第14話 壱四
だって、悪いのは全部私の方なのですから……そうなんです。
「そんなに私と結婚したいのですか?」
「ああ、もちろんだ! お前さえ良ければ、今すぐにでも結婚して欲しいと思っている」
そう言って、真剣な眼差しを向けてくる彼を、私は拒絶することができませんでした。
それは、きっと、私が彼に好意を抱いているからでしょうね。
だって、仕方がないじゃないですか!
こんなにも情熱的に求められて、断れるはずがありませんから、仕方なく受け入れることにしたの。
それから、私達は、結婚式を挙げることになりました。
「では、誓いの言葉を」
神父様の言葉を聞いて、緊張しながらも、ゆっくりと口を開きます。
そうすると、自然と言葉が出てきますので、そのまま続けていくと、やがて終わりを迎えました。
その後、指輪の交換を行いましたが、その際に、お互いの指に嵌め合ったのはいい思い出になりましたね。
その後は、披露宴を行うことになったのですが、その時に、両親への手紙を読み上げた時は、感動してしまいましたよ。
まさか、あの両親が泣くとは思わなかったけど、それだけ喜んでくれたのだと思うと嬉しかったですね。
まあ、それはそれとして、無事に式が終わると、今度は新婚旅行に行くことが決まりました。
行き先はもちろん魔界です。
最初は不安だったものの、実際に行ってみると思っていたよりも快適だったので安心しましたよ。
何せ、ここには魔族しかいないのですから、人間である私にとっては過ごしやすい環境と言えるでしょう。
また、ここでは、彼の妻として相応しい振る舞いを身につけるために勉強をしたり、作法を学んだりすることになりますので、
大変かもしれませんが頑張ります。
ちなみに、このことについてですが、メイドさん達も手伝ってくれるのでとても助かっています。
彼女達には感謝しないといけませんね。
それと、もう一つ嬉しいことがあったのですが、それは、子供ができたことです。
まさか、こんなに早くできるとは思っていませんでしたので、驚きましたね。
ただ、まだ妊娠したばかりで安定していないようなので、暫くは安静にしていないといけないみたいですけどね……。
とにかく今は無理せずゆっくり休むことにしましょう。
そうすれば、いずれは落ち着くはずですし、そうなれば、私も安心して出産を迎えることができるようになるので、
それまで頑張るしかないわね。
というわけで、早速行動を開始することにしたのですが、まずは何をすればいいのか分からなかったので、
近くにいたメイドさんに聞いてみることにしました。
そうすると、彼女は微笑みながらこう言ってくれたのです。
なので、彼女に案内してもらうことになってしまったのですが、正直言ってかなり恥ずかしい思いをしていまいましたね。
何しろ、今の私の姿は、下着姿のままですから仕方がないと言えばそうなんですけどね。
ですが、いつまでも恥ずかしがっているわけにもいきませんので、覚悟を決めると、思い切って中に入りました。
そこは、まるでお城のような造りになっていて、思わず圧倒されてしまいましたが、気を取り直して先に進むことにします。
「それにしても、随分と広い屋敷なのね……」
と、感心しながら歩いているうちに、いつの間にか目的地に辿り着いていたらしく、目の前には大きな扉がありましたが、
それを見た瞬間に嫌な予感を覚えたので、慌てて立ち去ろうとしたのですが、時すでに遅しといった感じで扉が開いてしまったのです。
そうすると、そこにはアルヴェルスが立っていたので、咄嗟に身構えたのですが、彼は特に気にしていない様子で話しかけてきました。
「ようこそおいで下さいました女神様方、どうか我々をお救いください!」
いきなりそんな事を言われたものだから驚いてしまいましたが、すぐに冷静さを取り戻すことができたので、
とりあえず話を聞いてみることにしたんだけど、どうやら彼等が言うには魔王を倒すために力を貸して欲しいということらしいのよね〜。
困ったものだわぁ〜などと現実逃避をしている間も話は続いていて、気がつくと夜が明けてしまっていたようです。
翌朝になり、目が覚めた私は、早速、朝食を食べるために食堂へと向かったのですが、そこには誰もいませんでした。
いつもなら、メイドさん達がいて出迎えてくれるはずなのに変だなと思いながら部屋の中を見渡してみたところ、
テーブルの上に一枚の紙が置かれていました。
何だろうと思い手に取って読んでみると、そこに書かれていた内容は驚くべきものでした。
なんと、魔王様が殺されたという内容だったのです。
まさか、そんなことが起こるなんて信じられませんでしたし、信じられなかったからこそ信じたくなかったのですが、
現実は非情でしたので受け入れるしかありませんでしたね。
ですが、このまま魔界に残るか、それとも元の世界に戻る方法を探すべきかということですが、やはりここは一度戻るべきだと思いましたので、
帰る準備を始めました。
幸いなことに荷物は全て持ち歩いていましたし、着替えなども用意していたので問題ありませんでした。
ちなみに、服装に関しては、この世界に来た時と同じ格好のままでしたが、特に気にする必要はないでしょうから気にしない事にしておきましょうかね。
そんなわけで、準備が整ったところで、いざ出発しようとしたのですが、ここで思わぬ事態が発生してしまったのです。
何と、アルヴェルスが目を覚ましてしまったようで、しかも、私を追いかけて来ようとしていたみたいなんです。
だから、私は急いで逃げようとしたのですが、間に合わなかったみたいで捕まってしまいました。
こうして捕まった以上、もう逃げることはできないと思ったので諦めて大人しくすることにしたのですが、
彼は、そんな私の姿を見て満足げな表情を浮かべていたので、少し嬉しくなりました。
なぜなら、彼には、色々と迷惑をかけてしまっているからです。
だからこそ、これ以上は迷惑を掛けないようにしようと思っていたので、神の力を行使し、拘束を解いて、
無視して帰ろうとしたら、彼が、私の名前を呼んで引き止めてきたため、動けなくなってしまいました。
そして、強引に抱きしめられてしまい、
「行かないでくれぇー!」
と言いながら泣き叫んでいる彼の声を聞いていると可哀想になってきたから許してあげようかなと思っていましたが、そうは問屋が卸してくれませんからね……。
だって、私には、やりたいことがあるんですよ。
そのためなら、たとえ自分の立場を捨ててでも成し遂げてやるという覚悟を持っていますからそう簡単に諦めるわけにはいきませんよ。
ですので、きっぱりと断ることに決め、拒否したところ、なぜか逆に興奮してきちゃいましたので困ってしまいます。
とはいえ、だからといって簡単に引き下がってくれるはずもなく困り果てていたら、さらに予想外の展開になってしまうことになるんですよね。
まさか、あんなことをしてくるだなんて思っていなかったので驚いてしまいましたよ。
「あの、どうして服を脱がそうとするんですか?」
と聞いてみたら、返ってきた答えは、意外なものでした。
てっきり、いつものように無理やり襲ってくると思っていたんですが、今回は違いましたね。
それどころか、私のことを気遣ってくれているのが分かって、何だか嬉しかったです。
まあ、それでも、やっぱり恥ずかしかったので抵抗しようとしましたが、無駄でした。
何故なら、彼は、私が逃げられないようにするためなのか、両手両足を拘束されてしまっていましたので、
どうすることもできませんでしたからね……。
「アルヴェルス、拘束を解いて下さい、出ないと婚約を破棄致しますよ?」
「そ、それは困る! だが、お前の手足を自由にすると何をするか分からないからな」
そう言って、渋る彼に呆れながらも、何とか説得することに成功しました。
まあ、その代償として、私の手足を自由にするという約束をさせられたんですけどね。
ただ、その代わりに、結婚式を挙げることになりましたので、結果オーライと言えるかもしれません。
それに、彼との結婚も悪くないと思っている自分がいるのも事実ですしね。
そういうわけで、私達は、無事に結婚することができました。
それからというもの、毎日、楽しい日々を過ごしています。
というのも、今では、彼との生活に慣れてきましたので、それなりに楽しく過ごせているからです。
でも、一つだけ不満があるとすれば、それは、夜の営みについてですね。
はっきり言って、下手くそ過ぎますし、毎回、気絶させられてしまうのも困りますよね。
なので、どうにか改善できないものかと考えていた時に、ある事を思いついたので試してみることにしました。
それは、寝ている間にこっそりとやってしまうことです。
そうすれば、朝までぐっすり眠れるのではないかと思いましてね。
早速、実行してみることにしましたよ。
まず、最初にしたのは、睡眠薬を作ることです。
といっても、材料自体はそれほど多くありませんし、作り方も簡単だったので、あっという間に完成させることができましたよ。
あとは、これを飲ませるだけなのですが、問題はどうやって飲ませるかですよね。
普通に渡しても飲んでくれないと思うので、何か良い方法はないかと思って考えているうちに、
いい方法を思いつきましたので早速実行に移すことにしました。
ちなみに、どんな方法かというと、飲み物の中に混ぜてしまえばいいのではないかと考えたわけですが、
我ながら名案だと思ったので早速行動に移すことにしたのですが、 その前に、一応確認しておこうと思い、
試しに一口だけ飲んでみることにしました。
その結果、味は特に変わった感じはなく普通の水と変わらないことが分かりましたが、本当にこれで大丈夫なのだろうかと不安になりましたが、
悩んでいても仕方がないので、早速、アルヴェルスに持っていくことにしました。
ただ、この時に、注意しなければならないことがあるのですが、それは、絶対にバレてはいけないということです。
もし、バレたりしたら、大変なことになりますからね。
ですから、細心の注意を払いながら、慎重に行動することにしましょう。
というわけで、早速、持って行くことにしたのですが、ここで、ちょっとした問題が起きてしまいました。
何とメイドさん達が、お茶を運んで来たのですが、その中に、アルヴェルスの分も含まれていたのです。
これは、非常にまずい状況だと思いましたが、今さら引き返すわけにもいかなかったので、そのまま部屋に向かうことにしました。
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