大文字伝子が行く119

クライングフリーマン

大文字伝子が行く119

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」と呼ばれている。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。

 物部一朗太・・・伝子の大学翻訳部同輩。当時、副部長。

 依田俊介・・・伝子の翻訳部後輩。元は宅配便配達員だったが、今はホテル支配人になっている。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進むが、今は建設会社非正規社員。演劇は趣味として続けている。

 福本祥子・・・福本の妻。昔、福本と同じ劇団にいた。福本の劇団の看板女優。

 金森和子二曹・・・空自からのEITO出向。

 増田はるか三等海尉・・・海自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。

 夏目警視正・・・警視庁副総監の直属。斉藤理事官(司令官)の代理。

なる。EITO準隊員。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。みちるの夫。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 青山たかし・・・EITO準隊員。エレガントボーイ。

 天童晃・・・EITO準隊員。EITO剣道顧問。

 野口元総理・・・政権交代時の違憲異種党総理。

 大西ひろき・・・違憲異種党議員。



 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO精鋭部隊である。==


 正午。地産高校。

 なぎさと田坂が到着すると、校舎は鎮火した後で、体育館は工事中で、校庭で卒業式が行われていた。

 生徒、、父兄、教職員は、椅子に座って怯えている。その回りに忍者の集団が陣取っている。

 機動隊が包囲しているが、手を出せないでいるようだ。

 隊長に向かって、なぎさは言った。「合図するまでは、下がっていて下さい。」

 「了解しました。」隊長はなぎさに敬礼をすると、機動隊を下がらせた。

 なぎさと田坂は走りながらブーメランを操り、忍者集団を一方に誘導した。

 集団が固まり、銃や機関銃を構えた時、田坂はこしょう弾の付いた矢を弓に当て、発射した。忍者達がむせぶ中、2人は脚に装着しているバトルスティックを外して攻撃し始めた。

 バトルスティックは先端に痺れ薬が塗ってある。そして、伸縮自在だ。50人の那珂国人忍者は、2人に十数分で鎮圧された。

 なぎさは、合図を送った。機動隊がなだれ込んで来た。その時、田坂のイヤリングに通信が入った。負傷者が出た、という信号だ。イヤリングも通信装置だが、音声は一方的でしかなく、受信は信号のみだ。

 田坂はすぐに、なぎさに報告をした。

 正午。団子塚高校。

 結城と大町が到着すると、消防隊長が近寄って来て言った。

 「エマージェンシーガールズ。鎮火しましたが、体育館に忍者が立てこもりしています。」「了解しました。」

 結城と大町が体育館に行くと、消防隊長の言う通りだった。

 「待たせたな、那珂国の乱暴な方々。」結城が向かっている間に、大町は長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛のような笛で、通常の人間の耳には届かない特殊な音波を出す笛である。吹き方によって、信号の意味が変わる。

 「退屈しただろうから、クイズを出してやろう。」「ほう。言ってみろ。」「EITOは民間団体と言われているが、ウソか本当か?」「ウソだろう。」と、リーダー格の男は言った。

