第28話 二十八

「えへへ 嬉しい」

と素直に言うと、頭を撫でられました。

それがとても心地良くて、ついつい甘えてしまいましたが、嫌ではなかったみたいです。

むしろ、喜んでいるように見えました。

その後は、お互いに見つめ合った後、どちらからともなくキスをして、舌を絡め合い始めました。

最初は軽く触れる程度のものだったのが、次第に激しくなっていき、最後には貪り合うような激しいものへと変わっていきました。

「んっ、ちゅっ、れろっ、んむっ、はぁ、んんっ、ちゅぷっ、じゅる、くちゃ、

ぴちゃ、ぷはっ、はぁ、はぁ、ふぅ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

(頭がボーっとする、身体が熱い、苦しい、でも気持ちいい)

そう思いながらも、必死に耐えていると、今度は首筋を舐められて、思わず声が出てしまう。

そうすると、それに気付いたアルヴェルスはニヤリと笑うと、執拗に同じ場所を攻めてくる。

その度に、ゾクゾクとした快感に襲われて、無意識のうちに身を捩ってしまうのだが、

それを見逃すはずもなく、更に攻め立てられてしまう。

「アルヴェルス、もうやめて、恥ずかしいから……それよりも魔物を狩りに行きましょうよ」

(このままじゃまずい、このままだと完全に堕ちちゃう! そうなったら戻れなくなるかもしれない、

だからお願い、今は見逃して!)

そう思って懇願するものの、全く聞いてくれないどころか、寧ろ逆効果だったみたいで、

益々エスカレートしていく一方だ。

そして遂に限界を迎えた私は、とうとう耐えきれなくなってしまい、その場に崩れ落ちてしまった。

その様子を見た彼は満足そうに微笑むと、私を抱きかかえて歩き出した。

暫く歩いていると、不意に立ち止まったかと思うと、いきなりキスされてしまった。

しかも、ディープなやつだ。

舌まで入れられてしまい、なす術も無くされるがままになっていると、やがて満足したのか離れていった。

「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」

肩で息をしながら呼吸を整えていると、急に抱き上げられてしまった。

「英里、このまま魔王討伐へ行くぞ」

そう言うと、走り出したので慌てて首に腕を回した。

(あれ? この人、こんなに逞しかったっけ? それに、何だかいい匂いがするんだけど……)

と思っているうちに、城に着いたようだ。

中に入ってみると、沢山の人が出迎えてくれたので、少し驚いたけれど、悪い気はしなかった。

それから、玉座の間に通された私達は、国王様に挨拶をする為に跪いた。

そうすると、王様が近づいてきて話しかけてきたので顔を上げると、目の前に顔があったのでドキッとしてしまった。

おまけに目が合ってしまったせいで恥ずかしくなり、目を逸らそうとしても逸らせなくなってしまったの。

そうこうしている間にも話は続いており、気が付けば結婚する事になっていた。

そして今に至る訳なのだが、どうしてこうなったのかさっぱり分からない。

そもそも魔王討伐に行くという話だったのに、いつの間にやら魔王を倒して世界を救おうという流れになっており、

何が何やらという感じである。

まぁ、それはともかく、これからどうするかを考えなければならない。

まず、この世界についてだが、魔法が存在しており、人間以外の種族もいるみたいなの。

ただ、人間と魔族の対立が激しく、度々戦争が起きているらしいので、あまり長居しない方が良さそうだと思った。

次に、自分の能力に関してだけど、アルヴェルスが言うには、私の能力は戦闘向きではないみたいです。

というのも、回復系の魔法しか使えない上に、戦闘能力に関しては皆無に等しいからだそうなの。

なので、私は後方支援を担当する事になった。

ちなみに、この世界の言語は日本語で通じるらしく、会話に支障はないみたい。

それと、文字に関しても、問題なく読めるし書けるようになっていた。

これは本当に助かったと思ったわ。

だって、読み書き出来ないなんて致命的だしね。

それから、暫くの間は城内で過ごしていましたが、ある日の事でした。

突然、何者かに襲撃を受けて、私達は散り散りになってしまいました。

しかも、私は捕まってしまい、牢屋に閉じ込められてしまったのです。

一体誰がこんな事をしたのかと憤慨していると、そこへ現れたのは見知らぬ男でした。

その男はニヤニヤと笑いながら私に近付いてくると、こう言ったのです。

「やぁ、こんにちは」

「……誰ですか?」

警戒しつつ聞くと、男は愉快そうに笑って答えました。

「僕かい? 僕は君の夫だよ?」

そう言われて驚きましたが、すぐに平静を取り戻して言い返します。

彼はさらに笑みを深めながら言いました。

「あぁ、そうだよ、僕が君の旦那さんだよ!」

それを聞いて、私は困惑しつつも質問しました。

そうすると、彼は楽しそうに語り出します。

その内容を聞いているうちに、だんだんと腹が立ってきました。

(何よこいつ! 人の事を馬鹿にして!)

そんなことを考えているうちに、段々と怒りが込み上げてきました。

しかし、ここで暴れても勝ち目はないので、冷静に対処することに決めました。

まずは、相手の情報を得る事です。

そこで、いくつか質問をしてみましたが、どれも要領を得ません。

ですが、分かったこともあります。

一つ目は、彼の目的は私を手に入れる事だという事です。

二つ目は、私がこの世界に連れてこられたのは、彼が原因だという事でした。

三つ目としては、ここは私達がいた世界とは別の世界で、元の世界に戻る事はできないそうです。

四つ目は、彼はどうやら悪魔らしく、召喚者である勇者を殺して回っているようです。

五つ目は、私には特別な力があるとか何とか言っていますが、はっきり言って胡散臭いとしか思えませんでした。

それでも一応聞いておくことにします。

すると、案の定と言うべきか、予想通りの言葉が返ってきました。

曰く、私には類稀なる才能があるとかなんとかで、是非ともその力を発揮して欲しいと懇願されました。

正直、馬鹿馬鹿しいと思いましたし、関わりたくないとも思ったのですが、何故か断りきれません。

それどころか、彼の言う通りにすれば良いのではないかと思ってしまいます。

その事に戸惑っていると、突然抱き締められてしまいました。

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