第55話《最果ての村》は《はじまりの村》②

 ピンクちゃんのところに行くと、もうドラゴンの子どもは生まれていた。腹ばいになったピンクちゃんの顔の辺りに小さなドラゴンが三匹もいた!

 ピンクちゃんそっくりのピンクドラゴンと、ピンクちゃんの恋人と同じターコイズのドラゴンと、それからドラゴンの王様とそっくりな冴えた青色で角度によっては銀色に見えるドラゴン。

 小さな三匹のドラゴンを、ピンクちゃんは愛おしそうに舐めていた。


「三匹、いたんだ……」

「かわいいよね」

 ピンクちゃんは僕たちを見て、小さく鳴いた。

「ドラゴンのあかちゃん!」

 楓の声がした。

 楓は、ルーの肩に座っていた。「ルーはかえでのとくべつだから!」という楓の言葉が蘇る。人狼の寿命は長い。だから、楓が大きくなったときにもしかして、ルーとちょうどよく釣り合うかもしれない。


 だけど。

 まだまだ先の話だ――たぶん。

 楓はまだ四歳で、ほんの子どもだ。「とくべつ」が近くにいることを喜んであげればいいよね?

 僕は僕の「とくべつ」である、彩香の手をぎゅっと握った。ピンクちゃんも恋人に会いたいだろうな。きっと、近いうちに、ドラゴンの里へ子どもたちを連れて里帰りに行くのだろう。


「弘樹くん」

「彩香」

 僕は彩香にそっとキスをした。だって、彩香はずっと、僕の「とくべつ」だから。

「ねえ、弘樹くん。あたしね、分かったんだよ」

「何が?」



「元の世界――日本へ帰る方法」



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