オタクっぽいやつを狙え。

「なあ、ゼミどうする?」

「マジどうしようかな。やっぱ魔術やりたいよな。」

「だよな。やっぱ魔術は花形だよな。」

「法学は?」

「いいじゃん!法学もいいな。」

「魔術師になるか法学者になるか迷うよな。」


「えっと、ジュリーマン教授の考古学ゼミなんですけど、興味ありません?」私は学生の集団に声をかける。


「…」

「…」

「…」

「…」

「でさ、魔術はどれにする?」

「うーん、やっぱり古代魔術かな。」

「だよな。」学生たちは何も聞かなかったことにして去っていった。


「ダメね。」私はふふッと笑う。

「イリーナさん、こっちもダメです。」レオンとマグネスが肩を落としながら戻ってくる。」

「0だった?」私は尋ねる。

マグネスは申し訳なさそうに頷いた。

「説明会に引き込むことすら難しいとはね。」私はため息をつく。

「ああ、考古学って不人気なんだな。」マグネスは周りを見渡しながら言う。

「やっぱり主流は魔術や法学ですからね。修めれば将来が約束されてるみたいですから、こっちに興味を持つ人はいないですね。」レオンはぼやく。

「悲しいわね。」私は教授のことを想う。


「はぁ…呆れるな。」後ろから煽るような物言いが聞こえる。

「二留?」私は振り向く。

「うるせえ。」竜太郎が不機嫌そうに言う。だが、同時に私は竜太郎とソフィーの後ろにいる。3人の学生を見て驚いた。

「まさか…説明会希望者?」私は驚く。

「ああ。これで6人目だ。」竜太郎がドヤ顔で言う。

「へぇ、すごい!」私は素直に感心する。

「素直に感心するな。調子狂うだろ?あと、教授が泣くぞ?」竜太郎は目を細める。

「なにかコツとかあるのか?」マグネスは興味深そうに尋ねる。

「オタクっぽいやつを狙うんだよ。陽キャを狙っても可能性がないわけじゃ無いが効率が悪い。オタクを狙うんだ。」竜太郎は自身ありげに言う。

「オタクっぽい?どういうこと?」私は首を傾げる。

「あ〜、オタクの概念は難しいか。簡単に言うとだな…うーん。俺みたいな奴!」竜太郎は親指で自分を指した。


・・・・・・・・・・・


「16人も、竜太郎くんが集めてくれた6人と合わせて22人も!嬉しいね。ありがとう!」教授は嬉しそうに言う。

「はい。どういたしまして。」レオンも笑顔で頷く。

「いやあ、竜太郎みたいな奴を狙ったら驚くほど来てくれたよ。」私は竜太郎に礼を言う。

「ああ。竜太郎のアドバイスは的確だった。」マグネスも賞賛の言葉を送る。

「流石ねリュウ!」ソフィーは誇らしげだ。

「なんか複雑…」竜太郎は思った。


「じゃあみんな。次は説明会だからエキストラよろしく!」教授は嬉しそうに拳を突き上げた。

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