第106話 ガレット、食べたいな!①

 朝早くから手打ちで麺を作り、蕎麦は完成した。もちろん、おいしいものが大好きな楓も大活躍したし、力の強いルーも頑張った。


「おいしい!」

 楓はばくばく蕎麦を食べた。

「前に、日本のママのうちで食べたやつより、おいしい!」

「そりゃそうよ。あれは乾麺を茹でただけだったけど、これは手打ちだもん。本当においしい! 麺のこしが違うわよねえ。ありがとう、弘樹くん!」

「楓もルーも頑張ったよ」

 彩香に笑いかけられ、ちょっと顔を赤くしながら、弘樹は応えた。


「透も、おいしい?」

 彩香は透に言う。

「うん、おいしい」

 透は静かに蕎麦を食べていた。

「そう言えば、透。分からないことは、分かったの? パパはちゃんと答えてくれた?」と彩香が訊くと、「うん」と透は応えた。

「それって、今つくっているもののこと?」

「うん」

「ねえ、何つくっているの?」

「かんせいしたらみせる」


 みんな、蕎麦を食べながら、透をじっと見た。透がつくっているものをみんなすごく知りたかったけれど、こういうとき、決して話さないのを知っているので、それ以上問い詰めなかった。楓はゲーム機作っているのかな? などと考えていた。何にせよ、おもしろいものだといいな。


「ところで、弘樹くん。ガレットって知ってる?」

「知ってるよ。蕎麦粉のクレープみたいなやつだよね」

「あれね、食べたいから、お昼はガレットにしてね」

「そういうと思ったよ」

 弘樹は笑いながら言った。

「ふふふ。ありがとう、弘樹くん!」

「どういたしまして」

「ガレット――って何⁉」

 楓はわくわくしながら訊いた。


「たぶん、説明するより食べた方がいいよ。お昼を楽しみにしていて、楓」

「分かった、パパ!」

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