二十話 楽しい悠々自適なサバイバル生活!
小鳥の
ゆっくりと起き上がって大きく伸びをする。
鱗に挟まった草を抜き取りつつ2日前に溜めた雨水を一口飲む。
昨日はぐっすり寝ることが出来た。
この世界に来て初めてまともに寝ることが出来た。
石器一式を持って辺りを散策に行く。
鑑定を発動させて使えそうなものがないか探し回る。
毎日の日課として続けている。
もしかしたら新しい攻撃手段や、薬やポーションになり得る物が見つかるかもしれない。
我は一応、物理攻撃もいけるがメインは魔法による攻撃だ。
魔法使いは魔力が命だ。もし使い切ったらただの的に成り果てる。
つまり魔法使いとはどれだけケチになれるかがミソになってくる。
まあ、ケチりすぎて死んでしまっては元も子もないが…
だから魔法使いは回復のポーションに加えてマナポーションも持ち歩く。
それぐらい魔法使いにとって魔力は大事なのだ。
そうこう言いながら地図に地形を書き込んでいく。
元気なうちに動いておくことが重要と聞いたことがある。
手に握りしめた最後のコミコミの実を口に放り込んでエネルギーを補給する。
木に巻き付いていた蔓を腰に巻き付けて、木の板の地図を挟んでいるが、時々ずり落ちそうになっていらいらする。
持ち運びやすい紙も欲しいし、それを保管する皮のポーチも欲しい。
正直、カーラが持っていたポーションを入れたポーチを奪えば良かったのだが、血で汚れていて獣が血の匂いを嗅ぎつけてきそうで持っていかなかったのだ。
今頃獣がゴブリン達の骸を食い漁っているだろう。
黙祷を捧げつつ、目の前にある大きな岩を取り出した木炭のカケラで地図に描き込んでいく。
こうして少しずつ範囲を増やしていくことで道に迷わないようにするのだ!
今日はもう少し奥に入ってみようと思う。
大岩を迂回して進んでいくと、
(‼︎)
息を殺して耳を澄ませる。
「水の音?」
確かにそうだ!
「水だぁ〜!」
猛スピードで駆けていくと、そこには小さな川が流れていた。サバイバル生活9日目にして水資源を獲得することができたのであった。
冷たい小川の水を口に含む。
もうあの生暖かいから雨水を飲まなくていいのかと思うと涙が出てくる(出ないけど)。
ここにはこれからよく通うことになるだろう。
地図に川のマークを描き込んだ後、付近を散策するとしよう。
水辺にはいろんな草花が咲き誇り、楽園のようだった。
いつかここを絵に描いて見たいと心に留めながら《
何か食い物があれば儲け物なのだが……
しかし結果は雑草だらけだった。
何種類かの花は染め物に使えるらしいが、今は必要ではない。
拠点とここは距離にして2キロくらいか。
陽が落ちる前に帰るか……それにしても今日は大収穫だな。
そう思って沈みかけた太陽の方向を向いた時、茂みがあった。
少し離れた場所にあったから完全に見逃していた。
(もしかしたら食えるものかもしれない!)
そう思うと体に蓄積された疲れがぶっ飛んだような気がした。
小川を見つけた時以上の猛ダッシュを見せて茂みに駆け寄った。
「《
イトマキ草
耐久値 360
備考
硬くて食えたものではない。水につけて皮ふやかし、剥がす時に石で叩くとはがれやすくなる。剥ぎ取った皮を捻りながら編むことで、強い糸になる。
「チクショぉぉぉ!食えねぇのかよぉぉぉ!」
そのまま10分ほどぐったりしていたが、やっと冷静に考えることができた。
「ん?ちょっと待てよ、これで糸出来るじゃないか!」
これはしめた!糸があればやれることがだいぶ増える!
そうと決まれば採集あるのみ。
尻尾で器用に掴んでいた3本の石器のうち黒曜石のナイフを手に取る。
イトマキ草はこの辺りに群生しているため、数に困ることは無さそうだ。
ゴーレムのように無心になってイトマキ草を刈っていく。
「いっでぇぇぇ!」
無心になりすぎたせいか手元が誤り、ナイフで指を切ってしまった。
器用さを表すステータスは聞いたことがないが、もしあるとするならば我の器用さは100も満たないだろう。
そうでなければあんなに石で指を打ちつけることなんか無かったはずだ。
その後は慎重に切っていったから進行スピードは遅れたが、何とかイトマキ草の刈り入れが終わった。
刈り取ったイトマキ草を小川の水に漬けて今日の業務は終わりにするか。
また細かい作業をしなければいけないとうんざりしつつも、
まあ、1日くらい漬けておけばいいだろう。
帰りがてらに食料のコミコミの実の調達にいく。
ここ最近コミコミの実しか食べてない。
ああ、肉が食いたい。
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