第7話【フォーエンツオラン家の秘密】
「貴族なら血を絶やさぬよう、」まで言って続きを言っていいかどうか少し迷った。でも〝言うしかない〟と決めた。「——子づくりに励むものじゃないんですか?」
その〝言い方〟が少しアレ過ぎたのかも。奥さんの方が露骨に嫌悪の表情を露わにした。しかし
「だからわたしよりは近い、そういうご親戚の方もいるのでは?」と、さらに訊いていく。もちろんこれには〝隠し子〟って意味も含まれてしまう。
事前にちょっとだけ思った通り、言ったらますます空気が悪くなっただけだった。
「ちょっとよろしいですかな?」と、ここでフォーエンツオランさん。
このまずくなってしまった〝空気〟をどうにかしてくれるの? なんて思ってたら——
「——実は私の妻はその〝親戚〟でしてね、わたしだけじゃない。累代の当主からしてそう。それ故もう他に親戚すらもいないのです」
???
〝いとこ同士の結婚〟ってのが稀にあるとして、どうして親戚同士で代々と? しかしことが『結婚』絡みとなると、他人のプライベートに踏み込んでいくようで、これ以上話しを続けにくくなってくる。もう話題を変えるしかないのかもしれない——
「あの……わたしの方からも一つだけいいですか?」そう切り出す。
「なんなりとどうぞ」とフォーエンツオランさん。
「わたしが〝この家の跡取り〟になってしまったら、元の世界からはわたしは消えてしまうんですよね?」
「そうなりますな」
わりとあっさり、とんでもないことを言ってくれる。
「人に人生の選択を迫ってるんです。『血が近い』なんて、それだけ言われて『はいそうですか』なんて納得して、簡単になんて決断できません」そう言うしかないでしょ、ここは。
「なるほど、〝道理〟です。そうですね……では〝いちばん最初〟に戻しましょうか」
「いちばん、最初?」
「役所絵里さん、あなたが疑問に思ったことを訊いてくれて構わない、ということです。ただし、あなたが光らせ、私どもが
例外、ね。まあいいか、それなら。だったらそれはそれでさっきの続きができる。いまこのタイミングしかない。
「どうして親戚がどんどん減っていくような結婚を続けてるんですか?」
「『我がフォーエンツオラン家の〝
「ええ、覚えてますが」
「端的に言って血が薄くなると『錬金術』が使えなくなるのです。だからある一定程度の血の濃さを維持するために親戚同士で婚姻関係を結ぶしかない。しかし、血が濃すぎると子が生まれなくなるのですよ。そうして一定以上の歳月が流れた結果、我が家は親戚すらいない家になってしまった」
「……それってつまり……、わたしも〝血が相当薄い〟ってことになりますよね?」
「客観的には相当薄いでしょうなあ。しかし跡継ぎがいないのといるのとでは雲泥の差であるのは間違いありません。跡継ぎがいなければ我が家は私の代で断絶です」
これはもう〝嫌な予感〟しかしないってやつだ。
「わたしを〝跡継ぎ〟にして、取り敢えずこの家を存続させてもですよ、わたしにその『錬金術』という魔法ができなかったら、この家の地位ってものは〝このまま〟でいけるんですか? いつまでも『裕福な公爵家』でいられますか?」
フォーエンツオランさんが意味深にうなづく。
「自画自賛のようになってしまうが、さすがは我が一族だ。頭が切れる。『錬金術』云々ではない。その頭こそ、これからの我が家にとって最も必要なんです」
いや、この程度でそんなこと言われても。だいいちそれって〝破滅フラグ〟が立っているってことだよね? そんな家を、たとえ〝公爵〟だろうと『継げ』だなんて冗談じゃない!
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