第二章『きらきらひかる夏休み』 ①①
慣れた足取りで家に入る可絵。そうだ、ワッフル。わたしは袋から買った物を取り出し、キッチンに置いていく。アイスは少し、いやかなり溶けてしまっている。急いで冷凍庫に入れて、もう一度固まるまでひみつにしておこうとドアを閉めるときの、腕の、ミサンガ。ここが、黄色くて、とてもいいな。
「あっつー。熱中症なる。てか、もうなってるかも。ほら、ニュースでやってるで。熱中症」
熱中症と連呼するから可笑しくて、「何回言うねん」と突っ込んでから、テレビの音がついているのに気付く。ふだんは無音にしているから、慣れないことなのに、それよりも可絵の存在がわたしのテレビ画面で、でもなぁ、こんなのは重たいだろうなきっと、もっと気軽に、気楽に、ラフに、いかないとなぁと、ほら“依存”ってよく言うじゃないかと、それもどちらかというと、いや確実に良くないほうの意味で聞くからと「ふー」と深呼吸をする。熱を逃がす。
すると可絵が言った。「恋、お風呂入らん?」「え、ああ、入ってきていいよ。ごめん、ちゃんとお風呂洗ってないけど」「いや、恋も汗だくやん。さっと入ろーさ。熱中症、熱中症」ぱたぱたと手で顔をひたすらあおぐ可絵。どうやら一分一秒でも早く、さっぱりしたい様子である。「恋は、後でいいよ」「そう? ほんなら入ってくる。ごめんなぁ」「うん、お風呂こっち」可絵をお風呂まで案内したのも束の間、服をぽんぽん、まるで人形の服を着せ替えるかのように躊躇なく脱いでいくので「じゃあ、あっちにいる」と言ってあわててキッチンへ戻った。
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