第44話 ドラゴンネットワークで知らされた危機
数日滞在したのち、彩香が「帰らなくちゃ!」と言った。
「ドラゴンの王様に教えてもらったんだけど、ルミアナが大変なことになっているって」
「え?」
「ドラゴンネットワーク情報なんだけどね、《城塞都市ルミアナ》、魔物――アンデッドの襲撃を受けているらしいの。今はまだ城壁に守られているけれど、城壁が破られるのは時間の問題みたい」
「え!」
見ると、ピンクちゃんもペガくんも、もう帰る準備をしていた。
「ピンクちゃんは、ここに残るんじゃないの?」
「ピンクちゃんは挨拶に来たかっただけだって。それから、恋人に会いたかったんだって。あたしたちといて幸せだから、これからもあたしたちといっしょにいるって、そういうことを伝えたかったみたいだよ」
「……そうなの?」
「そう! それにピンクちゃん一人なら、いつでも来られるでしょう?」
「それはそうだね」
彩香はにっこり笑って「あのね、ないしょなんだけどね、あのね、ピンクちゃん、たぶん子どもが出来たみたい、まあ、卵だけど」と言った。
「えええええ‼」
「帰ったら、卵を産む場所、作ってあげないとねえ」
「……なんで、分かるの?」
「なんとなく分かるみたいだよ、ドラゴンだしね!」
彩香は楓を見て、「ね!」と言った。楓も「ね!」と返した。
彩香と楓は二人でもう一度「ね!」と言い合いながら、ふふふと、そっくりの顔で笑い合っていた。
……かわいすぎる……!
僕たちはドラゴンの王様やたくさんのドラゴンたちにお礼とお別れを言い、慌ただしく家へ向かった。ピンクちゃんはさすがに恋人と名残惜しそうにしていた。恋人といると、するどい鉤爪と牙を持つドラゴンのピンクちゃんが、かわいく見えるから不思議だ。
僕たちは急いで《最果ての村》に戻り、楓を仲良しのルネちゃんがいる村長さんちに預け、《城塞都市ルミアナ》へと急いだ。ルーは残って楓を見ていてくれるのかな? と思ったけれど、「いいや、オレも闘う。――強いぞ?」と言うので、いっしょに行ってもらうことにした。
ペガくんに彩香、ピンクちゃんに僕とルーが乗り、《城塞都市ルミアナ》へ向かう。
「ねえ、ピンクちゃん、卵、大丈夫なのかなあ」
「ドラゴンだから、だいじょうぶみたい!」
なんだか分からないけど、彩香が言うならそうなんだろうな。
「……あ、あの。彩香はだいじょうぶ?」
「え? 何が?」
「ほ、ほら、二人目が欲しいって……もしかして、出来ている? だって、ほら、僕たち……ね?」
僕はなんだかやっぱり照れながら言った。
「うん、してるけど、でも今は出来ていないよ!」
彩香はすごくかわいく笑い、僕はちょっとくらっとしてしまった。
僕はきっとずっと、彩香のことが大好きで、彩香には逆らえないんだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます