第28話 村のために僕たちが出来ること④
なんでも《城塞都市ルミアナ》の領主、ベルンハルト様は《最果ての村》を視察したいそうだ。うどんを試食する目的が一番ではあるけれど、うどんを作る工程や彩香が指導して造った水車や薬草畑を見るというのも視察の目的にあるらしい。
そんなわけで僕はピンクちゃんに乗って村に帰り、その旨を伝え村のみんなに準備を任せ、さらに舞い戻って領主様御一行を先導する役割を担った。領主様御一行はドラゴンで移動するからだ。彩香は先に《最果ての村》に戻って準備を手伝うねって言ってた。
「ピンクちゃん、大丈夫? 疲れてない?」
ピンクちゃんは大丈夫、というふうに笑った。僕は彩香みたいにドラゴンと話は出来ないけれど、ピンクちゃんのことはだいぶ分かるようになったみたい。
《城塞都市ルミアナ》の領主様の屋敷に着いたとき、領主様御一行はもう準備を整えていた。ベルンハルト様はヒルダたちが噂していた通りにとても美しい方だった。ターコイズの瞳はとても優しくて、僕は少し緊張がほぐれたんだ。
「ベルンハルト様、それでは先導させていただきます」
僕はピンクちゃんに乗って、領主様御一行を村まで導いた。
彩香はガーデンパーティーみたいにして、領主様御一行を迎えた。
焼うどんや出汁うどんが並ぶ。サラダうどんまであった!(僕が食べてないやつ!)
村長のイヴォンさんとその奥さんのオラールさん、息子夫妻のディオンさんとシーラさんが中心となって、給仕をしたり食べ物の説明をしたりしていた。
うどんを召し上がったベルンハルト様からもその従者の方々からも感嘆の声が聞こえた。
そうそう、絶対においしいよね!
「ふふふ」
満足そうな笑みを浮かべて、彩香が僕の隣に来た。
「彩香も食べた? おいしかった?」
「うん、とっても!」
「で、期限に間に合うかな?」
「ぎりぎり間に合うと思うよ」
「だから、急いだの? ピンクちゃん呼んだり」
「うん、そう!」
「……サラダうどん、考えたの彩香でしょ」
「そう! 試食したらおいしかったよ~」
「僕も食べたいな」
「後でねっ」
試食会が終わったあと、彩香はペガくんを連れてベルンハルト様に挨拶に行った。ペガくんは礼儀正しく恭しく、ベルンハルト様に接している。……ペガくん、二重人格だよね? 二重ペガサス格?(なにそれ)
彩香はペガくんを伴って、水車や薬草畑を紹介していた。僕はピンクちゃんといっしょに少し離れたところからそれを見ていた。
ん?
彩香がベルンハルト様に何事かを耳打ちしていた。
ベルンハルト様は深く頷き、彩香の肩を叩いた。
……何を言ったんだろう?
とにかく、《最果ての村》の税払えないかも⁉ 問題はめでたく解決した。よかったよかった!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます