第26話 村のために僕たちが出来ること②

 僕たちがこっちに来たのは三月の終わり。

 高一から高二になる春休みだったんだよね。

 それから季節が過ぎて初夏になった。もう長くこっちにいるなあ。


 小麦の収穫を手伝いながら、彩香に言う。

「ねえ、魔法で収穫量上げられないの?」

「うん、少しだけやってるよ」

「足りるくらいやればいいのに」

「でも、そうすると、あたしがいないと駄目になっちゃうでしょ? 自分たちの力でなんとか出来るようにしないと!」

「うんうん」

「あとはね、水車の改良が早く終わるよう、みんなに回復の魔法はかけた」

「なるほど」

 なんだか、他にも魔法を使っていそうだけど、あえて聞くのは止めておいた。

 


 水車を使った石臼で挽いた小麦粉で、僕たちはうどんの麺を作った。

 塩水を作り、粉に混ぜる。それからこねて、足踏み!

 ロラちゃんやシリルくんをはじめ、村の子どもたちみんなでふみふみした。みんな、すごく楽しそう!

 凧あげのときも思ったけど、みんないい子たちだな。みんなで何かやるって楽しいね。

 ピンクちゃんは不思議そうにうどんの足踏みを見ていた。

 彩香は指示役だから、うどんの足踏みはしない。ペガくんに乗って、村の中を回っている。

 ピンクちゃんに続いて、ペガくんも村の人気者になった。ペガくんはみんなに優しく接している(ただし僕以外)。でも、ペガくんはピンクちゃんと違って、彩香以外を背に乗せることはないけれど。


「ねえねえ、弘樹くん」

「何?」

「あたしね、ちょっと《城塞都市ルミアナ》に行ってくるね」

「え?」

「ペガくんと行くね。それで、領主のベルンハルト様と交渉してくる」

「いきなり行って、お会いしてもらえるかな?」

「分からないけれど、ペガくんと行ってチャレンジしてくるよ」

「ペガくん、奇跡の生き物らしいからねえ」

「うん、きっとたすけになるんじゃないかな? じゃ、行ってくる!」


 と言って、彩香は颯爽とペガくんと駆けて行った。……たぶん、飛んだ方が速いと思うんだけど、乗り物酔いだから仕方がないよね。

 ピンクちゃんはいってらっしゃい、というふうに彩香とペガくんを見守った。ピンクちゃんとペガくんは仲良しだ。……僕だけが、ペガくんと仲良くなれない。てゆうか、一方的に敵愾心を向けられているんだけど。ペガくんは僕を見て「ふふん!」って顔をした! 絶対!


 ……これまでは、彩香といっしょに出かけるのは僕だったんだけどな。

 ちょっと暗くなっていたら、ピンクちゃんが慰めるように顔を近づけてきた。ドラゴンは思念伝達出来るらしいから、僕の気持ちも分かってくれたのかな?


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