 「ぶ、ブー。民間団体だよ。まあ、JAFみたいなもんかな?」

忍者達は笑った。その時、出入り口からホバーバイクに乗った青山と天童が到着した。

 「お待たせ。」とエレガントボーイの格好の青山が言った。

 「間に合いましたかな?」と、銀頭巾の姿の天童が言った。

 「君たち、ちょっと待っててねえ。」と結城は言い。4人は刀を携えた忍者達に向かった。

 正午。えにし高校。

 消防士から鎮火の報告を受けた、あつこは、あかりと共に談笑しながら体育館にやって来た。何故か生徒達とPTA、教職員は全員、舞台の方に上げられていた。

あかりは、キッチンタイマーをセットして、隅にあった跳び箱の上に置いた。

「何分にした?」「15分です、副隊長補佐。」

 「オッケー、ゴウ!!」あつことあかりは、走りながらブーメランを、シューターを放った。2人同時にペッパーガンでこしょう弾を撃った。

シューターとは、うろこ形の手裏剣である。先端に痺れ薬が塗ってある。ペッパーガンで撃つこしょう弾とは、胡椒等の調味料でこねた丸薬状の弾である。

今度はバトルスティックで闘う2人。あつこの肩を借りて跳躍したあかりは、空中でシューターを放った。

 あつこはDDバッジを押した。「これから、警官隊が到着して彼らを逮捕連行護送します。それが終るまで、もう少し我慢して下さい。」と、舞台に向かって、あつこは言った。

 午後1時。ある高校。職員室。

 大西は目覚めた。「懐かしいだろう、大西。お前の母校だ。卒業式のシーズンだが、もう終ったよ。貴様、国会で何をしている?」

 大西は、自分が椅子に座って縛り付けられていることを知った。

 大西は、深い後悔をした。野口から渡された追跡装置を家に置いたままだった。

 野口の勧告を無視して、身に着けることをしなかったのだ。まさか、本当に誘拐されるとは思っていなかった。

 女が入って来た。「後金は、殺してからね。ボスが、首とあそこをちょん切っちゃいなさいって。」

 机に並べられた道具は、おぞましい拷問道具だった。

 「お前がボスじゃないのか?」エマージェンシーガールズ姿の稲森と安藤が職員室に入って来た。安藤はスマホを持っていた。

 「君の手下は倒したよ、我々が。少人数でも闘い方はあるんだ。ついでに、議員を 助けに来た。」

 スマホの画面から声が聞こえた。伝子の声だ。

 「関谷恭子、いや、関谷恭太郞。お前こそ闇頭巾だ。」「もうバレちゃったよ。観念して、投降して。挙子チャン。」中山ひかるの声だった。

稲森は、大西に当て身を食らわせ、気絶させた。そして、大西が胸に挿していた、追跡装置付きの万年筆を、通常の万年筆に入れ替えた。

 「裏切ったのか?裏切れない筈なのに・・・。」と関谷は言った。

 「洗脳は解けたよ。アナグラムのお陰でね。洗脳された僕は、知らず知らずDDやEITOの秘密を君にばらしてしまっていたようだ。だが、高遠さんがアナグラムの宿題を幾つか送ってくれた。最初のアナグラム問題は『カルト貧農を消せ』だった。答は『洗脳を解け、ひかる』だった。二番目の問題は『相手は月』で、答は『あいつは敵』だった。他にも幾つかアナグラムを解いている内に気づいたんだ。君に操られていたことを。」

 ひかるの言葉に関谷は頽れた。

 「君は、アナグラムが得意だった。そんな君を尊敬する内に目覚めた。最初は言葉だった。僕と言わずにアタシと言い始めても君は受け入れてくれた。君を、いえ、あなたを愛していることに気づいた時、もう引き返せない所まで来ていた。アタシは、組織の『幹』になった。幹部になった。母親でさえ、隷従させる非情な人間になってしまっていた。」

 突然、突然、薬を飲もうとした関谷の手首を稲森が握った。

 「ダメだ。許さない。死ぬなんて。逃げちゃダメだ。僕は君が更生して帰ってくるのを待つよ、ずっと。君は僕の親友だ。彼女でも悪魔でも闇頭巾でもない。」ひかるは叫んだ。

 関谷は握っていた手を緩めた。稲森は薬を待機していたエマージェンシーガールズ姿の飯星に渡して、稲森は頷いた。

 久保田警部補が入って来た。「君の母親は、既に護送したよ。ありがとうございます、助けて頂いて、と礼を言われたよ。」

 久保田警部補は、他の警官達と関谷を逮捕連行した。

 「うーん。」と言う声がした。稲森と安藤は、慌てて大西のロープを解いた。

飯星は、久保田管理官に連絡を入れた。電話の向こうの久保田管理官が言った。

 「逮捕したか。ご苦労様。日向隊員が負傷したらしい。理事官や大文字君達はもう病院に向かった。病院は本庄病院だ。EITOに帰還せずに病院に向かってくれ。」

 「了解しました。」大西に付き添う警察官に大西の体に異常がないことを伝え、警察官は大西と共に出て行った。

 飯星は、自称誘拐犯の男に「帰りましょう。ご協力ありがとうございました。」と、言った。

 「私は、罪になりますか?」「後で確認するけど、ならないと思う。捜査協力になるから。」「議員は?」「今日は腹痛で休んだことになっているから、ね。気にしなくていいわ。」職員室を出て行く時、男はニヤリと笑った。

