マントが臭すぎるっ!

アメフト三人組が強力な攻撃を放った瞬間、アメフト側の四人が吹き飛ぶ。何を言っているかわからないと思うが、とにかく攻撃した側が吹き飛んだのだ。さらに不思議なことに、客席にいたはずの竜太郎も一緒に吹き飛んでいた。

「リュウ?!」

「あいつ、いつの間に移動を?」

「さっきまで近くにいたのに?」レオンたちが混乱している。


ゼミ間の決闘はジュリーマンゼミ側の勝利に終わり会場は歓声に包まれる。

「あのアメフト部を一人で撃破するとは…」

「我々もあの学生が欲しい。」

「一瞬で撃破したぞ!」皆興奮している。


「いてて…なんで俺こんなところに?」竜太郎はゆっくりと起き上がり周りで倒れているアメフト三人組を眺める。


「あら、二留じゃない。大丈夫?」私は優しく声をかける。

「くそっ!お前また何かやっただろ?」竜太郎は機嫌が悪そうに言う。

「なんのこと?」私はしらばっくれる。

「はぁ、証拠がないからなんとも言えねえ。」竜太郎は諦める。

「よかったぁぁぁ!勝ったぁぁぁ!」教授は感涙に咽びながら抱きついてくる。

「ちょっと教授?」私は困惑する。よほど今まで決闘により辛酸を舐めていたのだろう。

「イリーナ、とりあえずこれを羽織っておけ。」マグネスは服が崩壊寸前の私のために棺桶に中から茶色いマントと取り出し私に被せる。棺桶に入れていたからか絶望的に臭かった。

無法者上級パーティーによるダンジョン内の魔物虐殺があった二週間後の臭いだった。死ぬほど臭いが風が吹けば全裸になりそうな今の格好でキャンパス内を練り歩くよりはマシである。

私は涙目になりながらその場から立ち去る。ともかく教授の研究室に戻って着替える。話はそれからだ。

「泣くほどうれしかったんですね。」レオンがにこやかに言う。

泣くほど臭いんだよ!


とまあ、その後私は着替えてゼミ室に戻った。闘技場から戻ってくる説明会参加者に悟られないようにできるだけ平静を装う。そのまましれっと説明会に参加し仕事を終えたのだった。

「報酬増やすから?ごめんね?」教授はしきりに謝ってきた。

「まあ、報酬が増えるならいいわ。」私は安堵のため息をついた。


時間を止めた件についてはマントが臭かったせいで完全に忘れてしまった。


・・・・・・・・・・・


「あれは時止めか?いや、違うな。時止めよりも単純だった。あれは硬化スキルの拡張か?空間そのものを硬化させる?そんなことができるのか、硬化はタンクのスキルだ。死にスキルとか言われているがな。だが、スキルの拡張は魔術の心得がなければできるものではない。うむ、わからん。」闘技場を見下ろす男は頷く。

「だが、あの女、面白い。監視のしがいがある。」男は笑う。


「教授!ここにいたんですね!」学生が声をかける。

「何かな?」

「今日の古代魔術特論の講義で詳しく伺いたいことがありまして。」学生はテキストをカバンから取り出す。

「佳い佳い。熱心なのは素晴らしいことだ。」教授は満足そうに頷いた。


「よくわかりました。ありがとうございます。」学生は頭を下げる。

「佳い佳い。学生は学ぶのが仕事だからなぁ。そうだ、ちょうど今協力者が欲しかったのだ。面白い魔術を見つけてな?」老教授は不敵に笑った。


説明会編 完

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