第47話 王都へ①

 ひとまず、《城塞都市ルミアナ》を襲ったアンデッドの集団の脅威は去った。ピンクちゃんが焼き払ってしまったからだ。


「それでは、アンデッドは王都から来た、ということか?」

 ベルンハルト様が言う。

「はい、王都で召喚魔法が使われたのではないかと。明るい中でも動ける、少し特殊なアンデッドですし、そもそも、あたしたちがこちらに来たとき、《暗がりの森》を見ましたが、《暗がりの森》は大変静かでした。《暗がりの森》から来たのではありません」

「そうか……」

 ベルンハルト様は彩香の話を聞いて、何事かを考える様子だった。


「アヤカ」

「はい」

「《城塞都市ルミアナ》は我らで守ろう。兵士たちの剣に呪文もかけてもらったし、あれほどの数でなければ大丈夫であろう。それより、元を断ちたい。《中心の地》にある王都に行き、アンデッドの出現を止めて来て欲しい」

「はいっ!」

 彩香は元気よく返事をした。


 実際にアンデッドと倒すのは、僕とルー、それからピンクちゃんだけどね、と思いながら、彩香の返事を聞いていた。

 もちろん、彩香を闘わせることなんてしたくない。小さな怪我すらして欲しくない。僕は彩香を守るんだ!



《中心の地》にある王都までは遠い。だから当然空から行く。

「ねえ、彩香。乗り物酔い、大丈夫なの?」

「うん、だいじょうぶ! 酔い止め、強化したから!」

 彩香はにっこりとして、さらっと何かすごいことを言う。


「あ、それにね」

「うん?」

「あたし、少しの間なら飛べるんだよね。ずっと前に見せてあげたでしょう、〔フライ〕!」

 彩香はふわりと浮いた。

 そう言えば、楓が生まれたばかりのころ、見せてもらったことがある、この魔法。

 彩香はどんどん高く上がり、建物の一階部分くらいまで行った。それから、そのまま宙を歩き出した。

「ね! すごいでしょう?」

「うん、すごいすごい!」


 これは、「飛べる」というよりも空中散歩だけど。でもこの魔法が使えるなら、アンデッドが来ても宙に浮けばいいから安心だ。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る