第25話 村のために僕たちが出来ること①

「え? 税が払えない?」

「うん、そうみたい」

「税が払えないと、どうなるの?」

「……人手をとられるみたい。何年も、帰って来られないこともあるって」

「どうしてそんなことに」

「……貧しい村だからね。薬草作っても足りなかったみたい」

 なるほど。薬草にはそんな意味合いもあったんだ。


「弘樹くん」

 彩香が、あの目で僕を見た。「ドラゴン、欲しいな!」の目。「ペガサス、欲しいな!」の目。……今度は何を思いついたんだろう?


「弘樹くん!」

「はいっ」

「水車を改良してもらえるかな?」

「は?」

「あたし、うどん、食べたいなっ!」

「はい?」



 彩香によると、村に唯一ある水車はただの水車でもったいないから、粉挽きが出来る水車に改良するといいとのこと。水車の力で石臼を動かすんだね。うん、そういうの、見たことあるよ。

「でも、なんで?」

「そうすると、小麦粉がすぐに手に入るじゃない」

「うん」

「あたしさ、どうしてもお米が食べたいの! でもお米は難しいでしょ?」

「そりゃあ、まあ」

「だからせめて、うどんを食べようと思って!」

 ……せめて? 僕は頭を抱えた。


 彩香はうどんの麺の作り方を細かく教えてくれたけれど、全然頭に入ってこなかった。彩香、ほんとうに何でも覚えているんだなあ。

 ていうか、ベーコンやとんかつや唐揚げで満足していたと思っていたんだけど、全然満足していなかったんだね。そう言えば、アイスはまだ作っていない。で、今度はうどん。しかも水車改造から?



 僕は村長のイヴォンさんやディオンさんと話し合い、水車の改良に取り掛かった。石臼を動かせるように。彩香の頭の中にある設計図をもとに改良する。……けっこう大仕事だ。しかし、彩香が(僕も、だと嬉しい)普段から村の人たちとこころを通わせていたおかげで、スムーズに作業は進んでいった。


 彩香が言うには、特産品があればそれで税の不足分を補えるのではないか、と。

 特産品――うどん。……冗談だろ?

 でも確かにパンにも飽きてきたし、日本人としてはお米が食べたい。でもお米は無理だから、うどんがいい、というのも分からないではない。


《最果ての村》はその名の通り、外れにある村だ。土地は痩せていて、特に今年は作物の収穫が悪いそうだ。しかし、税の徴収は変わらない。もし、規定通りの税を払えない場合は代替が必要になる。例年だとそれが人手となるのだが、今年は特産品で行こうというわけだ。


「あたし、おいしいから大丈夫だと思うのよね!」

「小麦の収穫量も少ないんじゃない?」

「うん、だから、うどんにして高く売るの!」

 ……自分が食べたいだけのような気もするけれど、まあいいか。僕も食べたいし。

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