第32話 三十二
うーん、これは困りましたね。
まさか、ここまで難しいとは思いませんでした。
一応、他の方法も考えてはみたものの、これといったものは見つかりませんでしたし、本当にどうしたものか悩みどころです。
そうすると、その時です。
突然、頭の中に声が響き渡り、それと同時に、目の前が真っ白になったかと思うと、次の瞬間には見知らぬ場所に立っていました。
しかも、周囲には大勢の人々がいて、こちらをジロジロと見てくるではありませんか。
これには、さすがに驚いてしまい、咄嗟に身構えてしまいました。
しかし、彼らは武器を持っておらず、敵意がないことを示すように、両手を上げていたのです。
その様子を見て、少しだけ落ち着きを取り戻した私は、彼らの姿を観察してみることにしました。
そうすると、見た目こそ普通の人間と変わらないものの、明らかに人間とは異なる特徴を持っていることが分かり、
恐らく魔族と呼ばれる者達なのだろうと思いましたね。
その証拠に、背中に生えている翼と頭に生えた角を見れば、一目瞭然ですから間違いありません。
とはいえ、彼らから感じられる魔力はとても弱かったため、大したことないのだろうと思っていましたが、
それは大きな誤りだったことをすぐに知ることになりました。
何故なら、彼らが一斉に襲い掛かってきたからです!
慌てて応戦しようとしたところで、不意に意識が遠のいていくのを感じた瞬間、私の意識は途絶えてしまうのだった……。
(???)
「……い……おい!」
誰かの声が聴こえてきました。
しかも、その声は段々と大きくなっていき、やがてはっきりと聞き取れるようになると同時に、
急激に覚醒していくような感覚を覚えました。
そこでようやく目を開けると、そこには見慣れない天井がありました。
一瞬、ここはどこだろう? と考えましたが、すぐに思い出しましたよ。
そういえば、確か森へ行った時に、いきなり襲われたんでしたっけ。
それで、その後はどうなったのか気になり、周囲を見渡してみると、どうやらベッドに寝かされているようでした。
とりあえず起き上がろうとしたところ、全身に激痛が走ったので、思わず悲鳴を上げてしまいましたね。
そうすると、その声に気付いたのか、誰かが駆け寄ってくる音が聞こえてきて、直後、扉が勢いよく開かれると、
そこから二人の男女が入ってきました。
一人は金髪碧眼でワイルド系のイケメンで、もう一人は銀髪赤眼の女性でした。
二人ともタイプが違うタイプの美男子ですが、一体何の用でしょうか。不思議に思っていると、金髪の男性が話しかけてきました。
彼はリヴァルスというらしく、魔王を倒す為に力を貸してくれないかと頼んできたのです。
それを聞いて、どうしようか悩んでいると、もう一人の男性も話し掛けてきたので、
そちらの方を向くと、彼もまた同じようにお願いしてきたため、少し考え込んでしまいました。
私にはアルヴェルスという夫がいるのですし、どうしようと悩みましたが、しっかりと断り、
その上で私は転移魔法でアルヴェルスの元へ戻ります。
そうすると、予想通り、彼の方から声を掛けてくれました。
「やぁ、おかえり」
そう言って出迎えてくれた彼に、ただいまと言ってから抱きつき、そのまま唇を重ね合わせました。
そして、お互いに舌を絡め合い、唾液を交換し合った後にゆっくりと離れると、再び見つめ合う形になります。
そこで、改めて挨拶をした後、今日の出来事について報告すると、
それを聞いた彼が、興味深そうに話を聞いてくれたので、嬉しかったですね。
その後も、色々と話をしているうちに、いつの間にか夜になっていましたが、
それでも、彼と離れたくなかったため、そのまま彼にキスをするのです。
その後、二人で一緒にお風呂に入り、お互いの身体を洗いっこして楽しんだ後は、
ベッドへ移動してから愛し合い、そのまま朝を迎えるのです。
「おはようございます」
そう言いながら、目を覚ますと、隣にいたはずの夫がいませんでしたので、急いで起き上がり、家の中を探し回ることにしましたよ!
でも、どこにも見当たりませんし、一体どこに行ったのでしょうか。
もしかして、私が寝ている間に出て行ったとか!?
そんなの嫌ですよ。
せっかく結婚したばかりなのに、もうお別れなんて絶対に嫌だわ。
こうなったら、意地でも探し出してやるわよ!
そう決意した私は、早速行動を開始することにしたのですが、その前に朝食の準備をすることにします。
とは言っても、大したものは作れないので、簡単なものしか作れませんけどね〜。
まぁ、無いよりはマシでしょうということで、簡単に済ませた後、身支度を整えてから、屋敷を出ることにしました。
周囲の人達の視線が、やたらと集まっているような気がして、正直、かなり居心地が悪いんですよね〜。
というのも、何故かというと、実は、今の私の姿は、普段のものとは大きく異なり、黒髪のロングヘアーに黒目、
身長も低く、胸はそこそこ大きく、腰回りやお尻にも肉がついており、全体的にムチッとした体付きになっているからなんですよ!
ちなみに、服装の方も変わっていますし、靴に至ってはハイヒールになっていて、歩きづらいったらありゃしないんですよね。
おまけに、化粧までバッチリ決めているせいで、まるで別人のように見えますしね〜。
それにしても、どうして、こんな事になってしまったんでしょうか。
思い返してみても、心当たりが全くないんですけれど、もしかすると、何かの魔法の影響なのかもしれませんね。
だって、そうでなければ説明がつかないでしょうからね。
それに、この姿になってからというもの、妙に視線を集めているような気がするんですけど、気のせいですよね。
きっと、そうだと信じたいですね。
まぁ、それはさておき、これからどうしましょうかね〜。
取り敢えず、街へ行ってみようかと思いますけど、何があるか分からない以上、慎重に行動する必要がありますよね。
というわけで、早速出発しましょう!
(???)
森の中を歩いている最中、ふと空を見上げると、太陽が沈みかけていて、辺り一面が赤く染まっていました。
それを見て、そろそろ帰らないといけないと思った私は、来た道を引き返すことにします。
しかし、暫く歩いている内に、徐々に疲れを感じ始めた為、近くにあった木にもたれ掛かるようにして座り込みました。
それからしばらくの間、休憩していたのですが、一向に回復する気配がなかったので、仕方なく歩いて帰る事にしましたよ〜。
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