第29話 二十九
「大丈夫、心配しなくてもいいんだよ」
そう言って優しく頭を撫でられると、不思議と安心感を覚えてしまいます。
それと同時に胸の奥から熱いものが込み上げてきて、鼓動が激しくなっていきました。
(何だろうこれ?)
と考えているうちに、再びキスをされてしまい、今度は舌を絡め合う濃厚なものでした。
最初は戸惑いながらも受け入れていたものの、次第に自分から求めるようになってしまいました。
(もっと欲しい、もっともっとして欲しい)
と思っているうちに、自然と自分から求めていました。
そうして暫くの間、お互いを求め合っていたところで、ようやく解放された頃にはすっかり蕩けきっていました。
もうまともに思考することも出来ず、ぼーっとしていることしかできませんでしたが、それでも体は正直に反応してしまい、
「んっ」
と甘い声が漏れてしまったのを聞かれてしまい、恥ずかしくなって顔を背けようとした時でした。
突然、首筋に吸い付かれてしまい、びっくりして固まってしまうも、次の瞬間には痛みと共に赤い痕がついてしまっていました。
それを見て満足げな笑みを浮かべるアルヴェルスを見て、私は思わず見惚れてしまっていました。
(かっこいいなぁ……)
と思いながら見つめていると、その視線に気付いたのか、こちらに目を向けてきます。
そして、そのままじっと見つめられているうちに、だんだん顔が熱くなってきて、恥ずかしさのあまり俯いてしまいました。
けれども、それも束の間のことで、すぐに顎を掴まれて無理矢理上向かされると、今度は唇を奪われてしまいました。
突然のことで驚いて固まっている間に舌を入れられてしまい、
「んんっ!?」
(嘘っ! なんでっ!?)
混乱しているうちに、口内を蹂躙されていき、頭がボーっとしてきて何も考えられなくなっていきます。
やがて満足したのか離れていくのを見て、名残惜しさを感じつつもホッとしていましたが、
それも束の間で、今度は首筋を舐められてゾクリとした感覚に襲われました。
それだけではなく、耳まで甘噛みされた挙句、息を吹きかけられた時には、背筋がゾクゾクして変な気分になってしまい、
無意識のうちに声が出てしまっていたようで、それを聞いた彼に笑われてしまったことが恥ずかしくて堪りませんでした。
(うぅ、恥ずかしいよぉ〜)
そんな事を考えていると、アルヴェルスはまた私にキスをしてくるのです。
しかも、今度は触れるだけの優しいものではなく、激しいディープキスでした。
あまりの激しさに呼吸すらままならず、酸欠状態に陥りかけましたが、それすらも心地よく感じてしまい、
されるがままになってしまう自分が情けなく思いました。
それから暫くして解放されると、荒い呼吸を整えているうちに落ち着いてきたので、改めて状況を確認してみることにしました。
まず、ここはどこなのか確認しようとしたものの、周りを見渡してみると、ここが森の中だということしか分かりませんでした。
ただ、一つだけ言えることは、ここにいては危険だということだけです。
何故なら、ここには魔物がいるからです。
幸いにもまだ見つかっていないようなので、今のうちに逃げ出そうと思った矢先のこと、背後から物音が聞こえてきました。
慌てて振り返ると、そこには巨大な熊のような生き物がいて、こちらを睨んでいたかと思うと、襲いかかってきました。
私は咄嗟に逃げようとしたものの、恐怖のあまり体が竦んでしまい、動くことができませんでした。
そんな私の前に、誰かが立ち塞がりました。
その人物とはアルヴェルスという男性で、私の夫でもある人でした。
彼は私を庇うように前に出ると、剣を抜いて構えを取りました。
それを見た相手は怯んだのか、一瞬動きを止めましたが、すぐに動き出して襲い掛かってきました。
しかし、それを難なく躱すと、目にも止まらぬ速さで斬りつけて倒してしまったのです。
その様子を見ていた私は、思わず感嘆の声を上げてしまったほどです。
それから、アルヴェルスに促されるままに、私達は街へ戻ることになりました。
その際、森を出るまでは手を繋いで歩くことになったのですが、その時の温もりはとても心地良く感じられ、幸せな気持ちになりました。
そして、街に辿り着いた後、これからの事を話し合った結果、暫くはこの街で暮らす事になりそうです。
というのも、今の私達では生きていくのは難しいだろうということで、生活基盤を整える必要があると判断した為なのですが、
その為にはお金が必要となります。
そこで、冒険者ギルドへ登録する事にしました。
といっても、冒険者になるわけではありません。
あくまでも身分証を作る為に利用するだけであって、依頼を受けるつもりはありませんし、
ギルドランクを上げるつもりもありません。
そもそも、そこまでする必要性がないですしね。
そんなわけで、早速手続きを済ませる事にしました。
ちなみに、アルヴェルスも一緒に来ています。
なんでも、興味があるとのことなので、一緒に行く事にしたのです。
それに、もし何かあっても、彼が守ってくれるだろうから安心できるしね。
というわけで、受付カウンターへ向かいました。
そうすると、一人の女性が対応してくれます。
彼女はマリアさんと言って、とても親切な方です。
しかも美人ですし、胸も大きいので、つい見とれてしまう事もしばしばあります。
とはいえ、今はそれよりも大事な事があるため、気持ちを切り替えて話を聞くことにします。
それから、一通りの説明を受けた後に、試験を受ける事になりました。
内容は至って簡単で、指定された依頼を達成するだけなのですが、達成するまで帰れないそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます