第12話 十二
その理由というのは、この村に住んでいた人々が、全員、石になっていたからである。
何故、こんな事になってしまったのか、その原因については分からないままであったが、
一つだけ確かな事があるとすれば、彼らが既に死んでいるという事だけだった。
つまり、彼らは、すでに死んでいたのだ!
その事実に気づいた時には遅かった。
何故なら、彼らの死体は既に動き出していたのだから、こうなってしまっては、もはやどうすることもできない。
そう思った私は、すぐにアルヴェルスの手を引いて逃げ出した。
そうすると、その直後に、村人達は一斉に襲いかかってきたのである。
このままではまずいと思った私は、魔法で攻撃しようとしたのですが、どういうわけか魔法を使うことができなくなっていたのです。
そこで、やむなく剣を使って戦う事にしたのですが、数が多すぎてキリがありません。
一体、どうすれば良いのか分からずにいると、突然、頭の中に声が聞こえてきました。
「今こそ目覚めの時です!」
という声が響き渡った直後、私は意識を失いました。
そして、気がついた時、目の前にいたのは、見知らぬ少女の姿がありましたが、何故か見覚えのあるような気がしました。
そうすると、少女は、微笑みながら話しかけてくると、こう言ってきたのです。
「はじめまして、私は、アルヴェルスと申します」
それを聞いて、私は、目の前にいる少女が、アルヴェルスと瓜二つの姿をしていることに驚きましたが、
すぐに冷静さを取り戻すと、彼女に質問してみたところ、どうやら、彼女は、アルヴェルスの双子の妹らしく、
名前は、アルヴェルス・ド・ラ・リュゼールと言うのだそうです。
その名前を聞いた時、私は思わず、驚いてしまいましたが、同時に納得しました。
何故なら、その名は、かつて、勇者と共に戦ったとされる、伝説の聖女の名前と同じだったからなのです。
ですが、今は、そんな事よりもこの状況を何とかする為に、行動しなければいけませんでした。
その為には、まず、彼女達を助けなければと思い、急いで助けに向かうことにしました。
ところが、私が駆け寄ろうとした瞬間、何者かによって邪魔されてしまい、結局、助ける事ができなかったばかりか、
逆に捕まってしまった挙句、人質にまでされてしまったからです。
これでは身動きが取れませんから困りましたよね?
でも、このまま諦めるわけにもいきませんでしたので、なんとかしようと考えているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたようでした。
それから暫くして目が覚めた後、辺りを見回すと、そこには誰もいませんでした。
おそらく、あの化け物を倒したことで、無事に逃げられたのだと思いましたが、念の為に確認してみると、
やはり、そうでした。
これでようやく安心できると思った私は、早速、元の世界に戻る為の行動を開始しました。
とは言っても、何をすればいいのか分からないので、とりあえず、適当に歩き回ってみることにします。
そうすると、暫く歩いていると、大きな建物があったので、入ってみると、そこは図書館のようでした。
中に入ると、たくさんの本が並んでいるのが見えたのですが、残念ながら、文字が読めない私には読むことができませんから、
どうしようもなかったのです。
それでも諦めずに探していると、一冊だけ読めるものがありましたので、手に取って読んでみましたが、内容は理解できませんでした。
ただ、絵が描かれているのだけは理解できたため、それを見て判断するしかなかったわけですよ。
その結果、わかった事は、ここは地球ではない別の世界だということでした。
さらに詳しく調べてみた結果、この世界の名前は、アヴァロンと呼ばれているそうで、アーサー王伝説に出てくる島の名前と同じだということがわかりました。
それから暫くして、一通り調べ終えたので帰ろうとしたその時、突然、背後から声をかけられたのであった。
振り返るとそこにいたのは、一人の女性で、彼女は私に気がつくと声をかけてきた。
一体何者なのかと思っていると、彼女が話しかけてきた。
「初めまして、私の名は、エリーゼといいます。よろしくお願いしますね」
と、言われたので、とりあえず、挨拶を返します。
そうすると、今度は、彼女の方から話しかけてきました。
「貴女は、どうして、ここにやってきたのですか?」
と、聞かれたので、正直に答えることにしました。
「実は、ある人を探しているんです」
と答えたら、不思議そうな顔をされましたけど、気にせず話を続けます。
そうすると、その人は、驚いたような表情でこちらを見つめてきましたが、
やがて納得したように頷くと、こんなことを言いました。
「なるほど、そういうことでしたか……それなら、お役に立てるかもしれませんから、案内しましょうか?
