第52話 王城の地下書庫の、禁断の書③

 マーティアス王の話によれば、そもそもはマーティアス王の息子、クリストフ王子のいたずらが発端らしい。書庫で遊んでいて、禁断の書を見つけ冗談半分に、覚えたての呪文を唱えたようだ。


「クリストフ王子は魔導士の才能がおありなんですね」

「どうもそのようだな。――クリストフ!」

 マーティアス王が呼ぶと、マーティアス王そっくりの容姿をした男の子が来た。ロラちゃんやシリルくんと同い年くらいかな?

「……ごめんなさい」

 クリストフ王子は頭を下げた。

「まあ、無事に片付いたからいいのよ」

「アヤカ殿。頼みがあるのだが」

 マーティアス王は言った。


「なんでしょう?」

「クリストフ王子をそなたのところで修業させたいのだ。お願い出来るだろうか」

「あたしが?」

 マーティアス王はにやりと笑うと、「そなた、隠しているようだが、随分レベルの高い白魔導士であろう?」と言った。

 彩香はそれには答えず、ただにっこりと笑った。


「それに、そなたの住む《最果ての村》では、子どもたちのための学び舎を作っているそうじゃないか」

「それはまだ本格的には始動しておりません。講師の問題もありますし」

「王都が支援しようぞ。講師も必要な人材を送ろうではないか」

「ありがとうございます!」

「その代わり、と言ってはなんだか、クリストフの修業をお願いしたいのだよ」

「――かしこまりました」


 ああ、また我が家に人が増えるんだな。……ま、いいか。アンデッド召喚なんて恐ろしいことをやらかしてしまったけど、反省しているようだし、素直そうないい子だ。


「ところで、マーティアス王、一つお願いがございます」

「一つと言わず、いくつでもよいぞ。そなたたちの功績を考えたら、褒美はどれだけ与えても足りぬ」

「いえ、一つで結構です。――この、禁断の書をお借りしたいのです」

 彩香は満面の笑みで言った。


 え? 禁断の書? 何に使うの?


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