第15話 壱五
「失礼します、お茶を淹れたので、よかったらどうぞ」
と言って、テーブルの上に置くと、彼は、それを口に含み、飲み干してくれました。
それを見て、ホッと胸を撫で下ろしていると、急に眠気が襲ってきたので、
慌てて部屋を出て、自分の部屋に戻ると、ベッドに横になり、眠りにつきました。
翌朝、目が覚めると、すぐに着替えて、朝食を食べに行くことにしたのですが、
その時に、メイドさん達に、昨夜、アルヴェルスの部屋で何をしていたのか聞かれたので、正直に答えました。
「実は、昨日の夜、部屋に行った時、彼が寝ていましたので、起こさないように気をつけながら近づいていったんですけど、
途中で起きてしまったみたいで、そこで、襲われそうになったので、慌てて逃げ出して、
自室に戻ってから寝たんです」
私は、ありのまま起こったことを話しただけなのですが、何故か、皆さんが固まってしまったので不思議に思っていると、
ようやく我に返ったのか、慌てた様子で駆け寄ってくると、私に詰め寄ってきました。
私は、驚きのあまり固まっていると、彼女達は、口々に叫び始めました。
その内容を聞いた瞬間、背筋が凍り付きました。
何故なら、私が、アルヴェルスと浮気をしていると思われていたからです。
「ち、違います! 誤解なんです!」
と必死に否定していたのですが、全く聞く耳を持ってくれませんでした。
それどころか、さらにヒートアップしてしまい、ついには、暴力を振るわれそうになってしまいました。
このままだと危ないと思った私は、必死になって助けを求めたのですが、誰も助けてくれません。
結局、殴られてしまったせいで、気を失ってしまい、気がついた時には、牢屋に閉じ込められてしまっていました。
しかも、手足には枷を嵌められていて身動きが取れず、さらには、魔法封じの効果もあるらしく、
魔法を使おうとしても使うことができなかったため、脱出することもできません。
「どうしてこんなことになったんだろう……」
と思いながら途方に暮れていたところ、突然、部屋の扉が開いたかと思うと、誰かが入って来ました。
誰だろうと思って顔を上げると、そこには、アルヴェルスが立っていて、こちらをじっと見つめていました。
彼は、ゆっくりとこちらに近づいてくると、私の顎に手を当てると、無理矢理上を向かせてきました。
そして、顔を近付けてきたと思ったら、いきなりキスをしてきたのです。
突然のことに驚いているうちに舌が入ってきて、口内を舐め回されていきました。
あまりの激しさに頭がクラクラしてきて、何も考えられなくなってきたので、思わず、顔を背けようとしたら、
今度は、首筋に吸い付いてきて、チュッチュと音を立てて何度もキスをしてきたのです。
「んっ……くすぐったいですよ」
と言うと、彼は、嬉しそうに微笑んで、さらに強く吸ってきた。
そのせいで、痛みを感じたが、それ以上に快感の方が強くて、つい声が出てしまいそうになってしまった。
「英里、今、ここから出してあげるな、そして、俺と共に魔王討伐へ行くぞ」
「はい、わかりました、貴方と一緒に行きます!」
こうして、私達は、魔王を倒す旅に出ることになったのだが、まずは、装備を整えるために、街へと向かうことにした。
その道中で、魔物に襲われていた商人を助けたお礼として、馬車に乗せてもらえることになったのだが、
その際に、盗賊に襲われたという話を聞いた時は驚いたものだ。
だが、幸いにも、彼等は、無事だったようで安心した。
その後、街に辿り着いたところで、宿を取ることにしたのだが、一室しか空いていないと言われたので、
「それなら、一緒の部屋に泊まればいいだろ?」
と言われて、仕方なく了承することにした。
しかし、いざ部屋に案内された時に、違和感を感じたので聞いてみることにした。
そうすると、彼は、こう答えたの。
「ああ、それか? いや、別に大した理由じゃないんだが、ただ単に、お前が喜ぶかと思ってそうしただけだぞ」
そう言われて、納得したわ。
確かに、好きな人と同じ部屋で寝るというのは嬉しいものね。
だけど、それと同時に緊張もしてしまうのよね……。
それに、今は、二人っきりだし余計に意識しちゃうわね。
そんなことを考えていたら、不意に声をかけられたのよ。
だから、振り向くと、そこには、アルヴェルスが立っていたの。
それで、どうしたのかなと思っていると、私に抱き着いてきたのよ。
驚いて戸惑っていると、耳元で囁かれたわ。
「キスさせてくれ!」
「え!? あ、あの……その……」
どうしようかしら?
まさか、そんなことを言われるなんて思ってもいなかったから動揺してしまったんだけど、
何とか落ち着こうとしていたら、突然、唇を塞がれてしまったの!
しかも、舌まで入れられちゃったものだからもうパニック状態よ。
それなのに、こんな激しいキスをしてくるなんて信じられないわよ!
もう駄目かと思ったその時、ようやく解放されたのだけど、その直後に、
また、抱き締められてしまって逃げられなくなってしまったの。
「なあ、いいだろ?」
と聞かれて、どうしようか迷ったけど、結局は断れなかった。
だって、本当は、私もしたかったんだもの……。
でも、恥ずかしいから素直に言えなくて困っていたら、強引に押し倒されてしまったので、諦めて受け入れることにしたわ。
それからというもの、ずっと求められ続けて疲れ切ってしまったけれど、不思議と嫌ではなかったわ。
むしろ、嬉しかったくらいね。
まあ、それでも、限度ってものがあるでしょうけどね。
いくら何でもやりすぎだと思うし、少しは自重して欲しいと思うところもあるんだけどね……。
それにしても、どうしてあんなに元気なんだろう?
あれだけやっておいてまだ足りないのかしら?
さすがに呆れてしまうわね。
とはいえ、それだけ私のことを愛してくれているということなのだろうと思い、
嬉しく思う反面、少し心配になってしまうこともあるんですよね。
何しろ、毎日のように求めてくるものですから体力的にも精神的にも限界が近いですし、
このままではいずれ倒れてしまいますからね。
だからといって、拒むわけにもいかないわけで、どうしたものかと考えていると、ある事を思い出しました。
それは、前に本で見たことがあったのですが、確かあれは……そうそう、精力剤とかいう薬だったはずですが、
本当に効果があるのでしょうか?
正直言って半信半疑ではありますが、物は試しだと思い試してみることにしました。
とりあえず、作り方を調べてみたところ、材料に関してはそれほど難しくはないようです。
ただ、問題は、薬草の種類なのですが、これが結構多くて大変でした。
中には、入手が難しいものもありまして、それが一番の難題でしたね。
何せ、この辺りには生えていないものばかりですから、探すだけでも一苦労です。
ですが、そこは気合いで乗り越えました。
おかげで、必要な素材を集めることができましたよ。
あとは、これを調合するだけなのですが、これには特殊な技術が必要らしいので、
誰かに頼むわけにもいきませんから自分でやるしかありません。
ということで早速取り掛かることにしたのですが、ここで問題が発生してしまいました。
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