それとも、やめておきますか?」
と言われたので、どうしようか悩んだ末に、ついていくことにしたのでした。
そうすると、彼女は、嬉しそうな表情を浮かべながら、私の手を取るとそのまま歩き出したのです。
それから少しして、私達は、ある場所に到着すると、そこに広がっていた光景を見て、
言葉を失ってしまうほどの衝撃を受けたのですが、それは仕方のないことだったと思います。
何故なら、そこにあったものは、巨大な城だったのですから……。
「これは、凄いですね……」
と言って驚いていると、彼女が声をかけてきましたので、私は慌てて返事をしました。
そうすると、彼女は、嬉しそうに微笑んでいましたが、暫くすると、真剣な表情になって、
私の方を見つめてきたので、私も同じように見つめ返すと、ゆっくりと口を開き始めました。
「……それでは、今から、この世界の事について説明しますね。
この世界には、大きく分けて、三つの種族が存在しています。一つ目は、人間族で、二つ目は、魔族、三つ目が、獣人族です。
ちなみに、それぞれの特徴を簡単に説明すると、人間は、平均的な能力を持っていて、
比較的、平和な生活をしていますが、他の二種族に比べると、戦闘能力が低い傾向にあり、
魔族は、身体能力が高く、魔力も高いが、代わりに、知能が低く、好戦的な性格のものが多い。
最後に、獣人族は、高い身体能力を持つ反面、魔法が苦手で、基本的に、平和主義なのが特徴であり、争いを嫌う傾向にあるようです」
と、教えてくれましたが、正直言って、あまり興味が無かったので、聞き流していました。
それよりも気になることがあったので聞いてみることにしました。
「そういえば、気になっていたんですけど、このお城は何処にあるんですか?」
と聞いてみたら、 意外な答えが返ってきて驚きました。
なんと、ここは魔界なのだそうです!
しかも、魔王様の別荘だと言われて更に驚いてしまいました。
まさか、ここが魔大陸だとは思いもしませんでしたからね。
それにしても、こんな場所にお城があるなんて不思議ですよね。
だって、どう考えてもおかしいでしょう。
普通はあり得ないと思うのですが、実際に存在している以上、信じるしかありませんよね。
それに、他に頼れる人もいませんしね。
なので、私は仕方なく受け入れる事にしました。
とはいえ、いつまでもここにいるわけにもいかないと思ったので、これからどうするか考えようとした時でした。
突然、頭の中に声が聞こえてきたのです。
その声は、私を呼んでいるようでしたので行ってみる事にしたのですが、どうやら、その声の主というのは、アルヴェルスのようですね。
一体何の用だろうと思っていたら、急に視界が暗転してしまったかと思うと、次の瞬間には別の場所に飛ばされていたみたいです。
その場所というのが問題でして、何と、私達がいたはずの場所から遠く離れた場所にある洞窟の中にいたのだとか!?
これには私も驚きましたし、何よりも怖かったです。
何故なら、いきなり知らない所に飛ばされた上に、誰もいないという状況ですからね。
そんな状況で冷静になれるはずがありませんから、当然といえば当然のことだと思いますけどね。
そんな時でした。
不意に声が聞こえて来たと思ったら、アルヴェルスが現れたではありませんか!
私はすぐに駆け寄りましたが、そこで見た彼の姿は、とても酷い有様でした。
身体中傷だらけですし、服もボロボロになっているうえに血塗れになっていたからです。
おまけに、意識を失っているのか、ぐったりとしていて動く気配すらありません。
「アルヴェルス、しっかりしてください!」
私は必死になって声をかけ続けますが、反応はありません。
それでも諦めずに何度も呼びかけていると、ようやく目を覚ましてくれたみたいで、ホッとしました。
しかし、まだ油断はできません。
なぜなら、彼は、今にも倒れそうなほど衰弱しているからです。
このままでは危険だと判断した私は、すぐに治療に取り掛かることにしました。
まずは、傷の治療をするために、回復魔法を使い始めたのですが、上手くいきません。
どうやら、今の状態では、完全に治すことができないみたいなのです。
そうなると、方法は一つだけしかありませんでしたが、私は、覚悟を決めると、
「ごめんなさい」
と言いながら、彼に口づけをすると、自分の力を送り込みました。
その結果、無事に成功したようでした。
その証拠に、みるみるうちに傷が癒えていくのが分かったので安心していると、
彼が目を覚ましたようなので話しかけようとしましたが、その前に抱きつかれてしまいました。
そして、そのまま押し倒されてしまったのです。
突然の事で驚いてしまいましたが、不思議と嫌な気分にはなりませんでした。
むしろ嬉しかったくらいですから、思わず顔が赤くなってしまいます。
でも、今はそんな事を考えている場合ではありませんから、気持ちを切り替えて行動に移ることにします。
「あの、そろそろ離してくれませんか? このままだと、まともに動けませんから」
私がそう言うと、アルヴェルスは、渋々といった感じではありましたが、離れてくれたので、ほっと胸を撫で下ろします。
それから、改めて周囲を見回してみると、そこは、森の中のようでした。
「とりあえず、ここから移動しましょう」
そう言って歩き始めたものの、どこに向かっているのか自分でも分かりませんでしたけど、
とにかく前に進むしかないと思って歩き続けていると、突然、目の前に現れた人物を見て、
思わず固まってしまいました。
何故ならその人物とは、かつて勇者と共に戦ったとされる伝説の聖女だったからだ。
だが、よく見ると、その姿に見覚えがあったの。
そう、それは紛れもなく私自身の姿だったの!
それを見た瞬間、全てを思い出したのである。
そうだ、思い出した!
確か、あの時、私は死んだはずだったのだが、何故か生きていたようです。
その理由については分からないが、おそらく、誰かが助けてくれたのだろうと思っている。
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