中間試験後の出来事

キーンコーンカーンコー

チャイムが鳴った。

「そこまで」

先生の合図でシャーペンを置く、

テスト用紙を裏返し、後ろから回収していく。……終わった! 僕は思わず机に突っ伏した。テストは全部で四日間あり、今日はその最終日だった。つまり、明日は終業式だ。そして明後日からは夏休みが始まる。

とりあえず、もう屋敷に帰ろう。


「あー、疲れた!」

自室に戻り、ベッドの上に倒れ込む。テストの出来はまあまあといっところか。そんなことより、今は早く眠りたい。そう思っていると、コンコンというノックの音とともにドアの向こう側から声が聞こえてきた。

「水無瀬くん、いますか?」そう言いながらお嬢様が入ってきた、彼女はいつものように制服姿ではなく、ラフな部屋着を着ていた。

「どうされました?何かご用ですか?」

僕が起き上がって訊ねると、お嬢様は少し気まずそうな顔をして言った。

「少しかくまってください」

「えっ!?」

「いいから早くしてください!」

「わ、わかりました……」

わけがわからぬまま、僕は急いでクローゼットの中に隠れた。するとすぐに部屋の扉が開き、誰かが中に入ってくる音がする。

「お嬢様、ここに隠れているんでしょう?」

この声は神崎先輩だ。どうして彼女がこんなところにいるんだ?

「神崎先輩どうしたんですか?」

神崎先輩は僕にかまわず続ける。

「ほら、出てきてください、ここにいるのはわかっていますよ」

先輩の言葉のあともしばらく沈黙が続いたが、やがてクローゼットの中からくぐもった声が聞こえる。

「……いやです」

「じゃあ仕方ありませんね。無理やり引きずり出します」

その言葉と同時にクローゼットの取っ手がガタッと音を立てる。

「きゃあっ!」

悲鳴をあげたあと、クローゼットの奥の方へと消えていく足音がした。その後、「捕まえた!」という嬉しそうな声と共にドタバタとした物音が聞こえてくる。

「やめてくださいっ!」

「さあ観念なさい!」

「いやぁ〜!」

何が起こってるんだ。しばらくして、ようやく静寂が訪れた。

「ふう、やっとおとなしくなってくれたみたいですね」

神崎先輩の声が聞こえたのでクローゼットを覗くと、そこには床に転がされて手足を押さえられているお嬢様の姿があった。

「あの、これは一体どういう状況なんでしょうか?」

恐る恐る尋ねると、神崎先輩はため息混じりに答えた。

「まったく、私より定期テストの点が悪かったから私特製の特別メニューを提示したらお嬢様が逃げ出したんですよ。それで今こうして追いかけっこをしていたんです」

……なんだそれは、てか神崎先輩お嬢様にテストの点で勝とは頭いいな。

「でも結局捕まえましたけど」

そう言ってクスッと笑う神崎先輩とは対照的に、お嬢様は恥ずかしそうに頬を染めていた。

「さてお嬢様、私はそろそろ夕食の準備に取りかかりますので失礼します。」そう言うとお嬢様の手を解放してから部屋を出ていった。

「……大丈夫ですか?」

僕はクローゼットから出てきたお嬢様に手を差し伸べながら尋ねた。

「はい……」

彼女は僕の手を握り立ち上がる。その時ふわりといい匂いが鼻腔をくすぐり、僕はドキッとして慌てて目を逸らす。

「では私はこれで……」

とお嬢様が立とうとしたとき、お嬢様が何かを思い出したようにこっちを向き

「水無瀬君は夏休みに何か予定はありますか?」

なんでこんなことを聞くんだろう?

「特に友達と遊ぶ約束はないですし特にこれといった予定はありませんよ、何でですか?」

お嬢様は少し言葉に詰まったようだがすぐに

「いえ、聞いてみただけですよ」

「そうですかでは神崎先輩の特別メニュー頑張ってください」

お嬢様が少しいやそうな顔をしたが

「水無瀬君まで、まあいいです、それでは」

そういうとお嬢様は部屋を後にした。

もうすぐ夏休み楽しみだな~

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僕とお嬢様の日常 永露 しぐれ @KatouYasunori

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