってくれるみたい。

 目が鋭くなった。

 こんな怒ってくれる人が居るなんて。


「もういいんだ。僕が役に立たないから。あっ、僕は収斗しゅうとっていうんだ。ホントに僕でいいの?」


「あぁ! 俺のスキル目当てで近づいてくる奴らばかりで嫌になってたんだ」


「へぇ。凄いスキルなの?」


「んー。まだあんまりわかんないけど、【剣聖】ってスキルなんだ」


 それは、名前から想像すると凄いスキルじゃないか! なんて人とパーティーになっちゃったんだ!


「僕のスキルはレベルゼロの時は整頓だけだったんだけど、レベル一になって整理整頓になったみたいなんだ。物とか、モンスターをしまったりできるみたいなんだ」


「俺はスキルレベルは二だけど、剣が軽く感じるくらいでなんかこう。技とかを覚えなくて……」


「そうなんだね。一回上まで行かない? 僕は探索者として登録してないんだ」


「いいよ! 行こう! すぐに登録してダンジョン攻略だ!」


 僕の探索者シーカーとしての冒険が始まった。

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