第3話 参
その国は、とても寒い場所で、一年中雪が降り続けているような場所だそうです。
そのため、この国では、常に食糧難が続いているのだといいます。
更に、この国の王様はとても横暴な性格をしているそうで、気に入らないことがあると、すぐに処刑してしまうんだとか。
そんな話を聞いた私は、絶対に行きたくないと思いました。
だって、そんなことをしたら命がいくつあっても足りませんからね!
そういうわけで、暫くは、のんびりと過ごすことにしようと思うのですが、ここで問題が発生してしまいました。
というのも、私には、お金が全くないんですよね……。
このままでは、宿にも泊まれないし、食事もできません。
どうしたものかと考えていると、あることを思い出しました。
そういえば、私の鞄の中に入っていたはずなのですが、何処に行ってしまったのでしょう。
そう思って探してみると、やはり見当たりませんでした。
ということは、おそらくあの時に落としてしまったのでしょうね。
あの時は、慌てていて気づかなかったけれど、もしかしたら中身も一緒に落としたのかもしれないわ。
そう思うと、途端に不安になってきますね。
もしも、お金や貴重品が入っていたら大変だもの、早く見つけないといけませんね。
とはいえ、そう簡単に見つかるわけもなく、途方に暮れていると、そこに、一人の男が現れて、話しかけてきたのです。
その男は、いかにも怪しげな雰囲気を漂わせていましたが、特に気にすることもなく、話を聞いてみました。
なんと彼は、私の荷物を拾ってくれた上に、届けてくれたのだといいます。
これには、驚きましたね。
まさか、こんな親切な人がいるなんて思いもしませんでしたから。
しかも、その人は、私のことを心配してわざわざ追いかけてきてくれたようでした。
その優しさに感謝しながら、お礼を言うと、その人の名前は、エルさんというそうです。
見た目はかなり怪しい感じなんですけれど、悪い人ではないようですね。
そこで、私は、彼にお願いして、暫く一緒に行動させてもらうことにしました。
理由は、もちろん、一人で行動するよりも安全だからという理由もありますし、何より、彼の人柄に惹かれたからです。
この人なら信頼できると思い、思い切って相談してみることにしました。
そうすると、意外な答えが返ってきましたよ!
なんでも、彼には、妹さんがいるそうなのですが、数年前に病気で亡くなってしまったそうです。
それからというもの、ずっと一人きりの生活を送っているらしいのですが、ある日突然、頭の中に声が聞こえてきて、
妹さんを生き返らせる方法があることを知ったそうなのですよ。
それを聞いた瞬間、思わず耳を疑ってしまいましたね。
何せ、そんなことが可能なのかと疑問に思ったものですから。
ですが、詳しく話を聞いてみるうちに、段々と興味が出てきてしまい、最後には、二つ返事で了承してしまったのですよ。
我ながら単純だとは思うのですが、それでも構いませんでした。
何故なら、今の私には、彼しか頼れる人がいなかったのですから……。
そんな訳で、今現在、私達は、二人で旅に出ることになったのです。
目的地は、ここから遥か南の方角にある港町に行く予定になっています。
まずは、そこを目指して歩き始めました。
道中は特に何の問題も起きなかったので、順調に進むことができましたよ。
ただ、一つだけ気になることがあったとすれば、先程から誰かに見られているような気がすることでしょうか。
気のせいかもしれませんが、念のため、警戒だけは怠らないようにしておきましょうかね。
そんなことを考えながら歩いていると、ようやく町が見えてきました。
どうやらここが目的の場所みたいですね。
早速中に入るとしましょうか。
それにしても、この町は、活気があっていいですね。
あちこちから楽しそうな声が聞こえますし、それに、沢山の人達が集まっています。
中には、人間以外の種族の方もたくさん見かけますね。
流石は、港町といったところでしょうか。
とにかく、これだけ賑やかな場所に来たのは初めてかもしれません。
ですが、いつまでも見ているわけにもいかないので、とりあえず宿屋を探すことにしました。
そこで、手頃な値段のところを探そうとしたところ、運良く空き部屋が見つかったので、そのまま泊まることになりました。
部屋は、二人部屋でしたが、ベッドが一つしかなかったため、仕方なく、一緒に寝ることにしました。
そうすると、アルヴェルスの方から提案してきたので、私は、それを受け入れました。
別に嫌というわけではありませんでしたしね。
むしろ、嬉しく思っていましたよ。
翌日、目を覚ますと、目の前に彼の顔がありました。
どうやら先に起きていたようです。
おはようございます、と言うと、彼もおはようと言ってくれました。
そして、お互いに挨拶を済ませると、朝食を食べるために、食堂へと向かいました。
そこで、注文したのは、パンとスープのセットです。
料理が来るまでの間、待っている間、私は、これからの予定について考えていました。
(さて、どうしようかな?)
実は、まだ決めていないんですよね。
「ねえ、アルヴェルス」
なので、隣にいる彼に聞いてみます。
そうすると、彼は、少し驚いたような表情を浮かべてこう言いました。
「どうしたんだい?」
それに対して、私は、素直に思っていることを話します。
「いえ、大したことじゃないんだけど、この先、どうやって生きていこうかなと思ってさ」
彼は、優しく微笑んで答えてくれます。
(ああ、やっぱり好きだなぁ)
そんな彼の笑顔を見ていると、胸がドキドキしてくるんです。
それと同時に、幸せな気分になります。
きっと、これが恋ってものなのでしょうね。
だからこそ、私は、彼を守りたいと思ったのです。
たとえ、どんなことがあっても必ず守ってみせると誓います。
それが、今の私にとって一番大切なことだと思うから。
その後、食事を食べ終えた後、これからどうするか話し合いをすることにしました。
といっても、特にこれといった案があるわけでもないんですけどね。
「うーん、どうしたものかしらねぇ……」
と言いながら、考え込んでいると、アルヴェルスが話しかけてきました。
「何か悩み事でもあるのかい?」
そう聞いてきたので、私は正直に答えることにしました。
「ええ、そうよ。でも、あなたに話すようなことじゃないわ」
そう言うと、彼は悲しそうな顔をしていましたが、気にせずに、その場を立ち去ろうとした時、
後ろから声をかけられたのです。
振り返るとそこには、彼が立っていました。
そして、いきなり抱きついてきたかと思うと、そのまま唇を重ねてきたのでした。
突然のことで驚いてしまいましたが、不思議と嫌な感じはしませんでした。
それどころか、寧ろ心地良さを感じてしまうくらいです。
暫くして、満足したのか、ゆっくりと離れていった後で、こんなことを言い出しました。
「このまま君と一緒に居たいな」
と言われた時は、ドキッとしてしまいましたよ。
まさか、そんなことを言われるとは思っていませんでしたからね。
正直言って嬉しかったですよ。
だって、私も同じ気持ちだったんですから!
そう思ったら居てもたってもいられなくて、つい、返事をしてしまったんですよ。
彼は、笑顔で返してくれたのでした。
それから暫くの間、お互い見つめ合っていたのですが、不意に彼から声をかけられました。
(どうしたんだろう?)
と思っていると、今度は、真剣な表情で見つめられてしまい、思わず顔を背けてしまいました。
そんな私の様子を見ていた彼は、クスッと笑うと、再び声をかけてくるのです。
それは、とても優しい声色だったので、自然と耳を傾けてしまうんですよね。
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