第21話 二十一
「えっ? ちょっ、ちょっと待って下さい!」
慌てて止めようとするものの、聞き入れてくれなかったので、どうしようもなかったです。
そうすると、首筋に顔を埋められたと思ったら、舐められてしまいました。
その瞬間、ゾクッとした感覚に襲われてしまい、力が抜けてしまったせいで、
抵抗することが出来ませんでした。
それどころか、自分から求めてしまっていることに気づいた時には手遅れでした。
それから数時間が経過した頃、ようやく解放されました。
ですが、これで終わりだとは思っていませんよね。
だって、まだまだ物足りないんですから、もっとして欲しいと思っているのは、あなたも同じなんじゃないですか。
「もっとキスして下さい」
「分かった、何度でもしてやるからな」
そう言って、再び唇を重ね合わせて来ましたね。
嬉しいけど、恥ずかしいです。
だけど、やめないで欲しいという気持ちの方が強いので、私は彼を受け入れます。
そして、何度目か分からない口づけを交わした後、私達は見つめ合いました。
そうすると、彼が私の頬を撫でながらこう言いました。
「愛してるぞ、英里」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がキュンとなったような感覚に襲われました。
(あれっ、何だろうこれ……今まで感じたことのない気持ち)
そう思いながらも、何故か嬉しくなってしまって、自然と笑みが溢れてしまいました。
そんな私を不思議に思ったのか、彼は首を傾げている様子ですが、
「何でもないですよ、それより、お腹空きませんか?」
と言って誤魔化したので、彼も納得してくれたようです。
食事を済ませた後、暫く休んでいると、何やら外が騒がしくなっていることに気付きました。
気になったので、様子を見に行こうとしたら、彼に呼び止められてしまいました。
どうしたんだろうと思い、振り返ると、真剣な表情でこちらを見つめていました。
そして、何かを決心したように頷くと、こう言ったんです。
どうやら、魔王を倒しに行くらしいのですが、私には無理だと言われてしまいました。
どうしてそんなことを言われなければならないのでしょうか、私だって戦えるのに!
そう思った私は、必死に訴えかけたのですが、彼には届かなかったみたいです。
悔しくて泣きそうになっていると、慰めてくれる人がいたおかげで、落ち着きを取り戻すことができました。
その後も説得を続けたのですが、結果は変わらず、結局、魔王を倒すために旅立つことになってしまいましたね。
しかも、仲間は二人だけという少なさですし、大丈夫なんでしょうか、不安しかありませんよ、本当に困ったものです。
とはいえ、いつまでも嘆いていても仕方ありませんから、前向きに考えましょう。
そう自分に言い聞かせた私は、二人と一緒に旅に出ることにしました。
道中で魔物に襲われることもあったのですが、どうにか切り抜けることができました。
それに、頼もしい仲間達がいるので心強いですね、これなら安心してついて行けそうです。
それにしても、この二人は仲が良いみたいですね、見ていて微笑ましい気分になりますね。
私も見習わなくてはいけませんね、ふふっ。
さて、そろそろ休憩しましょうか、疲れたでしょうし、ゆっくり休んだ方がいいと思いますからね。
無理をするのは良くないですからね、休むことも大切だと思いますよ、頑張り過ぎも良くありませんよ。
そんな感じで旅を続けているうちに、目的地である王都へ到着したようですね。
ここから先は馬車ではなく徒歩での移動になるようです。
なので、早速移動することにしたのですが、その際に、アルヴェルスとアリサちゃんの間でちょっとしたトラブルがあったらしいですね。
何があったのか聞いてみたところ、何でもアリサちゃんが足を挫いてしまったらしく、歩けなくなってしまったとのことだったので、
私がおんぶしてあげることにしましたよ。
もちろん、お姫様抱っこでも良かったんですけど、こっちの方が安定すると思ったからです。
案の定、上手くいったみたいで、問題なく進むことが出来ましたよ。
ただ、途中で何度も睨まれていたのは何故でしょうか、ちょっと怖いですね。
もしかして嫌われちゃったんでしょうか、だとしたら悲しいです。
まあ、何にせよ、無事に到着できてよかったです。
これで一安心といったところですかね、後は王様に会って話をするだけなんですが、
果たして、どうなることやら、先が思いやられますね、やれやれ。
というわけで、やってきましたよ、謁見の間。
中へ入ると、玉座に座る王様らしき人物の姿が見えたのですが、なんだか様子がおかしいんですよね。
妙にソワソワしているというか、落ち着きがない感じなんですよ。
どうしたんでしょう、何かあったのかな。
そう思って近づいてみると、突然、腕を掴まれたので、驚いてしまいました。
そうすると、いきなり抱きしめられてキスをされてしまったので、驚いて固まってしまったのですが、
アルヴェルスによって引き剥がされたことで、事なきを得ました。
その後、事情を聞いてみることにしたのですが、なんと勇者様が負けた上に、魔王までも倒されてしまったと言うではありませんか。
驚きのあまり、開いた口が塞がらないとはこのことを言うのでしょう。
まさかそんなことが起こるなんて想像すらしていなかったものですから、とても信じられません。
でも、本当のことなんだそうです。
実際に見に行った人もいるみたいなので、間違いないでしょう。
これは大変なことになりましたね、一体どうすれば良いのでしょうか、途方に暮れてしまいましたよ。
とりあえず、今後のことを考えなくてはいけないのですが、その前に、アルヴェルス達のことについて話し合うことになりました。
というのも、彼等は女神の力を持っているため、この世界で生きていくのは難しいのではないか、という意見が出たのです。
確かにその通りですよね、どうしたものかと考えていたら、アリサちゃんが提案してきたんですよ、自分達と一緒に暮らさないか、って。
正直言って、嬉しかったですね、こんな私のことを気にかけてくれる人がいるんだって思うと、涙が出そうでしたよ。
それだけじゃありません、他の人達からも歓迎されているようでした。
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