2.織子、アルニタスに降り立つ!

第63話 ピンクちゃんの子どもドラゴンたち①

「おりこちゃん、かえで、ピンクちゃんのあかちゃん、みせてあげる!」

 楓はそう言うと、織子おりこちゃんをピンクちゃんがいる場所へ連れて行った。

 帰宅の挨拶もしたかったので、彩香と僕もいっしょに行く。

「ピンクちゃん、ただいま!」                                   

 彩香が言うと、ピンクちゃんはすぐに僕たちの方を見て、嬉しそうに笑って一声鳴いた。


 ピンクちゃんの周りには子ドラゴンがいて、もう歩いていた。

 すごい!

 たった数日なのに、もう大きくなっている!

 ピンクちゃんの旦那さまそっくりな、ターコイズのドラゴン、ピンクちゃんにそっくりなピンクドラゴン、それからピンクちゃんの祖父のドラゴンの王様とそっくりな、冴えた青色で角度によっては銀色に見えるドラゴン。


「ねえ、ピンクちゃん、あたし、なまえつけていい?」

 楓がピンクちゃんに言うと、ピンクちゃんは「いいよ」と言ったみたいだった。

「ありがとう! じゃあね、ターコイズいろのドラゴンがミドリちゃん! ピンクちゃんそっくりなのが、モモちゃん! それからね、ちょっとぎんいろにみえるのが、シルくんね!」

 ……シルくんって、もしかしてシルバーのシルくん?

 ミドリもモモも見たまんまだし、さすが彩香の娘というか!

 僕は思わずくすくすと笑った。


「パパ、どうしてわらうの?」

「いや、ネーミングセンスが彩香といっしょだなって思って」

「ちょっと、弘樹くん、それどういう意味?」

「だって! ――あれ? さっき、楓、ターコイズのはミドリちゃん、ピンクのはモモちゃん、ときどき銀色に見えるのがシルくんって言ったよね?」

「うん!」

 楓は元気いっぱいに言う。

「えーと、つまり、ミドリちゃんとモモちゃんは女の子で、シルくんは男の子ってこと?」

「そうだよ!」

「なんで分かったの?」

「ピンクちゃんが言ってた!」

「あ、そう」

 ドラゴンの雌雄の区別は難しいはずだけど、ピンクちゃんはドラゴンだしね。


「かえでねえ、ママのピンクちゃんみたいに、クリストフおうじのボレアスみたいに、かえでのドラゴンがほしいな」

「それは、ピンクちゃんと、それからミドリちゃん、モモちゃん、シルくんとよく話してみて決めないとね」

 彩香が言う。

「うん、分かった!」

 楓は真剣な顔で頷いた。


「ねえねえ、楓ちゃん、クリストフ王子って? もしかして王子様がいるの?」

「そうだよ。クリストフおうじとねえ、それからルミアナのりょうしゅさまのむすこのフェルディナントさまも、いまうちいるの」

「きゃー! すごい! あたし、王子さまって憧れなの!」

 織子ちゃんは目をきらきらさせながら言った。……なんか、変な勘違いしているような気もして、僕はちょっとどきどきした。

「クリストフ王子もフェルディナント様も、今の時間学校だから、後で紹介するわね。先にペガくんに挨拶に行こう!」

 彩香はそう言って、織子ちゃんを見た。

「うん!」

 織子ちゃんは満面の笑みで頷いて、楓と手をつないで歩き出した。

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