第31話 三十一

「分かりました!」

そう言って、色紙とマジックペンを取り出すと、彼らに手渡しました。

そうすると、二人共嬉しそうにしながら受け取ってくれたので、私も嬉しくなりましたね。

それから暫くして、満足したのか帰って行ったのを見送った後、改めて街を見て回ることにしましたが、

その時ふとある事を思いつきます。

それは、変装するということです。

そうすれば、正体を知られることなく行動できると思ったのですが、どうせなら徹底的にやろうと考え、

早速準備に取り掛かることにしました。

まずは服屋へ行き、そこで色々と見繕う事にしたのですが、その際店員さんからオススメされた服を着てみると、

意外と似合っていたので驚きましたね。

しかも、それが偶然にも私が好きなデザインだったこともあって、とても嬉しかったです。

ただ、値段はそれなりにしたので、ちょっと懐が寂しくなりそうですけどね。

とはいえ、必要経費なので仕方ないでしょう。

それに、お金なら沢山ありますし、気にしなくても大丈夫だと思いますしね!

そんなわけで、会計を済ませた後に店を出ると、そのまま街を散策することにしました。

そうすると、あちこちから視線を感じましたので見てみると、やはりと言うべきか、周囲の人達がこちらを見ていましたので、

恥ずかしくなってしまいました。

ですが、それも仕方のない事なのでしょう。

何しろ今の私の姿は、普段のものとは大きく異なりますからね。

具体的には、髪の色を黒に染めたり、髪型を変えたり、服装も地味なものに変えたりと、

色々工夫してみた結果なのですけど、思っていた以上に効果があったようですね。

おかげで、誰も私に気付く様子はありませんし、これなら安心して見て回ることができそうです。

というわけで、ゆっくりと観光を楽しむ事にしましょうかね。

その後、街中を歩いているうちにお腹が空いてきたので、何か食べる事にしました。

幸いにも近くにレストランがあったので、そこへ入ることにしましたが、中へ入ると沢山のお客さんで賑わっていました。

その為、席を確保するだけでも大変そうでしたが、何とか空いているテーブルを見つけることができましたので、

そこに座り込むと同時にメニューを手に取ります。

そして、どれにしようかなと考えていたのですが、どれも美味しそうだったので悩んでしまいましたよ。

その結果、散々悩んだ末に決めたのですが、いざ注文しようとしたら、そこで問題が発生してしまいます。

というのも、言葉が通じないため、何を頼めば良いのか分からなかったんですよね。

どうしようか悩んでいたところ、近くにいた店員らしき女性が声を掛けてきた為、思い切って聞いてみることにしたんです。

そうすると、その女性は丁寧に教えてくれまして、無事に注文することができましたよ!

ちなみに、その女性の名前はリリアというらしく、この店のオーナーでもあるみたいです。

そんな訳で、料理が来るまでの間、店内の様子を眺めていましたが、結構繁盛しているようでした。

その理由としては、どうやら味が良いらしいですね〜。

実際、食べている客達からも好評みたいで、皆幸せそうにしていましたからね。

それを見ていたら、何だか羨ましくなってきちゃいました。

だって、あんなに幸せそうな顔をしているんですから、きっと美味しいに違いないと思うのは当然の事ですよね。

だから、早く食べたいなぁと思っていた時でした。

突然、背後から声を掛けられたので振り返って見ると、そこには一人の少年が立っており、こちらを見ながら微笑んでいたのです。

しかも、よく見ると顔立ちが良く、かなりのイケメンさんである事が分かると共に、思わず見惚れてしまいそうになりましたが、

なんとか堪えて冷静に対応しようと試みたところ、何故か名前を聞かれてしまったので、素直に答える事にしました。

そうすると、少年は嬉しそうな表情を浮かべながら、こう言ってきました。

なんでも、自分のお店に興味があるそうなので、今度招待してくれることになったようです。

正直、あまり気乗りしなかったのですが、折角誘ってくれているのですから、断るのも悪いと思い、仕方なく了承する事にしました。

そうして、その日は解散することになったのですが、別れ際に、また会おうと言われたのが印象的でしたね。

まぁ、どうせ社交辞令のようなものだと思うので、そこまで気にする必要はないかと思います。

それよりも、今は目の前のことに集中しなければいけませんよね。

何せ、これからが本番なんですから、気合いを入れて頑張らないと駄目ですよね!

というわけで、気持ちを切り替えたところで、さっそく始めることにしましょう。

まず最初にやるのは、転移魔法の発動実験ですね。

これが成功すれば、いつでもアルヴェルスの元へ行けるようになるわけですし、そうなれば彼の役に立てるはずですから、

頑張っていきたいと思いますよ〜。

それでは、張り切っていきましょうかね〜。

それから暫くの間、試行錯誤を繰り返した結果、ついに完成させることに成功しました。

やったぁ〜! これで、いつでも会いに行くことができるようになりますね。

ということで、早速試してみることにします。

といっても、いきなりは怖いですし、最初は練習を兼ねて、ここから少し離れた場所にある森の中へ行ってみることにしましたよ。

というのも、あそこなら人目につきにくい上に、万が一魔物に襲われても対処しやすいですからね。

それに、もしもの時は、すぐに逃げれば良いだけですし、何も問題はないでしょう。

そんなことを考えている間に目的地に到着しましたが、そこは木々に囲まれた場所で、とても静かで落ち着いた雰囲気の場所でした。

それ故に、私はこの場所が好きになり、ここで魔法の練習をすることに決めたんですよ。

では、始めましょうかね〜。

まずは、周囲に誰もいないことを確認した上で、頭の中でイメージを思い浮かべると、目の前に光の球体が現れました。

それを確認した後、今度は呪文を唱えてみましたが、特に変化はないみたいですね。

なので、何度か繰り返してみたものの、結果は同じでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る