第9話 九

その様子を見て、思わず笑みが溢れました。

それから、暫くの間、抱き合ったまま、お互いの温もりを感じ合っていたのですが、

不意に、名前を呼ばれました。

「はい、なんでしょうか、アルヴェルス」

そう答えると、彼は、私の髪を撫でながら、優しく微笑んでくれます。

その表情を見た瞬間、胸が高鳴り、顔が熱くなるのを感じると、恥ずかしくなって、顔を逸らしてしまいました。


「あ、あの、どうしたんですか、何かあったんですか?」

恐る恐る尋ねてみると、彼は、私の方を見ながら、ゆっくりと口を開きました。

「いや、何でもないさ、それより、そろそろ寝ようか、君も疲れているだろうし、

明日に備えて、ゆっくり休むといい、おやすみ、いい夢を見られることを祈っているよ」

そう言うと、彼は、そのままベッドに横になって、眠りについてしまいました。

(うぅ、どうしよう、眠れない、このままじゃ、寝不足になっちゃう)

そう思って、暫く悩んだ後、意を決して、彼に話しかけてみることにしました。

「えっと、アルヴェルス、起きてますか?」

そうすると、彼は、こちらを振り向いて、

「ああ、起きているとも、何か用かい?」

と聞き返してきました。

私は、思い切って聞いてみる事にしました。

そうすると、彼は、驚いたような顔をしていましたが、すぐに笑顔に戻ると、こちらを向いて、こう言いました。

「なるほどな、つまり君は、元の体に戻れるかどうかを知りたいわけか、わかった、調べてみようじゃないか、

だが、それには準備が必要だ、すまないが、それまで待ってもらえるだろうか?」

そう言われたので、わかりましたと答えたら、彼は部屋を出て行ってしまいました。

それから暫くして戻ってきた彼の手には、小さな箱のようなものがあり、

その中には、綺麗な宝石のようなものが入っており、それはキラキラと輝いていて綺麗だったんだけど、

どこか禍々しい雰囲気を漂わせていました。

そうすると、突然、頭の中に声が響いてきたのです。

その声は、どうやら、目の前にいる彼のものみたいでしたが、何を言っているのかよく聞き取れなかったので、

聞き返すと、彼は答えてくれました。

「ふむ、そうか、それなら仕方ない、ならば教えてやろうではないか!」

そう言って胸を張りながらドヤ顔する彼に苦笑しながら続きを促すと、彼は語り始めました。

なんでも、この宝玉を使えば、元に戻れるかもしれないとのことでした。

ただし、条件があるようで、その一つ目は、私とアルヴェルスの二人が同時に使うこと。

二つ目は、どちらか一方だけが使ってしまうと、効果が発動しないため、二人とも使わないといけないそうです。

そして三つ目として、使用後は、必ず二人きりになれる場所で行うことというのがありました。

それを聞いた私は、迷わずに了承すると、早速、試してみることにしました。

「じゃあいくぞ、いいな?」

私が頷くと、彼は呪文を唱えると、手に持っていた水晶から光が放たれて私を包み込んでいきました。

暫くすると光は消えていき、気がつくと、目の前には彼の顔がありました。

そこでようやく、元の体に戻ったのだと実感できたんです。

でも、まだ終わりではありませんでした。

なぜなら、もう一つの問題が残されていたからです。

それが何なのかというと、彼と交わらなければならないという事なのですが、

正直言って、不安しかありませんでしたね。

だってそうでしょう?

いくら好きな人とはいえ、初めての経験なんですから緊張するのは当たり前でしょう。

ところが、そんな私の気持ちなどお構いなしといった様子で迫ってくる彼に、

「ちょ、ちょっと待ってください! 心の準備がまだできていませんので、少しだけ時間をくれませんか!?」

慌てて止めようとしたものの、聞き入れてくれる様子はなく、結局押し切られてしまったんです。

その後はもうされるがままでしたが、決して嫌ではありませんでしたね。

それどころか、とても幸せで満たされた気分でしたよ。

こうして私達は結ばれたのです。

〜数日後〜

あれから数日が経過しましたが、未だにあの時のことが忘れられません。


思い出すだけで体が熱くなってしまいますね。

ですが、いつまでもこうしている訳にもいかないので、気持ちを切り替えましょう。

さて、今日は何をしましょうかねぇ……そうだ、せっかくですから、街に出てみましょうかね。

そう思い立った私は早速出かけることにしました。

まずは服屋さんに行って新しい服を買おうと思い立ち、店内に入るとスタッフさんに案内されたのでついて行くことにしました。

そして、お部屋に入るように言われたのですが、言われるままに着替えてみると、そこには可愛らしいドレスが用意されていたので驚きましたね。

しかもサイズまでピッタリだったのでびっくりですよ!

その後も色々と試着してみた結果、気に入ったものが見つかりましたので購入することにして支払いを済ませた後、

店を出て次の目的地に向かうことにしたんですが、その前にお腹が空いたので食事をすることにしたんですよ。

ちょうど近くにカフェがあったので入ることにしたんですけど、メニューを見るとどれも美味しそうなものばかりで迷ってしまいそうでしたよ。

なので、スタッフさんを呼んでオススメを聞くことにしました。

その結果、チーズケーキと紅茶のセットを頼むことになりましたけど、これはこれで美味しかったですね。

満足しながら食べているうちに食べ終わっていたので会計をして店を出ようと立ち上がった時のことです。

いきなり背後から声をかけられたので振り返ると、そこには、見覚えのある男性が立っていました。

そう、それはアルヴェルスだったのです。

「やぁ、奇遇だね」

と言いながら近づいてくる彼に対して私は警戒していましたが、すぐに敵意がない事に気づきました。

(あれっ、おかしいな、なんでだろう、この人のことを敵だと思えない)

不思議に思っているうちにも話は進んでいきます。

「英里は俺の婚約者なのに、勝手にウロウロしちゃいけないだろう」

「ごめんなさい、ちょっと買い物に行きたかったもので……」

そう言いながら頭を下げると、彼は許してくれたようですが、その後、とんでもないことを言い出しました。

なんと、今からデートに行こうと言うではありませんか!?

さすがに急すぎると思ったのですが、断るのも悪い気がして、仕方なく付き合うことになったんですよね。

それで、どこに連れて行ってくれるのかと思ったら、まさかのお城でした。

これには私も驚いてしまいましたよ。

というのも、てっきりどこかに遊びに行くと思っていたものですから、予想していなかったのですよ。

そんなわけで、中に入る事になったわけですが、中に入った途端、メイドさん達が出てきて出迎えてくれたのには

ビックリしてしまいましたよね。

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