第64話 ピンクちゃんの子どもドラゴンたち②

 ペガくんの部屋に行く前に、ペガくんの方からこちらにやってきた。

「ペガくん! ただいま! 帰ってきたよ」

 彩香がペガくんに駆け寄ると、ペガくんは彩香にすりより嬉しそうに鳴いた。それから、僕を見て「ふふん」というように笑い、楓を見てにっこりとし、織子おりこちゃんを見ると彩香の方を見た。


「あ、あの子はね、織子って言って、あたしの妹なの」

「織子です、よろしくね!」

 ペガくんは織子ちゃんに頭を下げ、織子ちゃんはペガくんの頭をそっと撫でた。

「すごい! ペガサス! きれい!」

 ペガくんはやっぱり嬉しそうにした。

「ねえねえ、織子、ペガくんに乗ってもいい?」

「かえでといっしょにのろうよ!」

 どうするかな? と思って見ていたら、ペガくんは楓と織子ちゃんを乗せた。

「ペガくん、ありがとう!」


 ペガくんは、彩香しか乗せなかったけれど、彩香の子どもの楓は乗せるようになって。妹も大丈夫なんだな。

 あ、そう言えば。

「ねえ、彩香」

「うん」

「彩香、お腹の赤ちゃんのこと、お父さんとお母さんに言ったの?」

「うん、言ったよ!」

「ごめん、僕、僕の家族に言い損ねちゃった」

「だいじょうぶよ、また次のときで。それにまだ初期の段階だから、安定期に入ってからでもいいかなって思う」

「うん、ありがとう。……体調は大丈夫なの?」

「大丈夫! あたし、あんまり悪阻ないみたい」

「よかった。でも、無理しないでね」

「ありがとう、弘樹くん!」

 彩香はえへへと僕の腕にしがみついてきた。ペガくんはちょっと僕を睨むと、ふいっと楓と織子ちゃんを乗せたまま、低く空をゆっくりと飛んだ。

「わあ! すごい!」

「いいでしょう!」

 二人の歓声が空から落ちてきた。

 ペガくんは二人を乗せて、軽く飛んだあと、ピンクちゃんの部屋の前に降り立った。


 楓と織子ちゃんは「ありがとう、ペガくん!」と言ってから、またピンクちゃんとピンクちゃんの子どもたちの前に来た。

「ねえねえ、おりこちゃん! かえでね、ミドリちゃんとよくめがあうの。ミドリちゃん、おいで! ……あ、きたきた!」

 楓はミドリちゃんをそっと撫でて、それから抱っこした。

「かわいい! かえで、ミドリちゃん、だいすき! うふふ」

「いいなあ、楓ちゃん! 織子は……シルくんと目が合った!」

 織子ちゃんはシルくんをそっと撫でている。

 ピンクちゃんはそんな様子を眺めながら、モモちゃんをぺろっと舐めた。



 そのとき、空から羽ばたきの音がして、見上げると、ボレアスに乗った、クリストフ王子とフェルディナント様がいた。

「アヤカ、ヒロキ! 帰ったのか」

 クリストフ王子が空から言った。

「そうよ、ただいま!」

 ボレアスはゆっくりと着地して、ボレアスからクリストフ王子とフェルディナント様が下りて来た。

「……その子は?」

 クリストフ王子が織子ちゃんを見て言った。

「織子っていうの。あたしの妹よ」

 彩香が答え、楓は織子ちゃんに通訳しているらしかった。織子ちゃんはにっこり笑って「織子です」と言ってお辞儀をした。

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