第8話 八
暫く抱き合った後、ゆっくりと離れると、今度は顔を近づけてきてキスされたんです。
最初は軽く触れる程度のものでしたが、次第に激しくなっていき、最後には舌を絡ませ合うほどの濃厚なものになっていきました。
それを何度も繰り返していき、
「んっ……ちゅっ、れろっ……」
やがて満足したのか、口を離すと唾液の糸が伸びており、それがプツリと切れました。
それを見て、なんだか恥ずかしくなってしまい、顔を逸らすと、その様子を見ていた彼が、耳元で囁いてきたんです。
「可愛いな、君は」
その言葉にドキッとした私は、さらに顔を赤くして俯いてしまいました。
そうすると、彼は、私の体を抱きかかえると、膝の上に乗せてしまったんです。
そして、そのままぎゅっと抱きしめられてしまったのですが、不思議と嫌な気分にはなりませんでした。
むしろ、心地良さすら感じていたくらいです。
暫く抱き合っていると、不意に名前を呼ばれたので顔を上げると、彼の顔が目の前にあったので、
思わず顔を背けてしまいました。
そんな私の顔を両手で包み込むようにして正面に向けると、じっと見つめてきました。
やがて、どちらからともなく唇を重ね合わせると、暫くの間、お互いを求め合い続けました。
「んむっ……ぷはっ……」
ようやく解放されましたが、まだ足りないと思った私は、もう一度口付けを交わします。
そうすると、今度は向こうから求めてきたため、それに応えるように舌を絡め合わせていくと、
お互いの唾液を交換し合いながら貪り合っていきました。
やがて息が続かなくなったのか、名残惜しそうに離れていく唇を目で追ってしまいます。
(あぁ、もっとしていたかった……)
そんなことを考えていると、今度は首筋を舐められてビクッと反応してしまい、
慌てて離れようとするのですが、逃さないとばかりに押さえつけられてしまい、
再び首筋に吸い付かれてしまいます。
チクッとした痛みとともに、赤い痕が残るのを見て満足そうな表情を浮かべる彼を見て、ドキドキしてきました。
「アルヴェルス……もっとキスして……」
我慢できずにおねだりすると、彼は微笑みながら応えてくれましたよ。
それから、何度も何度もキスをした後に、お互いに見つめ合っていると、突然、視界がぼやけ始めました。
それと同時に眠気に襲われてしまい、そのまま意識を手放してしまうのでした。
翌朝目が覚めると、隣には誰もいませんでした。
不思議に思いながら体を起こすと、頭がズキっと痛んで顔をしかめていると、部屋の外から足音が聞こえてきます。
それは徐々に近づいてきており、扉の前で止まると、ノックをしてきたので返事をします。
入ってきた人物を見た私は驚きのあまり固まってしまいました。
何故なら、そこにいたのはアルヴェルスだったからです。
「目が覚めたようだな、体調はどうだ、どこか痛むところはないか?」
そう言われたので、大丈夫だと答えると、安心したような顔をされました。
それから、何があったのかを説明してもらいました。
どうやら、昨日の晩、私が眠っている間に彼は宿屋に戻ってきていたようで、その後、部屋に戻ったら、
すでに眠っていた私を起こさないように、そっと布団をかけてくれたそうです。
その後は、朝になるまで待っていてくれたみたいで、朝食の時間になっても起きてこない事を不審に思った女将さんが、
様子を見に来た時に、倒れている私を見つけて、助けてくれたんだとか。
それを聞いた時は、申し訳ない気持ちでいっぱいになりましたが、それ以上に嬉しかったですね。
だって、私のことを心配して、わざわざ来てくれたんですから、これはもう愛されているとしか思えません。
そんなわけで、私達は、一緒に旅をすることになったんですよ。
目的地は、魔王を倒すことなんですけど、その前に、この国を見て回りたいと言ったら、快く引き受けてくれました。
というわけで、まずは、この国で一番大きな街である、王都に行くことになりました。
そこで、必要なものを揃えた後、いよいよ、魔王討伐の旅が始まりましたね。
最初のうちは、順調に進んでいたんですが、途中で、魔物の群れに遭遇してしまい、大ピンチに陥ってしまいました。
