学校で決闘なんてするな。

その後もしばらく質疑応答が続き説明会は終わりそうな雰囲気になる。私も安堵しぼーっとしていたのだが、事件は突如起こった。

突如ガタイの良いおじさんが部屋に入ってきた。

「よお!よくこれだけの学生集めたな!」男は悪い顔で笑いながら言う。

「そっちはどうなんだ?ここに来るってことは芳しくないようだな。」教授はドヤ顔で言う。

「まあな。俺は学生を頂きに来た!」男は腕を組んでそう宣言した。

教授と一部の学生以外は首を傾げた。


大学には独自の文化がある。それはゼミや部活、サークル間で起きる有能な人材の奪い合いである。それらの組織は腕に覚えのある学生同士が決闘し勝った方の優秀な人材を奪うのだ。

我々の住む世界よりも優秀な大学生が希少である異世界特有の文化である。


「えぇ…」竜太郎はドン引きした。


「まあ、人材獲得は大事よね。」

「ですね。優秀な人材ともなれば替えがききませんからね。」

「そうだな。我々も昔そうやって優秀な兵士を獲得していた。…おっと、本にそう書いてた。経験したわけじゃないぞ。」

「そうね。リュウもそう思うでしょ?」皆揃って頷く。


「おっ…おう。そうだな。」え?俺がおかしいの?マジ? 竜太郎は思った。


「さあ、決闘だ。こちらは魔術アメフト部三年を四人連れてきた。だが、貴様のゼミには学生がいない。さあ、どうする?」男は悪い顔で笑う。

「メンバーがいない場合どう頑張っても私の勝ちとなる。降伏するか?」男は教授に詰め寄る。

教授は不敵に笑う。

「何を言ってるんだ?いるさ。一人な。」教授は不敵に笑う。

「そうだ…確か貴様の論文を読んだ時、共にダンジョンを踏破した女がいたと書いてあった。まさか、いつの間に…」相手の教授は深刻な顔になる。

「お前ら野蛮な決闘するくせにお互いの論文はちゃんと読んでんだな…」竜太郎は怪訝な顔をする。

「いるんだよ。こっちには腕の立つ学生がな。」そう言って教授は私に目配せする。

私は大きなため息をつくと再びお腹を抑える。

「あっ!またお腹痛くなってきたな〜あらら大変ちょっとお手洗いに…」私はそう言って抜けようとするが、相手の魔術アメフト部の学生が出口を塞いできたので拳を硬化させ顎に打ち付ける。そのまま学生は動かなくなる。これで3対1だ。


学生は講義中であっても決闘のための途中退出は許される。決闘の場合テストなども合格扱いとなるため、テスト勉強をしていない学生があえて決闘を行いテストをパスする光景がよくみられる。単位を気にせずゼミや部活のための決闘に専念できるのだ。


「異世界の未来は暗いな。」竜太郎はため息をついた。

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