第46話《城塞都市ルミアナ》を救え!②

 僕とルーはピンクちゃんに乗って、アンデッドが攻めてきている方角へ向かった。

 行くと、アンデッドが今にも壁を乗り越えて来ようとしていた。


 うわー、気持ち悪いー!

 僕が臆していると、ルーはピンクちゃんの背中から飛び降りて、そのまま剣を振るい、アンデッドをなぎ倒した! ルーの剣の威力は剣そのものだけでなく、剣から発せられた光の波動にも及び、かなり広範囲のアンデッドを倒すことが出来た。


「ルー、すごいね!」

「おお! 戦闘については、父上が元気だったときに教えていただいていたし、ずっと訓練も怠らなかったんだ」

 なるほど。

 その上、ルーは人狼の血が入っている。

 身体能力は確実に人間より上であるうえ、その上どうも神秘的な力もあるようだ。ルーの振るう剣は、光を帯び光を放ちながら、次々にアンデッドを倒していった。


 僕もルーに続いて剣を振るう。

 ――この剣、彩香が呪文をかけてくれたから、威力が随分違う。ルーほどではないけれど、僕もアンデッドを次々に倒していった。


「ヒロキもなかなかやるな!」

「ルーには負けるよ」

 背中を合わせながら剣を構える。

 呼吸を整えて、アンデッドに向かう。


 考える前に身体が動く。剣を右に左に振るう。

 ルーがアンデッドに囲まれていたので、そちらに行こうとしたが、ルーは既に城壁の上に飛び上がっていた。すごい身体能力だ。助走もなしに高い城壁の上へ飛び上がった。僕は助走をつけてジャンプをし、アンデッドを踏み台にしながら城壁の上へ上がった。


 城壁から下を見ると、アンデッドがひしめいていた。

「きりがないな」

 ルーがぼそりとつぶやいた。

「……アンデッドがこんなに……明るい中でも動いているし……」

「恐らく、召喚魔法が使われたのだろう。元を断たないと、これでは」


 ルーが眉根を寄せたとき、ピンクちゃんが僕の横に来た。

 ピンクちゃんは僕の顔を見て、ちょっと笑ったように見えた。

 そして、口をくわっと開けると、アンデッドの群れに向けて炎を放った!


「ピンクちゃん、炎出せたんだ……」

 僕はピンクちゃんが放つ炎を呆然と見ていた。

 ピンクちゃんから出た炎は、手前にいたアンデッドを確実に焼いて消し炭にし、そして王都へ伸びる《天に続く道》にひしめいていたアンデッドを次々に焼き尽くしていった。


「うわー、威力あるねえ。――終わっちゃったね」

「彩香!」

 いつの間にか、ペガくんに乗った彩香が隣に来ていた。

「弘樹くん、お待たせ! 全ての剣に呪文かけていたら遅くなっちゃった! ごめんね!」


 全ての剣に呪文?

 なんか、さらっとものすごいことを言ったぞ。

 それに、彩香はピンクちゃんが炎を出すことを知っていたんだろうな。何しろピンクちゃんと女子トークしているみたいだし。


 僕は城壁の上に立って、焼け焦げになったアンデッドと同じく焼け焦げになった《天に続く道》を見た。

「とりあえず、ベルンハルト様のところへ行かない?」

 彩香はにっこりと笑って言った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る