第111話 ルーが教えてくれた神話の時代のこと②

 ルーは珍しくたくさんしゃべると、そこで言葉を切った。

「ルー!」

 楓はルーのもふもふにもたれかかった。


「ドラゴンの話、おもしろいわね。ピンクちゃんから聞いたことなかったわ」

 彩香が言うと「王位継承する際に聞く話かもしれない。それに、ドラゴンの方ではもっと詳しい話が伝承されているはずだと思う」とルーは言った。

「王位継承者にしか話されないのかしら?」

「恐らく。ドラゴンが一枚岩でなくなることを恐れてのことかもしれない。何しろ、ドラゴンがいくつかに分かれて争っていたという話だから。……まあ、これはオレの勝手な推測だが」

「ドラゴンが人型になれた、というのもおもしろいわ。今は人型にはなれないのかしら?」

「……少なくともオレは聞いたことがない」

「あたしもピンクちゃんから聞いたことないなあ」

 すると、楓が言った。


「ドラゴンはドラゴンのままでいいじゃない! 別に人型になってもいいけど。みんなそのままでいいんだよ!」

「そうだね、楓」

 弘樹はルーにしがみついている楓に手を伸ばし、その頭を撫でた。それから、透の頭を。

 みんな、そのままでいいんだ。

 彩香も楓も透も、ルーもピンクちゃんたちも。もちろん、僕も。


「ねえ、ルー」

 楓はルーのもふもふから顔を上げて、ルーの顔を見た。

「なんだい? カエデ」

「あたしがね、ルーたちをたすけて、そしてアルニタスを統一して、ルーのお嫁さんになるんだよね?」

「楓⁉」と弘樹が慌てたように言うのと、彩香が嬉しそうに笑うのと、同時だった。


「え? そういう話じゃないの?」楓が言う。

「うん、そういう話かもね」くすくす笑いながら、彩香が応える。

「いずれにせよ、僕たちは動かなくちゃいけないね」

 弘樹が言うと、彩香が「うん、そうね。まずは人狼の里に行って、ドラゴンの里にも行って? ルミアナのベルンハルト様にも相談したいし、王都にも行かなくちゃいけないよね」と言った。


「移動が大変だね。手分けする?」

 と弘樹が言ったとき、それまでずっと黙っていた透が「あのね、これ、やくにたつかなあ?」と四角いものを差し出した。

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