第78話 想い出づくりは《迷いの森》へ①
子どもたちが立てた計画はこうだ。
一日目は《迷いの森》を探検する。
二日目はドラゴンたちや友だちと遊ぶ。
三日目は家でおいしいものを食べて過ごす。
「ピンクちゃんたちと遊ぶとき、ルネちゃんたちを呼ぶのはいいけれど、《迷いの森》にルネちゃんたちを連れて行くのは危ないからダメよ」
「えー」
「そもそも、《迷いの森》にクリストフ王子やフェルディナント様を連れていくのも危なくて、やめて欲しいもの」
「えー」
という会話が、彩香と楓の間でなされ、結局、《迷いの森》には僕たち一家全員で行くことになった。あ、ピンクちゃんたちドラゴンとペガくんはお留守番ね。
「織子は迷うと思うわよ」
と彩香が言うと、織子ちゃんは「でもルーがいるし、楓ちゃんも道が分かるんでしょう?」とあっけらかんと言った。
「まあ、そうだけど。……ともかく、クリストフ王子とフェルディナント様から絶対に目を離さないようにしておかないと!」
「迷っちゃうからね」
僕は自分のことを思い返し、しみじみと言った。とにかく抜け出せないんだ、あの森は。
「オレが行きたいって言ったんだ」
クリストフ王子がふいに言った。
「オレ、自分の立場を考えると、自分の王国のことをちゃんと知っておいた方がいいと思ったんだよ。《迷いの森》、王都でも詳しく知るものは誰もいないんだ。ここから、すごく近くにあるから、せっかくだから行ってみたくて。カエデは迷わないって言うし、オリコも行きたいって言うから」
子どもだ子どもだと言っていたけれど、やっぱり王族だ、と僕は思った。クリストフ王子は遊んでいるだけじゃなくて、きちんとこの土地を見ていたんだ。思慮深い目で。織子ちゃんと話しているときは年相応の子どもだけど、でも半面、すごく大人なんだ。精神的に。
彩香もそれに気づいたらしく、勉強の意味合いも込めて《迷いの森》に行くことにした。
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