4.蕎麦、食べたいな!
第102話 蕎麦の花を見つけたよ①
「じゃあ、カエデのご両親によろしく言ってくれ。近いうちにぜひ会いたい、とも」
ルーヴ・ルプスはそう言って、ルーの手を握った。
「分かった。必ず伝える。きっとすぐに会うことになると思う」とルーは応えた。
リコスは「途中でお腹が空いたら、食べてね」とお弁当を楓に渡した。
「嬉しい! ありがとうござます!」
「また、遊びに来てね」
「はいっ」
ルーは弟たちに一人ひとりにお別れを言った。
「また来てね」とルカス。
「ああ」
「今度はもっと遊んでね」とルノ。
「そうだな」
「……兄ちゃんが『ルーヴ・ルカス』だよ。オレはずっとそう思ってる」
「ルスラ……」
ルスラはへへっと笑うと、「でも、オレも、兄ちゃんみたいに強くなるよ!」と言った。
「楽しみにしている」
ルーはルスラの頭を撫でた。
ミドリちゃんは、と言えば、ルーが別れを惜しんでいる間、人狼の子どもたちを背中に乗せたり、いっしょにちょっと飛んだりして遊んでいた。ミドリちゃんは人狼の子どもたちの人気ものになっていた。
そして別れが済むと、ルー、楓、ミドリちゃんは人狼のみんなにもう一度挨拶をして、《最果ての村》へと飛び立った。
ミドリちゃんに乗って、《はじまりの草原》を超えていく。
「あたし、いつか《麗しの湖》に行きたいなあ」
「きっとすぐに行くことになるよ」
「だったらいいな。……ねえ、もらったお弁当、どこで食べよう?」
楓はわくわくしながら訊いた。何しろ、リコスはお料理上手なのである。
「《迷いの森》で、オレが住んでいた家で食べようか。小さなログハウスだけど、ときどき掃除しているんだ。物はあまり何もないけど」
「ルーのもう一つのおうち! 行きたい!」
そんなわけで、楓たちは《迷いの森》にあるルーのログハウスに行くことにした。
「わあ、かわいいおうち! ねえ、この家、ルーが建てたの?」
「ああ」
「ルーって、何でも出来るんだね!」
楓は嬉しそうに言った。
ログハウスの中は、確かにほとんど何も無かった。
でも、やっぱりルーらしいおうちだな、と楓は思った。
ミドリちゃんは外で、ルーと楓はログハウスの中で、リコスのお弁当を食べた。パンにハムや野菜がたっぷり挟んであるサンドイッチとオレンジみたいなフルーツだった。
「おいしいね」
「そうだな。ヒロキのごはんもおいしいけどな」
「うん! 織子ちゃんのお菓子もおいしいよ」
「そうだな」
「おいしいって、幸せ!」
お弁当を食べ終わると、ミドリちゃんは少し休憩すると言って、その場に丸くなり目を閉じた。楓はログハウスの周りを散策することにした。緑が豊かで、鳥の鳴き声がして小動物の気配もあり、《迷いの森》、好きだなと楓は思うのだった。
そして、小さい白い花が群生しているのを見つけた。
「あの花! 蕎麦の花じゃない?」
「蕎麦?」
「ああ、ルーは知らないのかなあ。あのねえ、うどんみたいにおいしいんだよ!」
楓は彩香の実家で食べた蕎麦を思い出していた。
「あたし、蕎麦食べたい! この花、きっと蕎麦の花だと思うの。だから持って帰って、ママに見せる!」
そんなわけで、楓はルーといっしょに数株の小さい白い花の苗をとると、食べ終わったお弁当の包みに入れた。
「うふふふ。楽しみ! 蕎麦ね、おいしいんだよ。つるつるって食べるの」
「へえ」
「上に天ぷら乗せたりもするの。ああ、天ぷらも食べたい!」
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