窓ガラスが割れて破片が散らばる。

そして

ポケットに手を入れて

持っていたライターを取り出し

窓からライターを投げ入れた。

数十秒後

中から聞こえる父さんの怯えた叫び声とともに

一気に炎は舞い上がり、倉庫はあっという間に崩れ落ちた。

これで良かったんだ。

これで終わった。

この手で、父親に復讐した。

赤く光る炎と勢いよく空に舞う黒い煙を少しの間眺めてから、僕はその場を立ち去った。

数日後、僕の家に警察が来た。

分かっている。

僕は放火犯だ、警察に捕まる。

でも父親に復讐できたんだから

もう捕まったって良い。

玄関のドアを開けると、刑事の男性が2人立っていた。

警察手帳を見せてから、1人が話し始めた。

「この倉庫に火をつけたのはあなたですね。」

差し出された写真には、僕が数日前に跡形もなく燃やした倉庫が写っていた。

「はい、私です。」

「焼け跡から、1人の男性の遺体が見つかりました。」

「僕の父親ですね。

10年前、父親は自分の家に火をつけて母親の命を奪いました。その復讐の為に僕が」

そこまで話して、刑事が僕の話をさえぎった。

「いえ、それが、見つかった遺体は

あなたの父親ではありません。」

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