そろばん少女、ここにあり!
紫水 嵐
◆1◆ 遅刻は勘弁!
ピピピピッ ピピピピッ
鳴り響く電子音。この音は……目覚まし時計のアラーム?
あたしはうーん……と寝ぼけ眼でアラームを止める。ついでに時刻も確認した。
短針は八。長針は十二を指している。つまり——、八時ちょうど。
なんだ、八時かぁ……。ん? 八時……!?
「ぎゃぁぁぁぁ! やばい、遅れるっ」
朝の会、八時二十分からなんだよっ。
えーと、家から歩いて約二十分かかるから……。走らないと遅刻だ!?
「
あたしの部屋に、鬼の形相をしたお母さんが入ってきた。
「わ、分かってるよぉっ。もう起きたから!」
制服に着替えたあたしは部屋のドアのところに立つお母さんの隣を全速力で通り抜け、バタバタバターッと階段を降りていく。
そしてリビングに用意されてたトーストをかじり、玄関を飛び出した。
「遅いぞ、珠優!」
外に出た途端、あたしに怒声を飛ばしたのは、幼馴染の
目尻がギュッと上がってる。こここここれは相当お怒りですね……っ!?
彼はトーストをかじったままのあたしを呆れた目で見やり、パシッと腕を掴んだ。
「走るぞ! このままじゃ遅刻しちまう!」
「ひゃいっ」
あたしは掴まれるがままに走り出す。
そしてトーストを少しずつ口の中に入れ、最後に飲み込んだ。
うわぁん、間に合ってぇ〜!!
あたし、
私立の小中一貫校、
今日は新学期初日なのに、遅刻しそうだなんて、大ピンチだよっ。
道の両端には、ずらり並んだ桜の木々。その桜が風になびいてる。綺麗だなぁ……。
なんて、見惚れてる場合じゃないよね。
隣を走ってる幼馴染の流川颯真は、幼稚園の頃からずっと一緒なんだ。
家が隣同士だから、近所の公園でよく遊んだりしてたんだよ。
だから今も、公園で遊ぶことはなくなったけど、こうやって一緒に登校してる。
あたしにとっては、颯真はお兄ちゃんみたいな存在かな!
——と、薄茶色を基調にした綺麗な校舎が見えてきた。
あたしたちが通ってる学校、和数学園!
校舎の時計を見ると、八時十五分。
ギッ、ギリギリ間に合いそうだっ。
あたしと颯真は速度を緩めず、校門をくぐり、教室へ向かった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます