試練のスピーカー絶対Bluetoothだろ?

そして私たちは次の試練に進む。


『开始二审。 你准备好了吗?』


「だから!何言ってんのかわかんない!」私は虚空に向かって叫ぶ。


『…』


『Bluetooth disconnected』


「なんか変な音聞こえるよ?」

「怒らせたんじゃないの?」


『Power off』


「なんかやばい?」

「絶対やばい!火の海になるんじゃない?」


『Power on』


『Bluetooth pairing』


「…」

「…」


『Bluetooth connected』


「え?何?」

「わからん。」


『では第二の試練を始める。』不気味低い声が響く。悲しいことにすでにその声に威厳などかけらもなかったが。

『第二の試練はアスレチックだ。このアスレチックをクリアし対岸のボタンを押せば第二の試練はクリアだ。だが、一度足を滑らせればこの溶解した鉄の海に落ち二度と上がってくることはできない。』試練の説明が終わる。

溶けた鉄の煮えたぎる真っ赤な海の上にはどういう原理かわからないが石の足場が浮遊している。


「ここを渡って向こうまで行けばいいの?」私は嫌な顔をしながら言う。

「これは…落ちたら終わりだな。」教授は辛そうに言う。

「まあいいわ。私が行く。」私は荷物を置いて前に進み出る。

「大丈夫なのか?」教授は心配そうに言う。

「大丈夫。ダンジョンにも足場の悪いところはあるし、最近は度重なる登山で体力もついてるから。」私は自信満々に笑う。


「気をつけて!」教授が言う。

「ええ。」私は頷くと助走をつけて跳ぶ。


そしてそのまま煮えたぎる鉄の海に落下した。

「あああああああ!!!!!」教授の絶叫が聞こえる。

跳ぶタイミングを間違えた。跳ぼうとした頃にはすでに片足が鉄の海に上にあった。

体力が多少ついても運動のセンスは変わるものではない。恥ずかしくてこの鉄と同じ温度になりそう。そう思いながら私は鉄の海にパチャンと落ちた。


「大丈夫か?今助ける!」教授は下を覗くがあまりの熱気に顔を背ける。

「あ〜、大丈夫。そこで待ってて。」私はそう言うと溶けた鉄の上を歩く。最初からこっちの方が早かった。そう。最初からそのつもりだった。アスレチックをクリアする気なんてなかった。本当だ。本当だよ?


「えぇ…返事軽…」教授は困惑した。あの女のおかしな耐久力についての論文を書いた方が良いのではないか。そう思ったが教授は文系なので諦めた。


私は歩いて溶けた鉄の海を越えると謎のボタンを押す。

ゴゴゴという音と共に浮遊する石が移動し一本の道になる。

「これでクリア?」私は教授の方を見る。


「そう…なのかな?」教授は困った顔で橋を渡ってくる。

「よし。じゃあ、第三の試練もパパッと済まそうか!」私は少し機嫌が良くなる。


案外ここの試練ガバガバっぽいのでゴリ押しが効くのでは?よし、いけるぞ。 教授は心の中でニヤリとした。

「よし!早速第三の試練といこう。さあ!レッツゴー!」教授は楽しそうに言う。

「なんかテンション上がってる…」イリーナは困惑した。


・・・・・・・・・・


次の部屋には凶悪な棘付きの振り子がブンブン揺れていた。すべてタイミングがバラバラなのでこの間をうまく抜けていくのだろう。

『それでは第三の試練だ。この一本道に無数の棘付きの振り子がぶら下がっている。うまくタイミングを見計らってゴールまで進め。』なんとなく天の声のテンションが高い気がする。

そのナレーションが終わる頃には私たちは半分くらいまで進んでいた。

「ねえ、説明ちゃんと聞かなきゃ。」教授は呆れながら言う。

「見たらわかるでしょ?はい早く通って。」私は棘付きに振り子を押さえつけながら教授を通す。

「見たらわかるとか言って凡ミスして単位を落とす学生を大勢見てきた。危険な考え方だよ?」教授は諭す。

「はいはい。あと、私がこれ押さえてられる時間にも限度があるからね?力弱いし。」私が脅すと教授は姿勢を低くして振り子を抑える私の腕の下を通り抜ける。


「えっと、これでクリアってことでOK?」教授は拍子抜けしたような顔をする。

「みたいね。楽勝だったわね。」

「いや、普通楽勝じゃないんだよな。」教授と私は言い合う。


「で、次の試練に進みましょう。」私は次の部屋に入っていく。

「だから!もっと計画的にだね!」教授も文句を言いながらついてくる。

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