ですが、その時、アルヴェルスが助けに来てくれたのです。
おかげで、無事に切り抜けることができ、その後も何度か危ない場面がありましたが、その度に助けられましたね。
そのうちに、段々と好きになっていったというか、彼の事が気になるようになったんですよね。
そんなある日の事でした。
いつものように、森の中を歩いていると、突然、後ろから襲われたので振り向くと、そこには見知らぬ男性が立っていたんです。
その男性は、ニヤリと笑うと、いきなり襲いかかってきたので、必死に抵抗しようとしたものの、力及ばず捕まってしまうのでした。
気がつくと、そこは薄暗い部屋の中で、手足を縛られていて身動きが取れなくなっていました。
なんとか脱出しようと試みたものの、上手くいかず、諦めかけた時でした。
扉が開いて誰かが入ってくる気配がしたので、そちらを見るとなんと、そこに立っていたのは、アルヴェルスだったのでした。
「良かった、無事だったんだね」
そう言って微笑む彼に、私も笑顔で応えることにしました。
しかし、それも束の間のことで、すぐに真剣な表情になると、こう言って来たのです。
その内容とは、私にかけられた呪いを解くために協力して欲しいというものでしたが、私には何の事なのかわかりませんでした。
なので、詳しい説明を求めたところ、実は、この世界に召喚された際に、女神の力の一部を与えられているらしく、
その力を使って、この世界を救うように言われたらしいんです。
それを聞いて納得しかけましたが、そもそもなぜそんなことをしなければならないのかと尋ねると、
どうやら、この力は、この世界の人間では扱えない代物のようで、それ故に、私に白羽の矢が立ったようなのです。
最初は戸惑いましたが、困っている人を助けることができるのならと思い、承諾することにしました。
そして、早速、儀式を行うことになったのですが、ここで問題が発生してしまったのです。
というのも、今の私の状態だと、力を制御できない可能性があるということで、一度、元の体に戻る必要があると言われてしまいました。
確かにその通りだと思ったので、大人しく従うことにしたんです。
その結果、無事に成功したわけですが、問題はここからでした。
何故なら、今の体は、本来のものとは大きく異なっている上に、記憶も失っていたからです。
それでも、何とかなるだろうと考えていたんですけど、甘かったみたいですね……まさか、ここまで酷いとは思わなかったですよ!
何せ、何も覚えていないのですから、当然ですよね。
だから、これからどうすればいいのか途方に暮れていたところに、彼が現れたというわけなんですよ。
しかも、話を聞く限り、彼もまた被害者の一人だそうで、今は、元の世界に帰る方法を探している最中なんだとか。
それを聞いて安心しましたよ。何しろ、帰る方法がわからないままだったらどうしようかと思っていたところでしたからね。
とりあえず、当面の間は一緒にいることになりそうですね。
〜とある日の夜〜
(ふぅ、今日も疲れたなぁ)
そう思いながらベッドに向かうと、何故かそこには彼の姿があったんです。
最初は驚いてしまったのですが、すぐに落ち着きを取り戻して声をかけると、彼は答えました。
「いや、何、大したことではないさ、ただ、君に会いたくなっただけだよ」
そう言われて嬉しく思った私は、つい頬が緩んでしまっていました。
そうすると、それを見た彼が、いきなりキスをしてきたんです。
突然のことで驚いているうちに押し倒されてしまい、そのままキスされてしまいましたが、
不思議と嫌な気分にはなりませんでした。
むしろ、心地良さすら感じていたくらいです。
それを何度も繰り返していき、やがて満足したのか、口を離してくれました。
お互いに息を整えながら見つめ合っていると、今度は向こうから話しかけてきました。
「大丈夫か? 少し無理をさせてしまったかな?」
心配そうな顔で尋ねてくる彼を、私は首を横に振って否定します。
そうすると、彼はホッとした様子で、胸を撫で下ろします。
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