 午後2時半。本庄病院。

 手術室から院長が出てきた。「エマージェンシーガールズのユニフォームで無ければ、危なかったよ。お大事に。」

 伝子と理事官は、看護師に会議室に案内された。待っていたのは、日向の母親だった。

 日向の母親は、土下座をした。「お願いします。もうこれ以上、危険な任務はさせないで下さい。止めさせて下さい。」と言った。

「日向一佐は、空自からの出向です。おっしゃる通り、空自以上に危険な任務です。まずは、空自に戻してはいかがですか?治療が完了次第、空将に相談します。」

日向の母親は、黙って頷いた。

 伝子が待合室に行くと、なぎさ達が来ていた。

 「おねえさま。さやかの容態は?」

 「手術は成功した。治療は3ヶ月から半年だ。」

 「おねえさま。止めるの?お母さんが来ていたみたいだけど。」「多分な。」

 午後4時。日向の病室。

 「隊長・・・アンバサダー。1度でいいです。『おねえさま』って呼んでいいですか?」

 「勿論だ、妹よ。さやか。止める止めないは、治療期間中にゆっくり考えろ。お前は私の妹だ。これからもずっとな。それだけは、言っておく。」「はい、おねえさま。」

 時間制限があるので、伝子達は交代で見舞いをした。

 皆が引き上げるとき、前田空将と理事官が来た。

 「後はお任せします。」と、伝子は一礼をして、病室を後にした。

 前田は入室する時、歌を歌っていた。伝子は首を傾げた。

 待合室。

 筒井と物部が待っていた。「EITOのメンバーは帰ったよ。」と、筒井が言った。

 「今、筒井から聞いたんだが、日向一佐って、前田空将の姪なんだって?」と物部が言った。

 「言って無かったか?すまん。」伝子が言うと、「いや、まずくはないが・・・。」と、物部は言い淀んだ。

 「お待遠様」高遠が3人分、コーヒーを持って来た。

 「あ。私はいい。」と、伝子は高遠が言う前に答えた。

 「ひかる君は操られていたのか?」と物部が尋ねると、「洗脳されていたのか?と尋ねるべきだな。」と、筒井が横から言った。

 「話は、明日でもいいですか?僕も直感で動いたので。」「了解した。」「了解。」

 筒井も物部も頷いた。

 「じゃあ、送ろうか?高遠、大文字。」「ああ、頼む。」「お願いします。」

 高遠と伝子は異口同音に応えた。

 薬の順番を待っている、と言う物部と分かれた伝子と高遠は筒井のクルマに移動した。

 午後4時半。筒井の車。

 「高遠。誰かが聞き耳を立てていたか?」運転しながら筒井は尋ねた。

 「直感ですけどね。自販機からコーヒーを持って来た時、人の影が。」と高遠は応えた。

 「新たな敵か。」と、筒井は言った。

 その時、伝子のスマホが鳴動した。あつこからだった。伝子はスピーカーをオンにした。

 「おねえさま。大西が殺されたわ。折角護送したのに、クルマでコンビニに行ってくると家人に言って家を出たらしいの。その前にね、どうも誰かと電話をしていたらしい。ひき逃げされた大西のポケットには、スマホが無かった。一応捜索はしているけれど、ただのひき逃げとは思えない。おじさまもそう言っていたわ。」

 「おじさま?ああ、管理官か。ダークレインボーの新たな刺客かも知れないな。明日、皆に聞かせてくれ。」「了解。あ、それから、高遠さん、お疲れ様、それと、ありがとう。皆からの伝言よ。お休みなさい。」「あ、俺は?」

 運転しながら怒鳴った筒井に、「いたの?お疲れ。」と言って、あつこは電話を切った。

 「差別丸出しだな。」と、筒井は笑った。

 後部座席では、2人が手と手を繋いで眠っていた。

 「俺、元カレなんだけど・・・。」と、筒井は呟いた。

 ―完―

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