大学院ディ・ジョーンズと第一の試練

 「よし!古代のロマンを解き明かしにいくぞ!」教授はカウボーイハットを被り決めポーズをとる。

「おー。」私は力無く返事する。

「って!なんだこれ!」私は突っ込む。

「いやいや、我々発掘隊の活躍を祈ってだな?」教授は嬉しそうに言う。

「っていうか、何この帽子!」私は帽子を脱ぎ捨てる。

「それは頭を守るためにだな?」教授は説明する。

「いらない。あげるわ。これで防御力二倍ね。」私はそう言って帽子を教授に被せる。

「どうも…」教授は言う。


・・・・・・・・・・


「ここが今回の現場。古代の墓だ。」教授は大きな石製の門のようなものを指差しながら言う。

「墓ねぇ。」私は浮かない顔だ。

「この墓にはすべての願いを叶える聖杯が眠っていて、すべての試練を突破した者に聖杯が与えられるという話があるんだ。」教授は得意げに語る。

「へぇ。そんな願いが叶う聖杯なんてあるわけないでしょ。」私は機嫌が悪いのだ。ちなみに普段ならそこそこ食いつく。

「無いという根拠はないだろ?」教授は呆れたように言う。

「ある根拠もないじゃん。」

「だから今から見にいくのさ。」教授はドヤ顔で言う。

「まあいいわ。拾ってもらった恩もあるから付いていく。」私は諦める。

「そうこなくっちゃ!まず、今回の計画なんだけど」教授が発掘の計画書をバックパックから取り出そうとする。

「歩きながら聞くわ。」私はそう言って足早に遺跡の中にズカズカと入っていく。

「計画とかちゃんとしないと死ぬよ?」教授は焦りながらついてくる。

「死なないわよ。」私はそのまま遺跡の地下へ続く階段を降りていった。

「もう!どうなっても知らんぞ!」教授は深呼吸をすると自分も下へ降りていった。


コツコツコツと足音が響く。暗闇で周りは見えない。

「暗い。光るわ。」私は当たり前のように発行する。後ろで教授が吹き出す。もう慣れたから平気だ。いや、やはり不快だ。


「ん?あそこに何か書いてるよ。」私は壁に彫ってある文字を照らす。

「えーっと、どれどれ?あれは『第一の試練』って書いてある。」教授は言う。

「ほほう?すべての試練をうんたらかんたらしたらゴールだっけ?」私は早速試練を受けようと前に進む。

「そうだけどちょっと待って!心の準備ができてないの!」教授は後ろから文句を垂れながら私の後に続いた。


第一の試練の部屋に入る。たくさんの柱があり不気味だ。

「おーい!試練を受けたいんだけど?」私は虚空に向かって呼びかける。だが反応はない。

「多分だけど、このボタンを押さないと試練は始まらないよ。」教授は石でできたボタンを指差す。

「まず問題を予測して…」教授は慎重にノートを開く。

「えい。」私は迷いなくボタンを押した。

「ちょっと!」教授は何してくれてんだという顔をする。

「速さは大事よ。人生はあっという間だから。」私は得意げに言う。

そうしていると、どこかから音が聞こえ始める。反響しつつも第一の試練開始を告げるものであろう声が聞こえてくる。

『欢迎。 从现在开始,挑战者将不得不接受考验。 第一个测试是测验。 如果正确,则继续前进。 犯错的人只有死亡。』

「え?なんて?」私は困惑する。

「いや、わからん。こんな古代言語知らない!」教授も狼狽する。

「教授が知らないなら私も知らない。」

「冷静に言っとる場合か!まずいぞ。ここまで来て!」教授は泣きそうな顔になる。


『第一个问题。 明朝的开国元勋叫什么名字?』

「いや、ほんと何言ってるのかわからないんだけど。」教授は焦る。

「わかんないね。なんか、ボタンが四つあるけど、あれのどれかを押すんじゃない?試練も選択制なのかな?」私は謎のボタンを指差す。

「なるほど。確かにそんな記録があった。おそらくこのボタンだ。よく考えるんだぞ?四択だ。確率は4分の1。出題者の気持ちになるんだ。どのボタンを正解にするか。あいにく私は学生のため試験を出題しているからこういうのを考えるのは任せろ。基本的に皆当てずっぽうで3を選ぶ傾向がある。つまりは…」教授はぶつぶつ言う。


「教授、ちょっと離れてて。」私は教授を追い払う。

「え?はい。」教授はそう言いながら下がる。


私は教授が十分離れたのを確認して迷いなくボタンを押す。

「え?押したの?わかったの?」教授が後ろで困惑している。

「勿論てきとうよ!」私はドヤ顔で言う。

「いやいやいや!」教授は発狂しそうな顔になる。

『不正确。 让我们死吧。』そう聞こえるなり私のいる範囲の床が処刑台の床のようにパカリと割れて私は下に落ちる。そしてその穴の底には鋭い針が敷き詰められており私は無数の針の上に落ちた。


「下か。下は警戒してなかったわ。」私は教授に落とし穴から引っ張り出される。

「だ、大丈夫?」教授は本気で心配している。教授は私のイカれた防御力についてよく知らない。

「すっごいびっくりした…」私は半笑いで言う。

「へえ、びっくりしたんだ。」教授はドン引きしていた。


それから私は2回落とし穴に落ちつつ第一の試練を突破した。

どんな試練だったのかはわからない。

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