5.アルニタスの声が聞こえる

第108話 「たすけて」って聞こえたんだよ①

 楓は人狼の里のことを、一生懸命話した。

 人狼の里が楽しかったことから話した。ルーの父親の話、母親の話。義理の母親の話や兄弟の話。


 みんな、とても優しくしてくれたの、ごはんもおいしかったんだよ! ルーといっしょに見た星はきれいだったの。そしたらミドリちゃんが来てね。ルーのお父さんたちといっしょに中央公園に行ったんだ。


 それから、大事な話をしたの。

 アルタニス大陸のこと。

 結界で守られていること。

《神に近い生き物》のこと、魔法の力のこと。

 あたし、アルニタスしかないと思っていたけれど、アルニタス大陸を囲んで、東西南北にそれぞれ大陸があるんだよ。

 でね、ミドリちゃんたちはアルニタス大陸でしか生きられないんだって。

 アルニタスはトクベツなんだね。


 あたし、アルニタス、大好き!

 ずっとここで楽しく暮らしたい。

 だからね、もし、アルニタスの不思議な力を悪いことに使おうと狙う人がいたら、あたしは守りたいって思うんだ。


 東の大陸の人間はどうしてアルニタスに来るんだろう? ドラゴンを連れ去るため? 或いは他の《神に近い生き物》を手に入れるため? 


 あたし、そんなのは駄目だって思うんだよ。

 ドラゴンの里も人狼の里も、みんな幸せに暮らしているの。

 見たことないけど、たぶん、人魚たちも。――あたし、今度、人魚に会いに行きたいなっ! それから、ペガくんのふるさとにも行きたい。


 あたし、みんなが笑顔でいられる世界であって欲しい。

 パパもママもそう思うよね?

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