◆2◆ 美少女転校生はあたしの知り合い!?

「はぁ〜〜〜。づがれだぁ……」

 クラス発表の貼り紙を超特急で確認したあと、なんとか五年一組の教室にたどり着いて席に着いたあたしは、机に思いっきり突っ伏した。

 家から走ってきたから、息が上がりっぱなしだよ。

 隣の席の颯真は、一緒に走ったはずなのに平然とした顔。さすがだなぁ……。


「みんな、席に着けー。朝の会やるぞ」

 ちょうどそこへ、学級日誌を持った先生が入ってきた。

 うぎゃ、ほんとにギリギリだったなっ。

 明日からは寝坊しないようにしないと……と反省しつつ改めて先生の方を見ると、後ろから生徒が一人ついてきてる。……女の子みたい。

 この学校の制服を着てるけど、見覚えのない顔だ。

 髪は肩ぐらい(ミディアムヘアってやつ?)で、顔の横で編み込みをしている。なにより彼女、今男子たちがザワザワしているくらい、可愛いらしい顔立ちなんだ。

「まず、転校生を紹介する。桜野さん、自己紹介してくれるかな?」

「は、はいっ」

 先生に振られ、彼女は上擦った声で答えた。声はちょっと小さくて震えてるから、多分緊張してるんだと思う。

「は、初めまして。群馬県から来ました、桜野さくらのもえです。とっ、東京に来たばかりで分からないことが多いですが、よろ、よろしくお願いしますっ」

 言い切ってから、ぺこっと頭を下げた桜野さん。

 みんなはパチパチパチッと一斉に大きな拍手をした。

 あたしも拍手しようとして——、ふと手を止めた。

 ……桜野もえ? さくらの、もえ……。

 なんか、聞いたことある名前なんだよなぁ……。

「あーーーーっ!」

 あたしのいきなりの大声に、桜野さん含め、クラスのみんなが一斉にこっちを見た。

 ひえっ。あたしは慌てて口をつぐむ。

「どうした、数原」

 先生がいぶかしげにあたしの様子をうかがう。

「ななななんでもありませんっ」

 なんでもなくないよ! まさか彼女がこの学校に転校してくるなんてっ。

 あたしは口から出ちゃいそうな驚きの言葉を、急いで飲みくだす。

 そのとき、桜野さんとバチッと目が合った。

 彼女はジッとあたしを見つめ、しばらくしてから何か思い当たった顔になった。

 も、もしかして、彼女も気づいた? さっき先生があたしの苗字を言ってたから、あたしがのかも。

 だけどあたしはゴクリと喉を鳴らして、桜野さんから視線を逸らした。

「桜野の席は……ちょうど空席になってるあそこだな。数原の後ろ」

「えっ」

 思わず声が出ちゃった。あ、あたしの後ろとな!?

 桜野さんは頷き、ゆっくりこっちに歩いてきた。

 そしてあたしの後ろの席に着くと、

「よろしくね、数原さん」

 彼女はニッコリ、まさに桜の花がほころぶような、可愛らしい笑顔を浮かべたのだった。

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